撮影日記


2012年11月22日(木) 天気:晴

「おもちゃ」なら「おもちゃ」らしく
「おもちゃ」に徹するべし
謎のディジタルカメラDN-50

このディジタルカメラは,最近,6台100円で入手したジャンク扱いのカメラに含まれていた1台である。正面には「DN-50」という文字があり,これはこのカメラの型番というか名称を示しているのだろう。しかしカメラのどこを見ても,メーカーらしき名称が記載されていない。ただ,シリアルナンバーらしきものは,ちゃんと記載されている。
 「DN-50」という名前から予想されるように,このディジタルカメラの撮像素子は,500万画素のものになっている。500万画素もあれば,L判程度のプリントにはなんの問題もないのだが,惜しいことにこのカメラはピント調整ができない。マクロモードの切り替えスイッチはあるものの,固定焦点なのである。
 光学ファインダーはなく,背面のLCDを見ながらの撮影となるが,本体が小さいためLCDがたいへん大きく見える。基本的な操作は,コンパクトディジタルカメラを使ったことのある人なら,だいたい直観的にわかるだろう。

ここまで見て気がついた人もあると思うが,先日の日記で紹介した,エグゼモードの「YASHICA EZ F924」にたいへんよく似た製品である(2012年10月30日の日記を参照)。本体の大きさ,単3型の電池2本を収納する部分がグリップのようになっている形状,上面の電源スイッチやシャッターレリーズボタン,正面のレンズやフラッシュの配置,背面のLCDや各種ボタンの配置,側面のマクロモード切替とUSB端子,底面の電池ボックスの蓋の形やそこに貼られたシリアルナンバーなどが記載されたシールまで,なにからなにまでよく似ている。どこかはわからないが,同じ製造元からOEM供給を受けたものではないかと思われる。
 ボタンに割りつけられた機能も同じようになっている。たとえば,撮影中に十字キーの「下」を押せば露出補正モードに入るところは,「YASHICA EZ F924」も「DN-50」も同じである。もっとも,「YASHICA EZ F924」の露出補正は1/3段刻みで±2段,「DN-50」は1/2段刻みで±2段という差はある。

900万画素級の「YASHICA EZ F924」と500万画素級の「DN-50」との間には,製造時期の違いなど基本性能の差があるだろう。また,いくらOEM供給とはいえ,他社製品との間になんらかの差をつけることはあるだろう。だから,よく似ていても,細かい仕様までまったく同一になっていなくても当然だ。ましてやこれは,ディジタルカメラである。完全に機械制御の製品にくらべれば,ソフトウェア部分のつくりこみで多少の機能差を持たせられるくらいの余地はある。
 「設定」のメニューに入れば,その差が明瞭にあらわれる。
 「YASHICA EZ F924」にも「DN-50」にも,さまざまな設定が用意されている。記録画素数,画質(圧縮率),ホワイトバランス,感度など,どんなディジタルカメラにもありそうな機能のほかに,彩度が選択できたり,「セピア」「モノクロ」などが選択できたりする機能は,両者に共通している。また,共通する機能として,時計の設定は当然のものと思うが,「電源周波数」を切りかえられるようになっているのは,なんのためだろう?室内照明の周波数にあわせられるということか?どんな効果があるかは知らないし,確かめてもいないが。

「DN-50」に特有と思われる機能として,「RGB設定」というものがある。R,G,Bの要素ごとに補正ができるものだ。同じ落ち葉を撮る場合でも,RGB設定を変えれば,いろいろと変化をつけることができる。

DN-50,6.3mm lens, Macro

ただの昼間の風景も,Rを強調してやれば簡単に夕景っぽくなる。

DN-50,6.3mm lens, Macro

こういう操作は,RAWデータを記録して,現像ソフトウェアやフォトレタッチソフトウェア上でおこなうほうが効率的で意図した結果が得られやすいと思われるが,コンパクトディジタルカメラで簡単に体験できるというのも,悪いことではない。画像がいまひとつシャープでないことをあわせて考えれば,少し以前に流行した,「トイカメラに派手な発色傾向のあるフィルムを入れて撮る」というスタイルに通じた遊び方ができる,と考えることもできそうだ。そうだ,「DN-50」は,「トイカメラ」なのである。「おもちゃ」なのである。
 「DN-50」の「設定」メニューをさらにさぐってみると,「ゲーム」というものがあった。なんだ,これは?とメニューを開くと,「テトリス」「倉庫番」「ジグソーパズル」「大食いのヘビ」という4つの選択肢があらわれた。なんと,古典的というかなんというか。

そうだ,「DN-50」は「おもちゃ」なのである。「おもちゃ」なのだから,「ゲーム」ができても当然だ。「おもちゃ」なら「おもちゃ」らしく,「おもちゃ」に徹しているから,これでいいのだ。なんとすばらしい製品ではないか,安価に入手できるなら,1台持っていても損はないと思う。6台100円のジャンクカメラのセットに含まれていたから,16.7円で入手できたことになる。いや,これなら1台100円であったとしても,じゅうぶんに満足できたであろう。


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