撮影日記


2012年11月16日(金) 天気:晴 夜遅くから雨

記録メディアがささえる情報機器
消えたフィルム,消えたメモリカード

ジャンクコーナーであれ中古品コーナーであれ,あきらかに他よりも安く処分されているように見えるカメラがある。たとえば,110カメラやAPSカメラがそうだ。110カメラやAPSカメラはもともとが簡便で安価な製品が多いのだが,それにくわえて,110カートリッジフィルムやIX240カートリッジフィルムがもう入手できない状態になっているという要因も無視できない。フィルムが入手できない以上,それらのカメラは完全に動作する状態のものであってももう,写真を撮る道具として使うことができないのである。写真を撮る道具として使えないカメラには,「もてあそんでメカニズムの動きを楽しむ」か「収集して飾って眺める」くらいしか用途がない。残念ながら簡便で安価なカメラには,そのような楽しみ方をする余地が少ないのである。
 110カートリッジフィルムについては,限定的ではあるがフィルムが再生産されているようだ。また,カートリッジさえあれば,切りだしたフィルムを巻きなおして自作することも不可能ではない(2010年02月19日の日記を参照)。さらに,必ずしも鮮明な描写を求めるわけではない「トイカメラ」愛好者にとっては,簡便なカメラのほうが都合よい場合も多いだろう。そう考えれば,APSカメラにくらべて110カメラのほうが多少は商品価値があることになりそうだ。だが,「不要になった110カメラ」という供給にくらべれば,「簡便な110カメラがほしい」という需要は,たぶんはるかに小さいであろう。

金属鉱石や化石燃料などのいわゆる地下資源の多くは,地球の長い活動のなかで蓄積されてきたものである。鉱脈はいつか必ず,掘りつくす。そうなってしまえば,もうあらたに供給されることはない。ただ,つぎつぎにあらたな鉱脈が見つかり,引き続き供給されているように見えているのである。
 中古カメラも同じことだ。ある特定の機種に着目すれば,それは過去にある程度の量が製造され,市場を通じて流通した。そして不要になれば下取りに出されたりして,中古市場にあらわれる。総埋蔵量は減る一方であり,掘りつくしてしまえば,市場からなくなってしまう。いまはジャンクコーナーなどで豊富に見られるカメラも,いずれ,目にする機会は減ってくるだろう。実際,初期のキヤノンオートボーイやジャスピンコニカなど,一時期はジャンクコーナーの常連だったようなカメラをあまり見かけなくなってきた(2005年07月26日の日記を参照)。
 それにかわって,ディジタルカメラの姿をよく見かけるようになっている。ディジタルカメラというものが広く流通するようになったのは,1995年に発売されたカシオ「QV-10」以降とみなせるから,その歴史はもう15年をこえることになる。最近の電気製品は「5年保証」がつけられて売られることが多いから,買ってから5年もたてば,手放されることも多くなるだろう。10年前の電気製品は「かなり古いモノ」という認識をもたれるかもしれない。しかも初期のディジタルカメラは,年ごとに撮像素子の画素数など基本性能があがっていった。画素数に関してだけ見ても,500〜600万画素くらいになるまでは実用的に厳しい面もあったので,その間の製品の陳腐化はかなり激しいと感じていた。そういう時代の製品は,そろそろ発売されて10年が経過する。いまはそれらが,いっせいに手放される状況のなかにあると言える。

動作するにもかかわらず値段がつかずに処分されているディジタルカメラとしては,まず,おおむね200万画素以下クラスのものが見られる。このクラスだと,Webに表示させたり2L判くらいまでのプリントに使うのであればさほど問題ないが,四つ切くらいに大きくプリントするのは少々厳しい。だから,「処分」されるのも理解できる。もう1つ目立つものとして,フジやオリンパスの製品がある。これらは500万画素クラスのものであっても,ジャンク扱いとはいわないまでも明らかに「処分」される傾向が見られる。まあ今は1000万画素をこえるものもあたりまえに存在するから,500万画素くらいのものはずいぶんと見劣りするのは間違いない。だが,ふつうに使うのであれば,500万画素というのは十分なスペックではないだろうか。
 そこには,110カメラやAPSカメラと同様に,記録メディアの問題があるようだ。ある時期までのフジやオリンパスのディジタルカメラは,記録メディアとして「xDピクチャーカード」を使うようになっている。これは,フジやオリンパスの独自の規格のもので,現在の主流と言える「SDカード」と互換性がない。そのため,「SDカード」の低価格化が進んでも「xDピクチャーカード」の価格はあまり下がらず,いつしか「SDカード」よりもはるかに高価なものになっていた。そして,フジは「xDピクチャーカード」の販売から撤退し,いまカメラ店や家電販売店,パソコンショップの店頭で「xDピクチャーカード」を見かけることはなくなった。「スマートメディア」に至っては,多くの人にとって忘却の彼方へ美しく旅立ってしまっていることだろう。いや,そんなものが存在したことすら知らないという人がいても,おかしくないか。もはや「スマートメディア」それも,64MB以上のものに対応していないオリンパス「C-1400L」(2012年07月29日の日記を参照)なんて,いかに当時としては高性能のものだったといえども,いまとなっては過去の遺物以外のなにものでもないということだ。

そんな状況だからこそ,発売されてまだ10年もたっていないフジ「FinePix Z5fd」(2006年発売,630万画素)や「FinePix Z2」(2005年発売,512万画素)などを,動作未確認のジャンク扱いだとはいえ,インターネットオークションで3台まとめて100円(消費税別)で落札できたのであろう。「FinePix Z5fd」「FinePix Z2」の記録メディアは,いずれも「xDピクチャーカード」である。「FinePix Z5fd」にはわずかながら内蔵メモリがあるので「xDピクチャーカード」がなくても使えなくはないが,「FinePix Z2」は「xDピクチャーカード」がないと使いモノにならないのである。

充電器やケーブル類は付属していなかったが,それぞれに付属していたバッテリーNP-40はまだしばらく使えそうである。もちろん,3台ともちゃんといまのところ動作している。これらは実店舗で受け取ることができたので,振り込み手数料も送料もかかっていない。それらが必要であるならばなおさら,インターネットオークションでの「ジャンク品」の相場は,これくらいだとたいへんありがたい。いや,勝手なことばかり言って,申し訳ない。

FUJI FinePix Z5fd

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