撮影日記


2014年6月11日(水) 天気:曇

6×6判の撮影を楽しみたいとき
「二眼レフ」「スプリングカメラ」どちらがお好み?

6月4日から6月9日は,フィルムでの撮影を忘れないようにするために中判カメラでの撮影を楽しむ「中判写真週間」だった。今年は「蛇腹のあるカメラ」で,6×4.5判,6×6判,6×7判,6×9判の撮影をすることを目標にしていた。「セミ判の日」(「6×4.5判の日」)にはツァイス・イコン「セミ・ネッター」を使用し,「ブローニー判の日」(「6×9判の日」)には「No.1ポケットコダックジュニア」を使う予定にしていたので,「スクエアの日」(「6×6判の日」)には「マミヤシックスV型」を使うことにした。

マミヤシックスV

「マミヤシックス(Mamiya-Six)」は,6×6判のスプリングカメラである。(後の「ニューマミヤ6」「マミヤ6MF」は含まない。)
 1940年に最初のモデル(マミヤシックスI型)が発売され,最終モデル(マミヤシックス オートマット2型)は1958年の発売になっている(*1)。これらはすべて,ファインダーに内蔵された距離計とピント調節機構とが連動した,いわゆる「レンジファインダーカメラ」になっている。連動距離計を内蔵したスプリングカメラは例が少なく,多くはピント調整が目測式になっていたり,距離計が内蔵されていてもピント調整機構と連動していなかったりする。折り畳み式の蛇腹の先にレンズがあるスプリングカメラでは,レンズの先端を回転させるピント調整と,ファインダーに内蔵された距離計の動きとを機械的に連動させることがむずかしいためである。
 距離計との連動を実現したスプリングカメラとしては,ツァイスイコン「スーパー・イコンタ」が有名である。「スーパー・イコンタ」では,先端のレンズ部分に連動して動くプリズムを置き,ボディのファインダとの間を機械的にではなく光学的に結ぶことで,ピント調整と距離計との連動を実現した。これは,「ドレーカイルプリズム方式」と呼ばれる。
 一方,「マミヤシックス」ではレンズを固定しておき,ボディ内部のフィルムの位置を動かしてピントをあわせるようになっている。そのため,ボディ内でピント調整機構と距離計とが確実に連動している。これは「バックフォーカシング式」と呼ばれ,「マミヤシックス」が世界で初めて実現したと称しており,「マミヤシックス」全モデルに共通する特徴となっている。カメラをふつうに構えたときに右手親指がくる位置に,ピント調整のノブがある。この動きはとてもスムースで,ピント調整がとても軽快におこなえる。当然ながらこのとき右手ひとさし指がくる位置にシャッターレリーズボタンもあり,あらかじめ露出を決めておけばあとは被写体に集中してシャッターレリーズがおこなえる。じつに,撮りやすいカメラである。

右手に操作が集中

この「マミヤシックスV型」は,昨年,入手したものである。私にとっては2台目の「マミヤシックス」だ。
 「マミヤシックス」ではモデルによっていろいろなレンズが使われているが,「マミヤシックスV型」にはオリンパスの3群4枚構成「Dズイコー」レンズが使われているものがある。「Dズイコー」レンズはちょっとしたブランド品だったとでも言うべきか,そのころの雑誌を眺めれば,「高級ズイコーレンズを使用」を謳う広告がときどき見られる。ズイコーレンズを使うオリンパスのカメラは,「きれいに写る」と評価されるカメラが多いようだから,実際によく写ったのだろう。だから以前から気になる存在だったのだが,このころのズイコーレンズは古くなると白く濁ったり気泡が生じたりするものがあるようだ。そうなると,もうどうしようもない(1997年7月13日の日記を参照)。結局,私が購入した「マミヤシックス」は3枚構成の「セコールS」レンズが使われている「マミヤシックスK型」だった(1999年5月28日の日記を参照)。その後も,「Dズイコー」レンズの使われている「マミヤシックス」を気にかけていたのだが,もうひとつよい出会いがなく,購入を踏みとどまっていた(2009年6月13日の日記を参照)。
 この「マミヤシックスV型」を購入したのは,「Dズイコー」レンズが使われているモデルであり,レンズに白濁も生じておらず,それでいてとても安かったからである(笑)。もちろん,安いことには理由がある。「マミヤシックスV型」では圧板が挿入式になっているが,この「マミヤシックスV型」ではそれが失われていたのだ。だから,そのままではきちんとした撮影ができない。幸い,以前に購入した「マミヤシックスK型」の圧板が流用できるので,撮影には支障がない。
 ただし,この「マミヤシックスV型」と「マミヤシックスK型」とを同時に使用することができないので,同じ被写体を撮りくらべるような楽しみ方は,お預けとなる(笑)。

Dズイコーレンズは,期待通りに写ってくれただろうか。

Mamiya-Six V, D.Zuiko 7.5cm F3.5, NEOPAN 100 ACROS

近距離の被写体に,ピントをきっちりあわせられるのは気持ちいい。固定焦点のカメラとは,気分が違うし当然だが結果も違う。

Mamiya-Six V, D.Zuiko 7.5cm F3.5, NEOPAN 100 ACROS

そう,このポンプにピントをあわせたいのだ。後ろのお店とは違うのだよ,お店とは(2014年6月9日の日記を参照)。

Mamiya-Six V, D.Zuiko 7.5cm F3.5 + AUTO-UP, NEOPAN 100 ACROS

「オートアップ」を使えば,最短撮影距離が約0.5mになり,これくらいまでは接近できるようになる(2007年6月10日の日記を参照)。

Mamiya-Six V, D.Zuiko 7.5cm F3.5, NEOPAN 100 ACROS

夜景も問題なし。

Mamiya-Six V, D.Zuiko 7.5cm F3.5, NEOPAN 100 ACROS

ついでに,いつもの駅前のポスト。

「マミヤシックス」はバックフォーカシング式のために,スプリングカメラとしてはボディが厚い。また,ボディが頑丈なのはいいことだが,そのせいか重い。畳むとコンパクトになるので,持ってみると小さい割に重いと感じる。密度が高いと,実際以上に重く感じるようだ。
 中判カメラにはいろいろな形態のものがあるが,特徴的なものとしては「スプリングカメラ」のほかに「二眼レフカメラ」をあげることができる。
 一般的なカメラが「横長」の形をしているのに対し,二眼レフカメラは「縦長」の形をしている。フィルムに像を結ぶ撮影のためのレンズと,ファインダーに像を結ぶためのレンズとがあることから「二眼」である。また,レンズを通った光はミラーで反射され,上を向いたファインダースクリーンに像を結ぶ。「反射」すなわち「レフレックス」機構があるから,「レフ」である。あわせて,「二眼レフ」となる。二眼レフカメラは中判カメラであるが,機構がシンプルであり,内部はけっこう「空っぽ」だ。だから,「マミヤシックス」にくらべて密度が低くなり,見た目よりも軽く感じるられるのがうれしい特徴となる。
 二眼レフカメラは,軽く感じるのはいいのだが,高さも幅も奥行きもそれなりの大きさがある。だから,マチの小さなカバンで使うときは,折りたためる「マミヤシックス」のほうが好都合だろう。実際に撮影する場面を考えれば,どちらが好都合だろうか。二眼レフカメラのファインダーはウエストレベルだが,スプリングカメラのファインダーはアイレベルとなる。二眼レフカメラのピント調整はピントグラスに写った像をルーペで拡大して確認するのに対し,「マミヤシックス」は二重像合致式距離計によるピント調整になる。
 「6×6判」の撮影を楽しみたいときにどんなカメラを使おうかと考えるのも,楽しい悩みの1つであろう。

*1 マミヤ・カメラ博物館 中判・レンジファインダーカメラ (マミヤ・デジタルイメージング)
http://www.mamiya.co.jp/home/camera/museum/janru/chu-renjifain.htm


← 前のページ もくじ 次のページ →