撮影日記


2012年09月27日(木) 天気:晴

困ったときにはパーマセルテープ
FP-ULでステレオ写真を撮るには欠かせない

お彼岸をすぎると,空はすっかり秋の気配である。昼間の青空が,じつに気持ちよい。しかし不思議なことに,夜になると曇りがちになる。もうすぐ,いわゆる「中秋の名月」であるが,きれいなお月さまを拝むことはできるのだろうか?なお,昨夜はひさしぶりにきれいな月を見ることができた。

Vixen D=80mm f=1200mm, Nikon D70 (ISO1600, 1/125sec)

お彼岸をすぎてようやく,いつもの土手がヒガンバナが撮りごろを迎えそうになっている。これまで,お彼岸前くらいに撮りごろになることが多かったはずなのだが,最近は10月の最初ころに撮りごろを迎える。もしかすると,お彼岸前に撮りごろを迎えていたときが「早すぎた」のだろうか?ともあれ,土手にはつぼみをつけたヒガンバナの花茎がにょきにょきと生えている。
 花を撮る人は,少なくないだろう。花の撮り方にもいろいろとあるが,多数が群れた状況を撮る場合と,1つの花に接近して撮る場合とに大きく分けられるだろう。たとえば春に被写体にされやすいサクラであれば,サクラの木全体,あるいはサクラ並木などを被写体とする場合もあれば,サクラの花の1つに着目して撮る場合もあるということだ。さて,ヒガンバナは,どちらかというと,多数が群れた状況を撮られる場合が多いのではないだろうか。その理由として,そもそもヒガンバナは群生していることが多いというのもあるが,それに加えてヒガンバナはあまりに平面的ではないことがあげられよう。よく見れば,長い花茎の先に,長い花弁が輪を描くように6つ並んでついており,さらに長いおしべ,めしべがつきだしていることがわかる。まさに,花が輪になる輪が花になる。午後6時ではないが,「花ぐるま」が流れてくる(2012年9月17日の日記を参照)ような花なのだ。冗談はさておいて,とにかくじつに広大な空間を占めている,そんな花なのである。
 ところで,写真というものは,3次元の空間を2次元の面に圧縮して記録するものであるという言い方ができるだろう(さらに,「時間」も切り取って記録しているわけである)。3次元空間を広く占めるヒガンバナにふさわしい撮り方は,やはりステレオ写真なのではないだろうか?ということにして,今日は,フジの「FP-UL」を使って,ステレオ写真を撮ることにした。
 ただし「FP-UL」は,ステレオカメラではない。本来は,証明写真用のインスタントカメラなのである。ビザ用の写真を2枚,すぐにつくるために,このカメラの正面には2つのレンズが並んでおり,4×5判のインスタントフィルムに同時に2コマの写真を写しこめるようになっている。2つのレンズが並んでいるから,それで写した写真は,立体視が可能なステレオ写真になっているのである。

証明写真用に特化したカメラなので,制約も多い。スタジオあるいは写真店の店頭で,フラッシュを使って撮影することが前提のため,シャッタースピードは1/60秒と1/125秒の2段階しか選べない。また,人物のバストショットを撮るのが目的のため,ピントの位置は1.2mに固定されており,調整はできない。
 ただ,おもしろい機能がある。ファインダーには「フォーカスインジケーター」があり,シャッターレリーズボタンを半押しにすることで,被写体までの距離が適正かどうかがわかるようになっている。

このインジケーターはLEDなのだが,これが屋外ではたいへん見えにくい。「FP-UL」は,屋外で風景を撮るためのカメラではないのだから,屋外でのフォーカスインジケーターの見え具合など,はなから考慮されていないに相違ない(2011年10月16日の日記を参照)。だから,この位置に黒いパーマセルテープをちょこっと貼ってやる。こうすることで,屋外でもフォーカスインジケーターを視認できるようになる。

黒いパーマセルテープは,このようになにかと役に立つ。撮影の際には,必携しておきたいものの1つだ。たとえば10cmほど切ったものを,三脚に貼っておくだけでもいい。必要なときに,それをはがして利用すればよいのだ。まあ,あまり長く貼りっぱなしにしていたら,糊が効かなくなってしまうので,そこは注意が必要だが。
 さて,電車が通過するのを待って,レリーズを切る。こういうシーンを立体視するのは,楽しいものである。ただ,お彼岸を過ぎたとはいえ,日なたでじっと待っているのはかなり暑い。まだまだ,日傘は手放せない。というか,屋外でじっと待つような撮影をする人は,日傘をもっておくことを強くおすすめしたい。使えばその「楽」さがわかるはずだ。だが,今日の撮影には日傘よりも赤フィルタが必要だったようだ。ヒガンバナの赤も,土手の草の緑も,同じように濃い色をしていたのである。モノクロ写真では,色の識別ができないのだった。

FUJI FP-UL, FUJINON 120mm F8, NEOPAN 100 ACROS

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