撮影日記


2014年6月24日(金) 天気:くもり

「パノラマモード」を見直そう
Nikon F70Dも見直そう

6月4日から6月9日は,「中判写真週間」である。これについて,「6×12判のカメラもあるのだから,『中判写真週間』を,6月12日までにしよう」という意見がある。残念だが,それは受け入れられない。「中判写真週間」は,6月4,5日から6月9日まで,中判写真のフォーマットにちなんだ日が「連続」するところに意味がある。6×10判や6×11判は(少なくとも市販製品として)使われておらず,6月10日と6月11日は「中判写真の日」にならない。だから「中判写真週間」は,あくまでも6月9日までとする。このことは,前回の日記でも書いたとおりだ。
 6×12判が,中判カメラが使う120フィルムで使われるフォーマットの1つであることは,確かなことである。しかしそのフォーマットは,「中判」ではなく「パノラマ判」として認識されているのではないだろうか。同じように「6×17判」や「6×24判」のカメラも「パノラマカメラ」として市販されている。たとえば,かつて富山製作所から発売されていた「アートパノラマ」シリーズには,6×12判の「アートパノラマ120」,6×17判の「アートパノラマ170」,6×24判の「アートパノラマ240」があった。また,大判カメラに取りつけて使う,6×12判や6×17判のロールフィルムホルダも発売されていたし,富士フイルムからも6×17判の「GX617」というカメラが発売されていた。これらの「パノラマカメラ」はいずれも高価なものだったが,最近,Lomographyから発売されている「Belair X 6-12」というカメラは比較的低価格で6×12判も撮影できるので,個人的に少し気になっている。

そもそも,「パノラマカメラ」とは何か。
 「広辞苑」を参照すれば,「パノラマ」には「全景」という意味があり,「パノラマ写真」とは「広い視野を撮影した横長の写真」とある。「パノラマカメラ」とは,そのような「広い視野を撮影した横長の写真」を撮ることができるカメラということになる。「広い視野を撮影した横長の写真」をつくるための方法の1つが,先の「アートパノラマ」シリーズや「GX617」,「Belair X 6-12」に見られるように,フィルムを通常よりも長く使用する方法である。具体的に画面の縦横比が何倍になれば「パノラマ写真」になるのかの定義はないようだが,1:1.5の「6×9判」は「パノラマ写真」とよばれず,1:2の「6×12判」は「パノラマ写真」とよばれているので,1:2以上であれば「パノラマ写真」とよぶことに異論をはさむ人はいないものと思う。
 「パノラマ写真」を撮るカメラには,パトローネ入り35mmフィルム(135フィルム)を使うものもある。富士フイルムから発売されていた「TX-1」および「TX-2」は,135フィルムに24mm×36mmのライカ判または24mm×65mmの「パノラマ」判で撮影できるカメラだ。24mm×65mmはおよそ1:2.7となり,中判パノラマカメラの6×17判に近いものとなる。中判カメラ「マミヤ6MF」「マミヤ7」ではオプションのアダプタを使用することで,「ブロニカSQ」や「ブロニカETRS]ではフィルムホルダを交換することで,135フィルムに24mm×55mmくらいのパノラマ写真を撮影することができる。
 これらはフィルムの形が通常よりも長細いだけでカメラとしてのしくみは変わりなく,フィルムの平面が維持されてレンズも固定されているものなので,広角レンズと組みあわせて「広い視野」を写すようになっている。これらとは違った形式のカメラとしては,パノンカメラが発売していた「WIDELUX」やロシア(ソ連)で製造されていた「HORIZON」のように,レンズがぐるりと回転することで広い範囲を写すようになっているものもある。

「パノラマカメラ」とされるものにはこのようにいろいろなタイプのものがあるのだが,いちばん身近にある「パノラマカメラ」は,ライカ判の天地をマスクして13mm×36mmの画像を撮影するタイプではないだろうか。そのタイプの「パノラマ」は,画面の天地をちょっとマスクしただけということから「疑似パノラマ」あるいは「偽パノラマ」などと蔑む人もあるようだが,13mm×36mmの縦横比は約1:2.7となり,6×17判と同様の細長い画面が得られるものである。

この「パノラマモード」で評価されるべきは,カメラのしくみよりも,プリントのインフラが用意されたことにあると思う。「パノラマモード」で撮影したコマは,L判(89mm×127mm)の2倍の長さの89mm×254mmにプリントされる。このプリントの縦横比は約1:2.8なので,「パノラマモード」で撮影したコマのプリントにちょうどよい。そしてDPE店のメニューに「パノラマプリント」が用意され,特殊なサイズであったパノラマプリントがサービスサイズ的な扱いを受けるようになったのである。もっともパノラマプリントは,使用するペーパーも多ければ,引き伸ばし率も大きい。L判プリントのおよそ2倍の価格がつけられた。簡易なカメラで雑に撮ったものを大きく引き伸ばすと,あまりきれいではないプリントができる。サイズが大きいから,ピンボケもブレもよく目立つ。結果として,あまりきれいでない高いプリントということになる。
 とはいえパノラマプリントで引き伸ばす大きさは,六つ切り程度である。その程度であれば,レンズの性能が高く,露出やピントをきっちりとあわせられる一眼レフカメラなどでていねいに撮れば,じゅうぶんきれいにプリントされるはずだ。そこで,「パノラマモード」のある一眼レフカメラの出番となる。

ニコン「F70D」は,1994年に発売されたカメラで,ニコンAF一眼レフカメラのラインアップでは中級モデルになる。
 モード切り替えなどの操作がそれ以前の「F90」や「F-601」などとまったく異なるため,「使いにくい」と低く評価されてきたカメラでもある。それなりによく考えられらインタフェースなので,たぶん「F70D」だけを使っていれば「使いやすいカメラ」と評価されるかもしれないが,やはり説明書を見ないと使い方がわからないと思われる。
 ともあれ,「パノラマ写真の日」だから,14mmレンズを使ってぐぐっとワイドな写真を撮ってみよう。

Nikon F70D Panorama, SIGMA AF 14mm F3.5, NEOPAN 100 ACROS

商店街に並んだ椅子。お買い物に来たお客さんが休憩できるように置かれているものと思うが,ここに座っている人を見かけることはあまりない。日陰じゃないからかな?(^_^;

Nikon F70D Panorama, SIGMA AF 14mm F3.5, NEOPAN 100 ACROS

縦に長い被写体は,縦位置の「パノラマモード」で撮れば,無駄がない。

Nikon F70D Panorama, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED, NEOPAN 100 ACROS

「パノラマ」だからと言って,超広角レンズにこだわらず,望遠レンズで撮るのもおもしろかったりする。

ニコンの一眼レフカメラで「パノラマモード」が使えるのは,「F50D」「F60D」「F70D」の3機種である。このうち「F50D」「F60D」の2機種はエントリーモデルになり,Ai連動ピンがないのでマニュアルフォーカスのニッコールレンズを使うと露出計が動作しない。つまり,「パノラマモード」の撮影で,マニュアルフォーカスのニッコールレンズでTTL露出計が使えるのは,「F70D」だけなのである。また,この3機種のうちで,AF-SレンズでAF撮影ができるのも「F70D」だけである(さすがに,VR(手ブレ補正)には対応していない)。また,「F70D」はシャッター動作や巻き上げの静音化にもこだわっている。
 もっと,ニコン「F70D」は見直されるべきカメラなのだ。せめて,「パノラマ写真の日」にだけでも「F70D」の良さを見直し,これからも末永く使っていこうではないか!それは,「F70D」を所有する者の義務であろう。

念のために,もういちど書く。
 ニコン「F70D」を見直そう!ニコン「D70」ではないぞ(笑)。


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