撮影日記


2015年07月03日(金) 天気:曇り

AE専用一眼レフカメラのファインダー

1980年前後に発売された「絞り優先AE専用一眼レフカメラ」は,当時の一眼レフカメラのラインアップにおいて,最下位に位置づけられる機種である。だから当時は,「初心者向けの安物」と認識されていたことだろう。もしかすると,価格最優先で機能や性能に妥協が多く見られるかもしれない。
 私がこれまでに入手した「絞り優先AE専用一眼レフカメラ」は,つぎの7機種である(2015年7月1日の日記を参照)。

ペンタックス ME
1976年発売
縦走り金属幕シャッター
シャッター速度:B, X, 8秒〜1/1000秒(絞り優先AE)
BとX(1/100秒)は,機械制御。
電源:SR44(LR44) (2個)
ペンタックス MG
1982年発売
縦走り金属幕シャッター
シャッター速度:B, X, 1秒〜1/1000秒(絞り優先AE)
BとX(1/100秒)は,機械制御。
電源:SR44(LR44) (2個)
キヤノン AV-1
1979年発売
横走り布幕シャッター
シャッター速度:B, X, 2秒〜1/1000秒(絞り優先AE)
電源:4SR44 (1個)
ニコン EM
1980年発売
縦走り金属幕シャッター
シャッター速度:B, X, 1秒〜1/1000秒(絞り優先AE)
BとX(1/90秒)は,機械制御。
電源:SR44(LR44) (2個)
フジカ AX-1
1980年発売
横走り布幕シャッター
シャッター速度:B, X, 1/2秒〜1/1000秒(絞り優先AE)
電源:4SR44 (1個)
マミヤ ZE
1980年発売
縦走り金属幕シャッター
シャッター速度:B, X, 1秒〜1/1000秒(絞り優先AE)
BとXは,機械制御。
電源:SR44(LR44) (4個)
ミノルタ X-7
1979年発売
横走り布幕シャッター
シャッター速度:B, X, 1秒〜1/1000秒(絞り優先AE)
電源:SR44(LR44) (2個)

このように並べてみると,どれもほぼ似たようなスペックである。この当時,シャッター速度の最高速は,一部の高級機種でようやく1/2000秒といったところで,最高速が1/1000秒というのはごくありきたりなものである。一方で,長時間露光については機種によって差が見られる。
 シャッター以外の機能で,大きな差は見られない。「絞り優先AE専用」機をくらべているのだから,それは当然といえば当然であるが,たとえばどの機種にもオプションとして外付けのワインダーが用意されている。
 そうは言っても,やはりくらべてみるといろいろと差はある。いちばん大きな差であると言えるのは,縦走り金属幕シャッターを採用しているか,横走り布幕シャッターを採用しているか,という点であろう。もう1つわかりやすい点としては,電源の違いがある。LR44(SR44)を2個使う(3Vで動作する)ものと,LR44(SR44)を4個または4SR44を使う(6Vで動作する)ものという違いである。これに伴うこととして,AEの動作に電源が必要なのは当然として,B(バルブ)やX(フラッシュ撮影)の動作にも電池が必要なものと,そこは機械制御になっていて電池がなくても動作するものという違いがある。

だが,実際にそのカメラを使うときに,もっと大きく影響することとして,ファインダー内情報の違いを指摘しておきたい。
 これらの「絞り優先AE専用一眼レフカメラ」は,自分で設定するものは絞りだけであり,シャッター速度は被写体の明るさと,設定した絞りとによってカメラが決定する。カメラがどんなシャッター速度を選んだかを知ることができるように,ファインダー内になんらかの形でシャッター速度が示されるようになっているのだが,そこにもいろいろなタイプのものがあるのだ。
 大きくは,「指針を使ったアナログ表示」と「LEDを使ったディジタル表示」とに分けられる。

アナログ表示のカメラは,キヤノンAV-1とニコンEMである。


キヤノン AV-1

ニコン EM

キヤノンAV-1は指針が右側に,ニコンEMは指針が左側にあるという点は異なるが,いずれも指針がさす数値あたりのシャッター速度になることを示している。実際のシャッター速度が何段階に制御されるのかは知らないが,1/3段よりも細かく制御されているのならばこういう表示はありがたい。もっとも,「初心者だから,絞り優先AE専用一眼レフカメラを選びました」という人にとっては,そこまで意識しないかもしれない。

残りの5機種は,LEDを使ったディジタル表示になっている。


ペンタックス ME

ペンタックス MG

ミノルタ X-7

1段ごとにLEDが点灯することで,シャッター速度ようになっている。中間のシャッター速度になるときは,ミノルタX-7の例で見られるように,2つのLEDが点灯することで,その間になるということを示している。ふつうに使用するにおいては,これで十分であろう。

ところが同じようなLEDを使ったディジタル表示でも,フジカAX-1とマミヤZEは,少し違っている。


フジカ AX-1

マミヤ ZE

FUJICA AX-1もMamiya ZEも,1/1000秒から1秒まできっちりと1段階ごとにLEDが割り当てられているわけではない。
 FUJICA AX-1は,「1/1000秒または1/500秒」,「1/250秒または1/125秒」…という具合に,2段階ことに1つのLEDでシャッター速度をあらわしている。手ぶれしそうかどうかを見るだけなら,これくらい刻みが粗くても問題ないのかもしれないが,こういうのはいまひとつすっきりしない。
 むしろMamiya ZEのように,1/1000秒から1/30秒までは1段階ずつ示し,1/30よりも露光時間がながい場合は「LT」表示にしてまとめてしまう,という割り切った表示のほうがすっきりする。LT表示になったら,無理に手持ちで撮影せずに,三脚に載せたり,フラッシュを併用するようにしたりするなどの方法をとることができる。初心者が気軽に撮ろうとするときには,Mamiya ZEのような表示が「LT=手ぶれ警告」と読み替えられるので好都合ではないだろうか。

露出計表示については,別の見方も可能だ。たとえばMamiya ZEとMINOLTA X-7は,露出計の目盛等が,ファインダーを遮っていない。写りこむものを周辺に至るまできちんと整理して撮るような人にとっては,これはありがたい仕様である。
 また,ファインダーの見え具合も重要である。上のファインダー内の画像はすべて携帯電話機のディジタルカメラ機能で撮ったものだが,きれいに写っておりかつ撮りやすかったものは,実際にファインダーを覗いたときにすっきりしていて気持ちよい。
 一見,同じような廉価版のシンプルなカメラでも,細かく見ていくと実にさまざまな相違点が見えてくるものである。


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