撮影日記


2012年05月16日(水) 天気:晴ときどき曇

110フィルム復活!

ここ数年,フィルムに関してのニュースは,さびしいものが多い。アグファやコニカミノルタは撤退し,富士フイルムやコダックはラインアップを整理し値上げをおこなってきた。とくにコダックは,カラーポジフィルムの製造・販売を完全に終了するようだ。「コダクローム」など写真の歴史上,大きな存在の製品を送り出してきたコダックの現状は,じつにさびしいものがある。
 いまや,大規模に多種多様なフィルムを供給し続けているのは富士フイルムだけになったわけだが,富士フイルムも製品のラインアップをかなり整理している。富士フイルムは昨年,いわゆるAPSフィルム(IX240)の製造・販売の終了を発表した(*1)。ある規格のフィルムがなくなると,そのフィルム用につくられたカメラが使えなくなってしまう。いわゆるAPSフィルムは,近いうちに使えなくなってしまうわけだ。市場から姿を消してしまったフィルムは,もちろんほかにもいろいろとある。たとえば「ベスト判」とよばれる127フィルムも,そんな1つだ。ただ,127フィルムは,いまでも供給がつづいている120フィルムと同様に,スプール(軸)に裏紙とともにフィルムが巻きつけられたものである。スプールさえあれば,フィルムを自作することは容易である。では,スプールをもっていない人はどうすればよいのか?中古品をさがしてみよう,スプールそのものが中古品として流通していることもあるし,127フィルム用の中古カメラのなかにスプールが残っていることもある。幸い,127フィルムはコダックや富士フイルムからは供給されなくなったが,まだ東欧のメーカーなどによってほそぼそと供給されている。127フィルム用カメラを使い続けたい人は,いまのうちにスプールを十分に入手しておき,フィルムを自作できるようになっておくのがよいかもしれない。
 110フィルムも,同様な状況になっていた。コダックや富士フイルムから供給されなくなり,やがて市場から姿を消してしまったのである。110フィルム用カメラにも,PENTAX auto110など魅力的なカメラが多いが,これらがすべて,使えなくなったのだ。だが,カートリッジさえ残っていれば,中身は裏紙付のロールフィルムなのだから,フィルムの自作は可能である。もっとも,127フィルムよりやや手間がかかるし,本来の110フィルムにあったパーフォレーション(孔)を設けるのは難しいから,すべての110フィルム用カメラが使えるようになるわけではないのだが。とはいえ,現在,カートリッジをもっていない人は,そういう自作すら困難な状況になっていた。

ところが今日,突然,「110フィルム復活」のニュースが飛び込んできたのである。

そのニュースを伝えてきたのは,Lomographyだ。Lomgraphyといえば,いろいろな「おもちゃカメラ」あるいは「トイカメラ」とよばれるカテゴリのカメラでの遊びを提案していることで知られている。「トイカメラ」には,110フィルムを用いるものも多いので,Lomographyとしても110フィルムにはぜひとも復活してもらいたかったことだろう。

ただ,発売予定の110フィルムの説明を読むと,いくつか気になる点がある(*2)。
 1つは,「初回生産のOrca フィルムは背面紙がありません」つまり,裏紙がないという点だ。110フィルムのカートリッジには窓があり,それにあわせてフィルム室の蓋にも窓がある。そこから裏紙に印刷された番号を読み取ることで,フィルムカウンタの役割を果たすようになっている。裏紙がないということは,使えないということじゃないのか?

また,「1コマごとスプールはとまらない為」ともある。これは,どういうことか?もしかすると,110フィルム特有のパーフォレーションがない,ということなのだろうか?
 さらに,フィルムのさいごのほうは,「多少の光漏れが生じる恐れがあります」とも書いている。まあ,そこを「欠陥」ではなく「長所」のように表現するところから,Lomographyを嫌う人もあるのだろう(笑)。

さて,これらのことが気になるので,Lomographyに問い合わせてみた。
 まず,裏紙がないことであるが,そのために「窓をふさいである」とのことだ。すると,フィルムカウンタとして数字が読み取れないわけだが,そのことを「1コマごとにはとまらない」と称したようである。だから,パーフォレーションはちゃんとあるとのこと。フィルムのさいごのほうにカブリの危険性があるのは,裏紙がないことが理由であり,カートリッジの構造に問題があるわけではないとのことだ。
 ということで,あまり問題なく使えそうである。
 少なくともこれは,カートリッジをさらに入手できる貴重な機会だ。
 ともあれ,110フィルムの復活は,今後に大いなる希望をもたらしてくれたのである。

*1 APSフィルム販売終了のお知らせ (富士フイルム株式会社 2011年7月6日)
http://fujifilm.jp/information/articlead_0120.html

*2 Lomography Orca 110 B&W Film
http://japan.shop.lomography.com/lomography-orca-110-bandw-film


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