撮影日記


2013年04月30日(火) 天気:くもり

8mmビデオはいつまで使えるか?

コダックが,「コダックが英コダック年金プラン(KPP)との包括的和解を発表」というプレスリリースを発表した(*1)。ちょっとわかりにくいニュースであったが,そこには「パーソナライズド イメージング」事業が「英コダック年金プラン」に売却される方針になった,ということが書かれている。「英コダック年金プラン」は,コダック社の退職者などが加入する年金を運営する組織であるとのこと。また,「パーソナライズド イメージング」事業は,一般向けの写真フィルムや現像サービスを提供する事業を含むものとのことだ。売却される事業がそのあとどのように運営されるのか,そこはわからないが,写真フィルムはコダックにとって伝統的な事業であり,これを売却するというのは,コダックという組織を再建するというよりも単に精算をおこなっているようにしか見えないのである。もちろん,新規の事業も立ち上がっているのだろうから,単なる精算ではないのだろうが。また,これに先立つこと1ヶ月,富士フイルムは「撮影用/上映用映画フィルム」の生産終了を発表(*2)している。それでも富士フイルムは,ラインアップを絞り,製品の値上げをおこないながらも(*3),まだ何種類かのフィルムを提供してくれているから,ありがたい。
 しかし,写真フィルムをとりまく状況が日に日に厳しくなっているのは,間違いない。今日の時点で,富士フイルムのWebサイトにおいて「生産終了」と明記されていないフィルムカメラは,「写ルンです」や「チェキ」シリーズを除けば,「KLASSE W BLACK (クラッセWブラック)」と「GF670 Professional (シルバー)」「GF670W Professional」だけのようである(*4)。ハッセルブラッドからは,伝統のVシステムが製造終了となる旨のアナウンスもあった(*5)。いまや,新品で購入可能なフィルムカメラはどれだけ残っているだろうか。それでもまだ,135フィルムや120フィルム,4×5判のシートフィルムは,売られている。現像サービスも,おこなわれている。これらがあるかぎり,フィルムカメラを使って写真を撮影することは可能だ。

それに対して,フィルムを使ったムービーカメラについては,事実上「終わっている」と言えるかもしれない。家庭用のムービーカメラとしては8ミリフィルムを使うものが一般的だったが,富士フィルムでは8ミリフィルムの製造・販売がすでに終了しており,現像処理も2013年9月で終了することになっている(*6)。独立したラボが現像を引き受けるケースはしばらく残ると思われるが,ごく限られたサービスということになるだろう。
 スチルの場合,フィルムのような消耗品やカメラのような機器がなくなっても,プリントになった写真は,ずっと鑑賞できる。それに対してムービーの場合,撮影したものを鑑賞するにも,なんらかの機器が必要だ。機器の入手や修理ができなくなると,せっかくの作品も鑑賞できなくなってしまう。記録メディアがフィルムのムービーなら,動画として見ることはできなくても,フィルムに写った1コマ1コマを「見る」ことはできる。だが,記録メディアが磁気テープの場合,それを再生するためのデッキがなければ,1コマたりとも見ることはできない。
 フィルムカメラはディジタルカメラに取って代られたわけだが,8ミリフィルムは家庭用ビデオカメラに取って代わられた。そんな家庭用ビデオカメラだが,すでに「8ミリビデオ」と呼ばれる規格のものは,据置型デッキもカメラ一体型のものも,機器の製造・販売が終了してしまっている(*7)。また,VHS規格のものも,カメラ一体型のものはすでになく,据え置き型デッキも風前の灯と言えよう(*8)。
 私はCanon UC1 HiというHi8規格の8ミリビデオカメラを使っていた。これで撮影したテープが何本かあるのだが,残念ながらカメラが不調になり,使えなくなってしまった。そののちフジの8ミリビデオカメラをいただいたのだが,いただいた直後に動作しなくなった。それでずっとあきらめて放置していたのだが,2年前にソニーが8ミリビデオカメラの製造・販売を終了することをアナウンスしたのを機会に,中古品でもよいので安価に8ミリビデオカメラが買えないものかとさがすようになった。とにかく8ミリビデオテープを再生する機能さえ使えれば,それを利用してDVDにでもダビングしておきたかったのである(2011年7月22日の日記を参照)。いざ意識してさがしてみると,同じようなことを考える人は多いのか,VHS-Cのビデオカメラはよくジャンクコーナーにころがっているのに,8ミリビデオカメラはなかなか見つからない。
 だがこのたび,ようやく8ミリビデオテープを再生できるビデオカメラを入手することができた。SONYのCCD-TR900という,1993年に発売された機種だ。ファインダーがカラーLCDになる直前ころのものである。レンズにカビが見られるが,いまさらこれで撮影することはないだろう。とにかく,過去に撮った8ミリビデオテープをDVDにダビングしたいのである。さあ,いつまで不調にならずに,がんばってくれるだろうか。

*1 コダックが英コダック年金プラン(KPP)との包括的和解を発表 〜経営再建完了に向け大きく前進〜 (コダック株式会社,2013年4月30日)
http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/corp/news/2013/0430.shtml

*2 撮影用/上映用映画フィルム 生産終了のお知らせ (富士フイルム株式会社,2013年4月2日)
http://fujifilm.jp/information/articlead_0204.html

*3 プロ用銀塩写真フィルム 一部製品のパッケージリニューアルおよび価格改定ならびに一部製品の販売終了のご案内 (富士フイルム株式会社,2013年2月21日)
http://ffis.fujifilm.co.jp/information/articlein_0022.html

*4 フィルムカメラ (富士フイルム株式会社)
http://fujifilm.jp/personal/filmandcamera/filmcamera/index.html

*5 ハッセルブラッド Vシステム製造中止のお知らせ (ハッセルブラッド,2013年4月29日)
http://press.hasselblad.com/media/13824/2013-04-29_pr_vsystem-discontinued_jp.pdf

*6 シングル-8用フィルム「FUJICHROME R25N」「FUJICHROME RT200N」販売および現像終了のご案内 (富士フイルム株式会社,2009年6月2日)
http://fujifilm.jp/information/articlead_0011.html

*7 「8ミリ方式 デジタルビデオ カセットレコーダー 出荷完了のお知らせ」(ソニー株式会社/ソニーマーケティング株式会社,2011年7月21日)
http://www.sony.jp/handycam/info2/20110721.html

*8 お客様のご要望にお応えして新発売! VHSビデオが楽しめるDVDレコーダー。過去に録画したVHSビデオも簡単に再生できます。(DXアンテナ,2012年5月1日)
http://www.dxantenna.co.jp/product/contents/DXR160V.html


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