撮影日記


2011年01月10日(月) 天気:晴ときどき曇

ワンテン判の日

警察へ緊急に連絡をしたいときの電話番号は,「110番」である。これは,1954年に統一して決められた番号とのことだ。「110番」は,「ひゃくとおばん」と読む。いまでは「ひゃくとおばん」は一般名詞化したような面もあり,さまざまな業界等で,困ったことなどの連絡先を「○○110番(ひゃくとおばん)」と称するケースがよく見られる。
 その電話番号にちなみ,1月10日は,「110番の日」とされている。
 「110ばん」を「ひゃくとおばん」と読めば,それは警察への緊急連絡用電話番号となるが,「110ばん」を「わんてん」と読めば,それはフィルムの規格になる。そう,1月10日は,「110番(ひゃくとおばん)」の日であると同時に,「110判(ワンテン判)」の日でもあるのだ。

110判は,ポケット判ともよばれたカートリッジフィルムの規格である。このフィルムを使うカメラは,簡単に扱える小さなカメラであり,低価格のカメラが多かったこともあってかなり普及した。
 しかし,110判はやがて,市場から姿を消していく。その理由としては,いくつかのことが想像できる。まずは,画質の問題だ。110判の画面サイズは,13mm×17mmで,36mm×24mmのライカ判にくらべて,およそ1/4くらいの小さなものである。35mm判カメラも小型化が進んで,110判カメラの優位さが薄れてくると,この画質の差が気になるようになったことだろう。さらに35mm判カメラでは,AEやAF化が進んで,露出やピントのきっちりあった写真が撮れるようになる。固定焦点,固定露出のものが多かった110判カメラとの画質の差は,歴然としたものになってくる。
 また,いわゆる「0円プリント」サービスの出現も,110判カメラが使われなくなる理由の1つではないだろうか。いわゆる「0円プリント」サービスは,同時プリント(フィルムの現像とともに,各コマを1枚ずつプリントしてもらうこと)のときのプリント代を0円とするものである。そのかわり,現像料がやや高めに設定されている。それでも,いわゆる「0円プリント」サービスではないお店で同時プリントを依頼するよりは安価なものである。多くの場合,そのサービスの対象は35mm判のみで,110判は含まれていなかったのである。

110判のカメラには,いろいろな意味でおもしろいカメラも少なくなかった。たとえば,ハリネズミの絵が描かれた「ハリネズミカメラ」は,カメラ本体よりもフィルムのほうが大きいトイカメラである。ナショナルの「ラジカメ」は,ラジオとカメラとが1つになった製品である。
 このような,ユニークなカメラばかりではない。PENTAX auto110は,手のひらよりも小さなボディながら,交換レンズなども充実した,立派なシステムカメラだった。

「110判の日」には,これら110判カメラの魅力を思い出すことにしよう。そのためには,110判カメラで写真を撮ろう。
 しかし,重大な問題がある。
 もはや,110フィルムは製造されておらず,一般的なお店では売られていないのだ。通信販売等で,在庫が売られているのを見つけられればラッキーだろう。ともあれ,入手困難な状況に陥っているのである。だから,使い終わったカートリッジを捨ててはいけない。カートリッジはうまく分解し,カットしたフィルムを詰めて,再利用しよう。
 「110判の日」にそなえて,NEOPAN100 ACROS (120)をカットしてカートリッジに詰め,110フィルムを1本作成した。これで「110判の日」を楽しむことにしよう。なお,フィルムの残った部分は,1月27日に予定されている「ベスト判の日」に活用できるから,大切にとっておこう(2010年2月19日の日記を参照)。


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