撮影日記


2014年4月6日(日) 天気:晴れのち雨のち曇りのち晴れ

証明写真用カメラでステレオ写真を撮ろう
残念!CONVERTER-Rは使えない

今年も,「シノゴの日」がやってきた。「4月5日」という日付にちなんで,4×5判の大判写真を楽しもう,というのが趣旨である。このような日を設定することにより,フィルムで撮影することの楽しさを思い出してもらいたいのだ。シノゴ(4×5判)のように4インチ×5インチという大きなサイズ原版で見る写真の楽しさは,格別である。
 ところでシノゴ判などの大判写真というと,大型の三脚にカメラを据え付けて,冠布をかぶって撮るスタイルが連想されるものと思う。たしかにそうやってじっくりと構え,ピントを正確に調整し,ブレなども極限まで抑えて撮った写真の鮮明な像は,強烈な感動を呼び起こしてくれる。いっぽうで,それが大判写真の敷居の高さにつながるという面もある。実際には小型カメラであっても,いや,プリント作成時に引き伸ばし率が高くなる小型カメラの場合こそ,ピントやブレへの厳格な対処は必要である。だが小型カメラでは,もっと気軽に写せるという魅力も捨てがたい。
 だから大判写真でも,手持ちで気軽に撮ってみたいことがある。さすがにTACHIHARA Fielstand45のような組立暗箱やTOYO-View 45Cのようなモノレールカメラは,そういう目的には使えない。だから,「スピグラ」(Speed Graphic)を買おうと考えたこともあった。使うときには当然,フラッシュガンもつけておく。そうすれば気分は,1950年代の報道カメラマンだ(笑)。
 だが結局,スピードグラフィックを購入することはなく,4×5判の撮影にはもっぱら,TACHIHARA Filestand45を使ってきた。根性がつねに不足気味なので,TOYO-View 45Cはなかなか出番がないのである。

4×5判カメラのバック部は,国際規格とよばれるものになっているものが多く,カットフィルムホルダのほか,ロールフィルムホルダも利用できる。ポラロイドや富士フイルムからさまざまなサイズのものが発売されていたインスタントフィルムは,4×5判のものもあり,そのためのホルダも国際規格に準じていれば同様に使用できる。たとえば富士フイルムの「PA-45」というホルダが該当し,タチハラフィルスタンド45で使用することが可能だ。

「PA-45」は大判カメラ用のインスタントフィルムホルダというよりも,証明写真用カメラ「FP-UL」でビザ用の大型証明写真を撮影するために使用するホルダとして販売されていた。ということは,「FP-UL」のバック部は,4×5判の国際規格と同じサイズである,ということだ。だから,国際規格のカットフィルムホルダをちょうどはめこむことが可能である。残念ながらこのような用途は想定されていないはずなので,カットフィルムホルダがきちんと固定されない。

カットフィルムホルダがきちんと固定されないものの,これを利用してステレオ写真を撮影できることに気がついたのは2年半ほど前のことである(2011年10月6日の日記を参照)。今年の「シノゴの日」は,「ステレオ写真を撮る」ではなく「手持ちでシノゴを撮る」をテーマにすることにした。
 「スピードグラフィック」が大判カメラながら手持ち撮影に適している理由としては,大判カメラとしては小型軽量であること,グリップがあって持ちやすいこと,そして,距離計に連動しているためにピント調整がしやすいことがあげられる。「FP-UL」も,その条件を満たす。趣味性のカケラもないプラスチックのボディには,無駄な重さはない。シャッターレリーズボタンのあるグリップは握りやすく,ファインダーにはフォーカスインジケーターも内蔵されている。さらには,フラッシュだって内蔵しているのだ!フラッシュを内蔵したシノゴ判カメラと考えれば,実に貴重な存在と言えるだろう(笑)。
 ただし,あくまでも証明写真の撮影に特化したカメラである。このカメラのピントは1.2mに固定されており,フォーカスインジケーターは,被写体までの距離が1.2mであることを確認するものである(2012年9月27日の日記を参照)。絞りはF8(開放)からF90まで選択できるが,シャッター速度は1/60秒と1/125秒だけ。シャッター速度が2段階という点に物足りなさを感じるが,レンズが開放でもF8であり,ピントが近距離に固定されているのである程度絞って撮影したく,そして手持ち撮影にこだわりたいのだから,1/125秒が使えればじゅうぶんであると割り切ることができる。

さて,ほんとうならば「シノゴの日」である昨日に「FP-UL」を持ち歩きたかったのだが,あいにくの中途半端な雨である。雨の日だからこそ手持ち撮影にこだわりたいところだが,雨の日らしい情景が見当たらずに撮影を断念。早朝の晴れた瞬間にちょこちょこっと撮ってお茶を濁したのであった。

FUJI FP-UL, FUJINON 120mm F8, NEOPAN 100 ACROS

ところで,「FP-UL」には専用のコンバージョンレンズが用意されている。ピントが1.2mに固定されている「FP-UL」で小型の証明写真を撮るために被写体を縮小するもので,あえて言えば「広角コンバージョンレンズ」ということになるだろうか。縮小率の違いから「コンバータ C」(新パスポート用・受験用写真撮影用)と「コンバータ R」(運転免許用写真撮影用)の2種類があり,「コンバータ R」のほうが縮小率が大きい。

FUJI FP-UL, FUJINON 120mm F8 + Converter R, NEOPAN 100 ACROS

上の2枚を比較すれば,かなり縮小されていることがわかるかと思う。そして,周囲がややケラレるようだ(この画像では,平行法で立体視するために左右を入れ替えているので,ケラレている部分が内側になっている)。これは本来の用途であれば,コンバータを併用して撮影するときは画面の中心部しか使わないので,実際には問題ない。また,ステレオ写真としての効果は,広角レンズよりも望遠レンズのほうがわかりやすい場合が多い。せっかくおもしろいオプション品があるのだが,これを効果的に使うことはちょっと難しいようである。

ところで,「シノゴの日」の提唱に応じてくださった方のなかに,「中判カメラで撮った写真を組みあわせて,4×5判相当の大きさの写真にする」こと試みておられるケースがある(*1)。おもしろい手法なので,ぜひご覧いただきたいと思う。

*1 シノゴの日 / 勢いだけでやるページ (西尾 健)
http://jpskenn.homeip.net/2014/04/11/entry_11731/


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