撮影日記


2014年7月24日(木) 天気:はれ

さいごの「Elitechrome」

リバーサルフィルムとは,明るいところが明るく,暗いところが暗く表現されるフィルムである。ふつうの人がふつうに使うフィルムは,それとは逆に,明るいところが暗く,暗いところが明るく表現されている。これは,ネガフィルムと呼ばれ,それに対してリバーサルフィルムはポジフィルムともよばれる。
 リバーサルフィルムでは,現像のときに反転処理がおこなわれる。これによって,明るいところが明るく,暗いところが暗く表現されることになる。反転処理がおこなわれないネガフィルムでは,明るいところが暗く,暗いところが明るく表現されている。その画像を印画紙に当ててやれば,明るいところが暗く表現されていたところが明るく表現されることになり,暗いところが明るく表現されていたところが暗く表現されて,もとにもどる。
 反転処理が不要になるので,ネガフィルムを使うほうが大量のプリントをつくるには都合がよい。誤解を恐れずに乱暴に言ってしまえば,そういうことになる。

リバーサルフィルム,とくにカラーリバーサルフィルムの最大の魅力は,やはりその鮮やかな色と鮮明な画像であろうか。現像されたフィルムをルーペで覗いたときの美しさに感動した人も,多いはずだ。これが中判や大判のフィルムだと,ルーペも必要ない。
 世界で初めてカラーリバーサルフィルムを発売したのは,アメリカのコダックである。コダックは改良をくわえながら,いろいろなフィルムをラインアップさせてきた。しかし2009年には「外式」(現像のときに色素を加える)の「コダクローム」が販売終了(*1)となり,2012年には「内式」(フィルムに色素が埋めこまれている)の「エクタクローム」「エリートクローム」が販売終了(*2)となって,コダックからは写真用カラーリバーサルフィルムの販売がすべて終了した。

「エリートクローム」は,「一般向け製品」とされていた。略記号は「EB」(エリートクローム100)や「EBX」(エリートクローム エクストラカラー)で,以前は「エクタクローム ダイナEX」(EB)や「エクタクローム ダイナハイカラー」(EBX)という名称が使われていた。「プロ用製品」とされていた「エクタクローム プロ」シリーズや「エクタクロームE」シリーズとの区別を明確にするために,名前が「エリートクローム」に変えられたのだろうと思う。「一般向け製品」だからといって「プロ用製品」より明らかに劣るようなものではなく,フジのフィルムとは違ったコダックらしい色を低価格に楽しめるよいフィルムとして,よく使ったものである。また,個人的にフジのフィルムよりもコダックのフィルムの色のほうに好感がもてたので,「エリートクローム」(「エクタクローム ダイナ」)に限らず,さまざまな種類の「エクタクローム」を使ってきたものである。もっとも,「エリートクローム」(「エクタクローム ダイナ」)は35mm判のみが供給されており,中判や大判は「プロ用製品」とされる「エクタクローム」を使うしかなかったのだか。
 さて,以前にくらべればフィルムの消費量が減った私であるが,それでも買い置きしたフィルムは着実に減っていく。そして,冷蔵庫のなかの「エリートクローム」は,さいごの1本になった。

これでなにを撮ろうか?

これまでに長年撮ってきた,常清滝や三段峡,あるいは可部線を撮ってみようか?しかしこれらを撮るフィルムも,いずれすべてフジのフィルムに変えざるを得ない。そこで,

なにで,これを撮ろうか?

という発想に転換した。被写体よりも,撮る道具を重視するのである。
 そこで迷わず選んだのは,Nikon FMだ。はじめての自分専用の一眼レフカメラであり,使い続けて30年以上になるカメラだ。「初心に帰る」ということなど意識していないはずだが,やはり「最後のフィルム」は「最初のカメラ」で撮りたいとでも考えたのであろうか?
 ただ,「なにを撮ろうか?」と明確に定めなかったので,36コマを撮りきるのにずいぶんと時間がかかっている。ようやく現像を依頼し,それが今日,納品されてきた。

最初のほうを見ると,可部線の電車が写っている。これを撮ったのはたしか,可部線の車両とアストラムラインの車両が交差するシーンの動画を撮りに行ったときだ(2013年5月18日の日記を参照)。

Nikon FM, AF NIKKOR 85mm F1.8S, EBX

なかほどには,ヒガンバナが写っている。場所は,横川駅近くのいつもの土手(2012年9月27日の日記を参照)。こってりした下品な色(^_^;は,初期型のPC-NIKKOR 35mm F3.5にPLフィルタの効果を最大に与え,気持ちアンダー気味に写したもので間違いない。そうだ,このシーンを撮りたかったから,Ai連動ピンを倒せるNikon FMを選んだのかもしれない。

Nikon FM, PC-NIKKOR 35mm F3.5, EBX

さいごのほうのコマに写っているのは,自宅で育てているアジサイである。自宅の花だから,水しぶきだって遠慮なく,か〜け放題〜,ウヨレイヒ〜である。Ai Micro-NIKKOR 200mm F4で水滴にピントをあわせたあとに,ピンボケにしたものを多重露出している。これがうまく決まれば,ソフトフィルタをかけたようでいてピントはしっかりした写真になるのだが,いまひとつうまくいかなかったようだ。

Nikon FM, Ai Micro-NIKKOR 200mm F4, EBX

ともあれ,いろいろなものにポツリポツリとカメラを向けながら,36コマを撮りきるのにおよそ1年がかかっている(笑)。さいごの「エリートクローム」を1年間じっくり楽しんだ,と思うことにしておこう。
 さて,これからはフジのフィルムを使っていくことになるのだが,「プロビア」を主に使うようにしようか,それとも「ベルビア」を主に使うようにしようか。うーん,ここは思いきって「ベルビア」に「PLフィルタ」を組みあわせて,頭にはバンダナ… って,何年前の流行なんだか(笑)。

*1 「コダクローム フィルム」販売完全終了のお知らせ (コダック株式会社)
http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/corp/info090625.shtml

*2 コダック プロフェッショナル エクタクローム及びエリートクロームフィルム 製造販売中止のお知らせ (コダック株式会社コンシューマービジネス本部)
http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/corp/info/2012/info0301.shtml


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