撮影日記


2011年10月13日(木) 天気:晴

さらに少なくなるインスタントフィルム

先月末,富士フイルムは,ピールアパート式インスタントフィルムのラインアップの整理を発表した(*1)。2009年には,モノクロのインスタントフィルムのラインアップを大幅に整理しており(*2),これらの結果,感度ISO100のカラーフィルムが2サイズ2種類(光沢面と絹面)残るだけとなる。

ポラロイドが,インスタントフィルムの製造をすべて終了すると発表したのは,3年前のことだった(2008年7月17日の日記を参照)。ポラロイドからは,多種多様なインスタントフィルムが発売されていた。それらすべてがなくなったわけである。大規模店のフィルム売り場面積が一気に縮小したことにも,大きな影響があったはずだ。

 インスタントフィルムは,撮影したその場でプリントが得られるものである。一般的なインスタントカメラでは,シャッターレリーズボタンを押すとフィルムに露光され,すぐにカメラから印画紙が出てくる。そしてしばらくすると,その印画紙にじわーっと画像があらわれてくる。このようなインスタントフィルムは,自動現像式とよばれている。まさに,ボタンを押すだけでプリントが得られるのである。「あなたはボタンを押すだけ。あとはおまかせください。」とは1888年のコダックのキャッチコピーであるが,自動現像式のインスタントカメラにこそ,このフレーズはぴったりであろう。

インスタントフィルムは,最初からこのような自動現像式だったわけではない。
 インスタントフィルムは,ネガにあたるシートと印画紙にあたるシートとが重ね合わせられており,その間に現像のための薬品があるという構造になっている。撮影後,フィルムを引き出すときに薬品が塗布され,一定の時間後にシートを剥がすことで,プリントが得られるというものだった。このようなインスタントフィルムは,自動現像式に対して,ピールアパート式(剥離式)とよばれる。ピールアパート式インスタントフィルムは,現像時間を自分で管理しなければならない。すなわち,現像に失敗する可能性が含まれる。きちんと確実にプリントを得たいのであれば,ある程度の知識や経験が必要ということだ。ピールアパート式のインスタントフィルムは比較的高画質という利点があるが,一般の人が手軽にプリントを得たいならば,自動現像式のほうが優れていることになる。
 ピールアパート式のインスタントフィルムは,一般の人が使うよりも,業務としての撮影の場面で使われることのほうが多いだろう。そういう場面の1つに,スタジオでの撮影がある。本番の撮影のまえに,インスタントフィルムで撮影をおこなうことで,ライティング等を確認できるという使い方だ。スタジオで使われるような中判カメラや大判カメラには,インスタントフィルムを使うためのフィルムバックがオプションとして必ず用意されていたものである。業務に使われる場面としては,証明写真の撮影もあげられる。写真店の店頭に「証明写真すぐできます」という幟が立っているのをよく見かけたと思うが,そこにピールアパート式のインスタントフィルムが使われていたのである。

証明写真というものは,なんらかの書類等に添付して使う写真で,そのサイズは小さく,数枚あればことたりる。そこで,1枚のインスタントフィルムに何枚かの小さな写真を撮影できる,証明写真を撮影するための専用のシステムが用意された。

これは,富士フイルムの「FP-14」という,運転免許証や履歴書用の小さな写真を一度に4コマ撮影できる「4眼カメラ」である。

これは,富士フイルムの「FP-UL」という「2眼カメラ」である。一度に撮影できるのは2コマだけであるが,ビザ用の大きめの証明写真を撮影できるようになっている。「FP-UL」は,フィルムホルダやアタッチメントレンズを交換することで,運転免許証や履歴書用の小さな写真や,パスポートや受験用の中くらいのサイズの写真を撮ることもできる。
 「FP-UL」用のインスタントフィルムホルダは,85mm×108mm(画面サイズ:73mm×95mm)のレギュラーサイズのフィルムを使用する「PA-145」と,102mm×131mm(画面サイズ:89mm×118mm)の4×5判のフィルムを使用する「PA-45」の2種類がある。ビザ用の写真は大きいため,「PA-45」を使わなければならない。
 ポラロイドがインスタントフィルムの製造から撤退したため,インスタントフィルムを安定的に供給してくれるのは,富士フイルムだけという状態になった。富士フィルムからは,これらの証明写真用カメラで使える,2つのサイズのピールアパート式インスタントフィルムが継続して供給されてきた。

さて,「PA-45」は,一般的な4×5判カメラでも使用できる。

ということは,逆に,「FP-UL」で一般的な4×5判のシートフィルムホルダが使用できるということだろうか?

当然のごとく,ぴったりとはまる。
 フィルムホルダを固定するレバーは,シートフィルムホルダの溝に,うまくかみあってくれている。

見たところ,光漏れもおこらなそうなので,あとは試し撮りをしてみるだけだ。証明写真用カメラは,「ステレオカメラ」として使えるかもしれないのである(2000年6月12日の日記を参照)。

*1 「インスタントピールアパートタイプ・フィルム インスタントB&Wフィルム FP-3000B 45 SUPER SPEEDY 販売終了のお知らせ」(2011年9月29日 富士フイルム株式会社)
http://fujifilm.jp/information/articlead_0132.html

*2 「インスタント黒白FPフィルム一部製品販売終了のご案内」(2009年9月24日 富士フイルム株式会社)
http://fujifilm.jp/information/articlead_0018.html

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