撮影日記


2012年10月30日(火) 天気:晴

ヤシカEZ F924 モックアップか
と思うほどの存在の耐えられない軽さ

昭和30年代から40年代にかけて,「ヤシカ」のカメラは,たいへんポピュラーな存在であった。とくに,「ヤシカフレックス」や「ヤシカエレクトロ35」のシリーズは,二眼レフカメラブームや,EEカメラブームの中心的存在だったと言える。また,「ヤシカフレックス」の大ヒットは,それまで多数存在してたスプリングカメラや二眼レフカメラのメーカーやブランドを淘汰した。さらに,「ヤシカエレクトロ35」も,35oカメラのメーカーやブランドの淘汰につながったと言えるだろう。当時のヤシカは,大きな存在感のあるカメラのブランドだったのである。
 1975年に発売された「CONTAX RTS」も,ヤシカの存在を大きく市場にアピールすることになる。しかしこの後,ヤシカの経営は悪化し,京セラに吸収された。京セラに吸収された後も高級カメラはCONTAXブランドで,普及型カメラはYASHICAブランドで発売が続けられたが,やがてYASHICAブランドのカメラは,KYOCERAブランドのカメラにおきかえられていく。海外ではYASHICAの知名度が高かったため,輸出モデルにはYASHICAの名称が使い続けられてはいたが,日本国内では中古カメラ店を除いて,YASHICAの名前を見かけることはなくなっていった。
 そして2005年に京セラは,コンタックス事業を終了した。
 ヤシカを吸収した京セラがカメラ事業から撤退したことにより,カメラのブランドとしての「YASHICA」の名前は消え去ったかに思われたが,数年前から「YASHICA」を名乗る,廉価なディジタルカメラ,ビデオカメラ,イメージスキャナなどが市場にちょこちょこ顔を出すようになった。これらの「YASHICA」を名乗る製品を発売しているのは,日本のエグゼモードという会社であった。エグゼモードは,ディジタルカメラやDVDプレーヤなどの,いわゆるディジタル家電製品の企画や生産をおこなっている会社で,近年は「YASHICA」のほか「AGFA PHOTO」のブランドの製品も扱っていた。また,OEM生産等も手がけていたようである。ただし,2011年6月をもって,「YASHICA」「AGFA PHOTO」ブランド製品の発売から撤退している。結局,日本国内から「YASHICA」の名前は,ふたたび消えている。

そんな「YASHICA」のディジタルカメラを入手した。ヤシカ「EZ F924」という製品である。

912万画素の撮像素子をもち,3488ピクセル×2616ピクセルの画像を記録できるほか,本体内での画像処理によって最大で4608ピクセル×3456ピクセル(16メガピクセル相当)の画像を記録できる。記録媒体はSDカードおよびSDHCカードに対応しており,動画や音声の記録もできる。シャッタースピードは最長4秒(夜景モード時)の長時間露光から1/4000秒までが使え,感度はISO800相当までが設定できる(*1)。一般的な撮影には,必要にして十分なものがある。光学ファインダーはなく,背面の液晶モニタを見ながらの撮影となる。サイズは2.4インチだが,本体がたいへん小さいので,とても大きく感じられる。このカメラでとくに優れていると感じられたのは,電源が単3乾電池2本で,専用バッテリーという制約を受けないことだ。
 問題は,レンズ。搭載されたレンズは,ライカ判換算で43mm相当のF3.2の単焦点レンズであるが,固定焦点なのである。せっかく912万画素という撮像素子をもちながら,ピントをあわせることができないのは,あまりにもったない。残念だ。
 結局「おもちゃ」なディジタルカメラなのだが,非常に安価に入手したので,文句はない。ほかのいろいろなカメラとあわせて,6台100円で入手したなかの1台である。単純に割れば,16.7円。

このカメラ,「動作チェックしたが不動」というジャンク扱いだった。受け取ったカメラを持ってみると,信じられないくらい軽い。見本のモックアップか?と思うくらい軽い。モックアップとは模型を意味するが,モデルとは違って,「まがい物」という意味合いが強いようだ。モックアップだったら「動作チェックしたが不動」は当然だ。だが,たぶんかなり安価に売られたと思われる,このようなディジタルカメラで,わざわざモックアップを用意する必要があるのだろうか?まあ,いろいろと思いながら電池を入れてみれば,なんのことはない。あっさりと動作する。どこが,不動なんだか。たぶん,レンズ部に大きな傷があるので,その傷のためにジャンク扱いにしたのだろう。それを,「動作チェックしたが不動」と書き間違えたのではないだろうか。そうとしか,思えない。

ジャンク扱いにした理由すらあまり意識されない,そんな存在の軽いディジタルカメラであるが,伝統ある「YASHICA」の名前を背負っていることは忘れてもらいたくないものだ。実際に撮影してみれば,ちゃんと画像が得られる。固定焦点のためにピントがきっちりあわせられず,どうしても甘い描写になってしまうのはしかたないが。レンズ部に,機械的な絞りやシャッターはないようなので,もしかしたらちゃんとしたレンズを移植すると,しっかりと写るようになるのかもしれない。レンズ部に大きな傷があるから,適当なレンズが見つかれば,試してみるのもいいかもしれぬ。

YASHICA EZ F924, 7.5mm F3.2

*1 EZ F924 : YASHICA (エグゼモード株式会社)
http://www.exemode.com/yashica/dc/f924.html


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