撮影日記


2011年09月05日(月) 天気:晴れ

アスティアは消える ネオパンSSは風前の灯火

いまの日本で,フィルムで写真を撮っている人はどれくらいいるのだろうか?そういう統計データは,残念ながら見たことがない。だから,適当に推測してみることにする。
 総務省統計局が2011年8月22日に公表したデータ(*1)によると,2011年8月1日現在の日本の人口は,1億2792万人である。フィルムを使って写真を撮ることには,それなりのお金が必要になる。そのため,0歳〜14歳までの「子ども」は,趣味のために自由に使うお金をあまりもっていないだろうし,写真で生計をたてていることもないだろうから,ここでは除外して考えよう。そうすると,趣味のためにある程度のお金を使う人は,およそ1億1000万人となる。この1億1000万人のうち,100人に1人がフィルムを使って写真を撮っているとする。そして,1人あたり平均して,月に2本のフィルムを消費しているとする。そうすると,1年間に消費されるフィルムの数は,2640万本ということになる。そこで日本カラーラボ協会が公開しているデータ(*2)を参照すると,2010年度のフィルムの国内出荷本数は2651万本とあり,推測した数値とほぼ一致する。すなわち現状は,100人に1人が月に2本のフィルムを消費しているということだ。
 もし,平均して1人が月に1本しかフィルムを消費していないのであれば,フィルムを使って写真を撮る人はまだ50人に1人いることになるし,月に10本のフィルムを消費する人ばかりであれば,フィルムを使って写真を撮る人は,500人に1人しかいないことになる。50人に1人なら総数は220万人,100人に1人なら総数は110万人だが,500人に1人なら総数は22万人である。これを,多いとみるべきか?それとも,少ないとみるべきか?

ともあれ,フィルムの消費量が減少しているという現実がある。それをあらわすかのように,今日,富士フイルムから,フィルムのラインアップが整理されるという発表(*3)があった。今日,販売が終了になると発表されたおもな製品としては,デーライトタイプのポジフィルム「ASTIA」の各サイズ(120, 220, 4×5, 8×10),タングステンタイプのポジフィルム「T64」(135-36),カラーネガフィルム「PRO160NC」(4×5)がある。いずれもラインアップ上「プロ用」とされるフィルムである。プロが仕事のためにフィルムを使うケースが減少しているのだろうと,想像できる。
 一方,伝統的な銘柄の1つであった,「ネオパンSS」も販売終了の対象になっていた。ただしこちらは36枚撮だけが販売終了の対象であり,24枚撮はまだしばらく継続して販売されるようである。「ネオパンSS」は,36枚撮りを使う人よりも24枚撮を使う人のほうが多い,ということだろうか?こんなニュースを耳にすると,久しぶりに「ネオパンSS」を使ってみたくなるじゃないか。下の写真は,ずっと以前に神戸市内で撮ったもの。

Exakta Varex VX, Carl Zeiss Jena Biotar 58mm F2, NEOPAN SS

*1 「人口推計(平成23年8月報)」(2011年8月22日 総務省統計局)
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/201108.pdf

*2 「国内フィルム市場の動向 ロールフィルムの国内出荷本数推移(2006年〜2010年)」
http://www.jcfa-photo.jp/archives/bussiness/report/report07.html
2010年の合計が「3434」になっているが,これは「※内レンズ付き」が誤って加算された値であり,実際には「2651万本」のはずである。

*3 「プロ用ネガフィルム・リバーサルフィルム・黒白フィルム 一部製品販売終了のご案内」(2011年9月5日 富士フイルム株式会社)
http://fujifilm.jp/information/articlead_0129.html


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