撮影日記


2011年05月21日(土) 天気:晴のち曇

しびれない正座の秘密

1人の演者によっておこなわれる話芸の1つに,「講談」というものがある。1人の演者が複数の登場人物を演じ分けるという点では「落語」に似たものであるが,「落語」には「オチ」というものがあり,登場人物の会話を中心に展開しているのに対し,「講談」はやや勇ましい調子で物語を語っていくスタイルになっているところが,基本的な違いであろうか。
 最近,小学生を中心に「落語」がちょっとしたブームになっているらしい。国語の教材として使われたり,小学校で落語を鑑賞する機会を設けられたりすることもあるようだ。日本の伝統芸能という意味でも,よい教材になっているようである。また,「落語」は基本的におもしろおかしい話であることが多いためか,講談よりもテレビやラジオで放送される機会が多いように思われる。また,落語家は,タレントとしてテレビ等で活躍している人も目立つように思う。
 今日は,「講談」を鑑賞する機会があった。「講談」は,「落語」にくらべると,接する機会が少ないように感じられるだけに,貴重な機会である。職場関係の集まりにおいて,講談師の日向ひまわりさんが演じてくださったのである。この日に読まれた(*1)題目は,「五貫裁き」という,いわゆる大岡裁きの1つである。

Nikon D70, AF-S DX Zoom-NIKKOR 18-70mm F3.5-4.5G

高座の後,日向ひまわりさんからうかがったお話がおもしろかったので,紹介しておく。別の出席者が,「長時間,正座していて,しびれませんか?」と尋ねたところ,ひまわりさんは「しびれることはない」とのことだった。
 それには,座り方に秘密があるらしい。
 講談師は,小さな机(釈台という)の前に正座をした状態で語るが,単にお行儀よく座っているだけではない。扇で机を叩いて調子をとりながら,ときには身を乗り出して,情感豊かに語っている。

Nikon D70, AF-S DX Zoom-NIKKOR 18-70mm F3.5-4.5G

そう,そこがポイントなのである。
 このとき,明らかに,脚は正座の状態から解放されているのだ。これで,しびれは相当に緩和されるとのこと。しかも,身を乗り出すときには,机に手をつくこともできる。脚がしびれかかっていても,これならスムースに,身を乗り出せるということだ。
 ここに,講談師が長時間,正座して講談を読んでいても,脚がしびれない秘密が隠されていたのである。だから,「じっとしていなければならない法事などでは,脚がしびれてつらい」「(法事のほかの出席者から)いつも正座して仕事しているわりには弱いんだな,と言われることもある」とのこと。

講談師の,しびれない正座の秘密の話,これにて。

*1 「落語」は「演じる」というのに対し,「講談」は「読む」というのが正確とのこと。


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