撮影日記


2014年7月11日(金) 天気:くもり

「Nikon New FM2」がやってきた

いつもお世話になっているラボの方から,Nikon「New FM2」をいただいた。

このたびいただいた,ニコン「New FM2」とレンズ。

このカメラとレンズは,学校の卒業アルバムなどの仕事で使われていたものとのこと。持ち主だった人は,ディジタルカメラで仕事をするようになって,使わなくなったものとのことである。角の塗装が剥げている点はずいぶん使いこまれたことをうかがわせるし,ところどころ表面に錆が出ている点は,使われなくなってからある程度の期間が過ぎていることをうかがわせる。しかし,シャッター等の動作はなめらかであり,重要な仕事の道具として,手入れが怠っていなかったものと思われる。

塗装の剥げが,仕事で使われてきたことを物語る。

Nikon「New FM2」は,機械式制御のマニュアル式一眼レフカメラである。その最大のセールスポイントは,フラッシュ撮影時に1/250秒のシャッター速度が使えることと,シャッター速度の最高速が1/4000秒であることだった。
 「New」「FM2」というからには,「New」ではない「FM2」や,「2」のつかない「FM」も存在した。
 このシリーズのカメラは,機械式制御の縦走り式フォーカルプレンシャッターを搭載したもので,1977年に発売されたNikon「FM」では,シャッター速度の最高速は1/1000秒,フラッシュ撮影時の最高速は1/125秒である。1982年にはNikon「FM2」が発売され,シャッター幕の走行速度を速めてフラッシュ撮影時の最高速を1/200秒とし,あわせてシャッター速度の最高速度が1/4000秒になったものである。Nikon「New FM2」はそれをさらに改良したもので,1984年に発売された。そして,2001年にNikon「FM3A」が発売されるまでカタログに掲載されつづけた,ロングセラーモデルとなったものである。
 「FM」「FM2」「New FM2」は,裏蓋のデータバックやモータードライブが共用できるなど,ボディはほぼ同じサイズであり,シャッター速度ダイアルなどの操作系の配置もほぼ共通しているため,外見はどれもよく似ている。私は長く,Nikon「FM」を愛用してきたから,このたびいただいたNikon「New FM2」にもすぐになじめるかと思ったが,実際に使ってみると使い勝手がかなり異なる。いや,その差は微妙なのだが,微妙だからこそ迷ってしまう場面がある。

Nikon FMとNikon New FM2は,よく似ているように見えるわけだが…

Nikon「FM」とNikon「New FM2」の操作における最大の違いは,シャッターレリーズロックである。
 Nikon「FM」の場合,シャッターレリーズボタン周囲のリングの指標を赤にあわせることで,シャッターレリーズボタンがロックされる。それに対してNikon「New FM2」では,巻き上げレバーを引き出すことでシャッターレリーズのロックが解除される。シャッターレリーズボタンのロック機構など,実際の撮影にはあまり影響しないのではないか?と思われるかもしれないが,どっこいこれが,大きな問題なのだ。
 Nikon「FM」の場合,巻き上げレバーを引き出すことで,露出計がONになる。そして,巻き上げレバーをもとに戻すと,露出計がOFFになる。撮影するとき,まず巻き上げレバーをちょっと引き出して露出計をONにし,露出をあわせる。露出が決まったら,引き出した巻き上げレバーは邪魔になるし,電池の消耗を防ぐためにも,巻き上げレバーをもとにもどす。そしてピントを合わせたらレリーズする。
 Nikon「New FM2」の場合,巻き上げレバーを引き出してシャッターレリーズボタンのロックを解除したら,シャッターレリーズボタンを半押しすることで一定時間,露出計がONになる。露出を決めたらピントを合わせ,レリーズすればよい。もう撮らないなら,巻き上げレバーを戻しておけばレリーズロックされるし,不意に露出計がONになって電池を消耗する心配もない。実に,合理的な操作体系である。ところが,Nikon「FM」に慣れていると,露出を決めたところで半ば習慣的に,巻き上げレバーを戻してしまうのだ。するとレリーズロックがかかることになり,ピントを合わせていざ!というところで,ロックがかかっているためにレリーズできないのである。

Nikon FMは,巻き上げレバーを引き出すと露出計ON。
レリーズボタン回りのリングで,レリーズロック。
Nikon New FM2は,巻き上げレバーを引き出すとレリーズロック解除。
レリーズロックを解除して,レリーズボタンを半押しすると露出計ON。

さて,いただいたNikon「New FM2」とズームレンズで,まずはフィルム1本,撮ってみた。あわせていただいたズームレンズ(Ai Zoom-NIKKOR 35-105mm F3.5-4.5S)だが,さすがに望遠側で開放F値がF4.5ではファインダー中央のスプリットイメージが陰ることがあり,やや使いにくい。ただし,使いごろな焦点距離であり,コンパクトな点は大いに評価したい。

Nikon New FM2, Ai Zoom-NIKKOR 35-105mm F3.5-4.5S, ACROS

いろいろ撮っている間にレリーズロックについては気をつけられるようになったが,まだ問題はある。とくに縦位置に構えるときに,顔にカメラを押し当てるとき,引き出したままの巻き上げレバーが顔にあたって押しこんでしまい,レリーズロックがかかってしまうのだ。
 これに慣れるには,もう少し時間がかかるようだ。

Nikon New FM2, Ai Zoom-NIKKOR 35-105mm F3.5-4.5S, ACROS

よく考えれば,「巻き上げレバーを引き出してレリーズロック解除」という操作体系のカメラを,私はあまり使っていない。長く使ってきたカメラは,Nikon「FM」やNikomat「FT」といった「巻き上げレバーを引き出して露出計ON」というものや,レリーズロックが独立したスイッチになっているNikon「F3」であり,そうでなければワインダーを内蔵したタイプのカメラである。比較的最近になって入手したNikon「FE」Nikon「FM10」をなんとなく使いにくいと感じていたのは,こういう操作体系の差が原因だったのかもしれない。


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