撮影日記


2015年05月10日(日) 天気:晴

不思議なニコマート 謎のホットシュー

大阪での仕事を終え,ひさしぶりに友人と会って話をすることができた。
 そこで,とても珍しいものを見せていただいた。それは,「オリンパス ペンEM」というハーフサイズカメラである。「オリンパス ペン」といえば大ヒット商品になったシリーズであるが,そのなかで「オリンパス ペンEM」はややレアな存在となっている。電子制御シャッターと電動巻き上げ・巻き戻し機構を実装した,当時としてはとても先進的なカメラだった。残念なことに,いろいろと問題点があったようで短期間で生産が終了している。そのためか,中古カメラ店で見かけることそのものが珍しいのだが,友人が見せてくれた「オリンパス ペンEM」は動作するのである。これは,とても珍しいことだ。中古カメラ店の店員さんでも,最近は動くものをほとんど見かけないというくらい,珍しいものである(2010年9月20日の日記を参照)。
 だが,動くことは動くのだが,その動作はやや怪しかった。とくに,電動巻き上げの音が,あまりにもへろへろである。フィルムを巻き上げるだけの力があるのだろうか,と疑問に思うくらいへろへろなのだ。もともとそれくらいのものだったのが,経年劣化によって本来の力が出ない状況になっているのか,残念ながらそのあたりを判別するだけの情報をもっていなかった。
 ともあれ,いまでもまだ動く「オリンパス ペンEM」はとても貴重な存在であるから,ひきつづき大切に管理していただきたいものである。

「オリンパス ペンEM」を見せていただいたほかに,今日はこのような不思議なものをくださった。

Nikkormat FTN
このたびいただいたカメラ

上の画像を見るかぎり,これは「ニコマートFTN」だ。
 だが,下の画像,ふつうの「ニコマートFTN」と異なる点が2つあることに気がつくことだろう。

Nikomat FTN
ニコマート FTN (Nikomat FTN)

1つは,ネームプレートである。本来ならば「Nikomat」(ニコマート)とあるべきところが,「Nikkormat」(ニッコールマート)になっている。商標権の関係で,輸出用のカメラは「Nikomat」を名乗ることができず,レンズの名称である「Nikkor」を利用した「Nikkormat」を名乗るようになっていたとのことだ。これは「日本国内ではあまり見かけないが,輸出先ではあたりまえ」なもので,日本国内で膨大に見かける「ふつうのNikomat FTNではない」が,さほど珍しいものではない。もちろん,機能的には,Nikomat FTNとNikkormat FTNとは,同じものである。

もう1つのふつうではない点として,アクセサリシューに注目していただきたい。
 もともとNikomat FS / FT / FTNには,アクセサリシューはついていない。必要ならば,オプション品のアクセサリシューを買ってきて,接眼部のレンズのネジを利用して止めるようになっている。なお,このアクセサリシューには,クリップオン型のフラッシュを発光させるための電気接点がない。

Nikomat FT
ニコマートFT (Nikomat FT) にとりつけたアクセサリシュー

ところが,今日いただいたNikkormat FTNのアクセサリシューは,電気接点がある「ホットシュー」になっている。

Nikkormat FTN
ニッコールマートFTN (Nikkormat FTN) についていたアクセサリシュー

しかも,接眼部のレンズのネジで止めているのではなく,ボディと一体化している。Nikomat FTN用オプション品のアクセサリシューとは違う部品が取り付けられているようだ。実際にフラッシュを接続してシャッターレリーズをおこなうと,ちゃんと発光する。内部の結線もきちんとおこなわれているということだ。素人が適当な部品をお手軽に接着したようなものではなく,専門の修理業者等によってきちんと改造されたもののようである。元の持ち主が器用な人で,自分で改造したのかもしれないが。

友人とは,梅田の中古カメラ店を何件か覗いて回った。
 もっとも気になったものとして,チェコスロバキア製の「エタレッタ」というカメラがある。ボディが,プレスでもなく板金でもなく,削り出しでつくられたように見えるのである。実際に,削り出してつくられたということはありえないとは思うものの,その圧倒的な存在感に魅了された。つぎにそのお店を訪れる機会に,まだそこに残っていれば,衝動的にお迎えしてしまうかもしれない。それほどの,魅力を感じたのである。
 また,ヨタ話をするなかで,「リコーフレックスIII」と「初代 オリンパス ペン」を高く評価したいという点で一致した。どちらのカメラも,操作ミスなどの危険性はあるものの,きれいな写真を撮るための最低限の機能だけが残され,低価格を実現し,あの時代にあれだけの数が売れた,という点が評価のポイントである。それは,間違いなく人々の間に写真やカメラを普及させる要因になったはずだ,ということで,高く評価したいね,となった。
 普及という意味では,コニカ「C35AF」(ジャスピンコニカ)やカシオ「QV-10」もエポックメイキングな1台として評価したいが,これらはちょっと事情が違う。リコーフレックスやオリンパスペンが「最低限まで機能をそぎ落とした」のに対し,ジャスピンコニカやCASIO QV-10は「当時最先端のテクノロジーを詰めこんだ」ものである。また,よく売れたのは間違いないが,あとから出てきた機種を圧倒するほど売れたかというと,そうでもないのではないか?という点である。
 ヨタ話はさらに続く。「なぜ,古いカメラはおもしろいのだろう?」という点では,Made in Japanが「安かろう悪かろうの模倣品」から「世界最先端の最高性能」に至る過程を眺められるからという面があるのではないか?という点に落ち着いた。そういう面から見ても,「リコーフレックスIII」は重要な存在だろう。繰り返すことになるが,「リコーフレックスIII」は,とにかく安かった。最高の機能や性能を実現しているわけではないが,実用十分な性能は確保している。だからこそ,他のメーカー,機種に大きな影響を与えたのだろう。それを最先端のテクノロジーを盛りこむのではなく,既存のものをそぎ落として実現したところが美しいのではないだろうか。

などと楽しいひとときを過ごさせていただいたことには,深く感謝したい。友人は直前に,少し体調を崩していたとのことで,アルコールを控えざるを得なかった点が少し惜しかった。


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