撮影日記


2014年2月15日(土) 天気:曇り

いまさらながらのAPS一眼レフ
Canon EOS IX50

これまでに,さまざまな規格のフィルムが発売され,そして消えていった。いまでもヨドバシカメラやカメラのキタムラのようなお店で容易に入手できる規格のロールフィルムとしては,135フィルム(パトローネ入り35mmフィルム),120/220フィルム(中判カメラ用のいわゆるブローニーフィルム)くらいだろう。127フィルム(いわゆるベスト判フィルム)や110カートリッジフィルムもかろうじて流通しているが,ややマニアックな専門店や通信販売などを利用しなければ入手が難しい。結局,135フィルム,120/220フィルムは,長い間,ロールフィルムの主流となっていたということだ。主流になっていたがために,数多くのカメラが発売され,フィルムも供給されてきたのである。それ以外のロールフィルムは,結局,主流になれず,淘汰されたということになる。
 ごく最近,姿を消した規格のロールフィルムとして,IX240カートリッジフィルムがある(2011年7月7日の日記を参照)。このフィルムを使ったシステムは「APS (Advanced Photo System)」と称し,フィルムには磁気記録層が設けられ,そこに撮影データやラボへの指示などを記録することができた。フィルムの幅も狭く,画面サイズも小さいことから,APSカメラは小型になるという特徴もあった。フィルムはカートリッジに入っていて装填が容易になっており,フィルムのどこまでを使用しているかを記録できることから,フィルムを途中で交換できる機能をもつカメラもあった。IX240カートリッジフィルムを使うカメラは,とくに機能をもたない簡便なものも発売された一方で,レンズ交換も可能なシステム一眼レフカメラも発売されている。
 ポケットフィルムとも呼ばれて一時的に流行した110カートリッジフィルムでも,簡便なカメラが多く発売された一方で,高機能なカメラも発売されている。とくに,ペンタックス「auto110 (オート・ワンテン)」は,110カートリッジフィルムを使うカメラとしては唯一の,交換レンズも用意されたシステム一眼レフカメラだった。110カートリッジフィルムの画面サイズは13mm×18mmで,ライカ判の画面サイズ24mm×36mmの1/4ほどしかなかったこと,フィルムには裏紙がありかつ供給側に軸がないことから平面性があまりよくないことなどから,高画質を狙うにはやや無理があった。
 それに対してIX240フィルムの場合は,ライカ判よりは画面サイズが狭いものの十分に高画質が狙えるものとされていた。IX240カートリッジフィルムでは,ライカ判よりも横長の16.7mm×30.2mmのサイズに露光される。このサイズは,Hサイズ(ハイビジョン)と呼ばれる。これを基本に,左右をトリミングして16.7mm×23.4mmの範囲をプリントするものをCサイズ(クラシック)と呼び,天地をトリミングして9.6mm×30.2mmの範囲をプリントするものをPサイズ(パノラマ)と呼んだ。ディジタル一眼レフカメラの撮像素子で「APS-Cサイズ」と呼ばれるものは,この16.7mm×23.4mmに近いものを指している。

IX240カートリッジフィルムを使う一眼レフカメラは,キヤノン,ニコン,ミノルタから発売された。とくにキヤノン,ニコンのものは,ライカ判の一眼レフカメラ用の交換レンズが利用できるものであり,「APSを試してみようかな」「いつも持ち歩けるコンパクトな一眼レフがほしいな」などと思うユーザにとって,とっつきやすい存在だったはずだ。かくいう私も一時期,ニコンから発売されたPRONEAシリーズはかなり気になったものである。しかし「自分が欲しいものは,他人も欲しい」のである。みんなが欲しいものは,あまり安くならない。よい出会いを待っているうちに,IX240フィルムの供給が終わってしまった。こんどは一転して,「だれも欲しくないもの」になってしまっている。
 フィルムが供給されないのだから「使い物にならない」わけで,こうなると手放すにしても中古品としての値段がつかない。だから,見た目はけっこうきれいでちゃんと動作するものでも,わずか300円でジャンクコーナーにあらわれたりする。

残念ながらニコンのPRONEAシリーズではなく,キヤノンのIX50という機種だ。中古品としての値段がつかないなら,もとの持ち主の手元に埋もれてしまうか,捨てられてしまうかとなり,中古品市場に流通しなくなるだろうから,これは保護しておかねばなるまい。
 あらためて手にしてみると,手にすっぽりとおさまるコンパクトさが心地よい。オートの一眼レフカメラとして一般的なインタフェースだから,なんの違和感もなく使える。ふだんからEOSを使っていれば,すぐに豊富な交換レンズ等も利用できるだろう。ただし画面がライカ判よりも小さいから,広角レンズの使用にやや不便を感じることになるかもしれない。昨年に入手したシグマの18mm-35mmズームレンズ(2013年9月28日の日記を参照)なんかが,ちょうど似合いそうだ。背面を見ると,大きな液晶ディスプレイがある。文字や記号を表示できるだけのものだが,こうして見ているとまるで「ディジタル一眼レフカメラ」である。

さて,動作することは確認できたのだが,このカメラを使うことはできるのだろうか。先にも書いたように,すでにIX240カートリッジフィルムの供給は終了している。早晩,現像処理も引き受けてもらえなくなるだろう。フィルムを自作したり,自家現像できるようになったりする必要があるのだが,このフィルムの自作は単純ではないかもしれぬ。127フィルムにしても110カートリッジフィルムにしても,ふつうのフィルムが裏紙とともに,それぞれのサイズのスプール(軸)やカートリッジに巻き込まれているだけである。それに対してIX240カートリッジフィルムの場合は,磁気記録層の問題がある。単純に巻きかえれば済むというものでもなさそうだ。
 私の手元に,もはや使うつもりのないIX240カートリッジフィルムが何本か残っている。もしかしたら,これを使えば,それでもう終わりかもしれない。


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