撮影日記


2010年12月16日(木) 天気:晴

2010年にはなにを撮っただろうか

今年も思ったほど,撮影にでかけることができていない。井仁の棚田を1回(2010年9月11日の日記を参照),三段峡を1回(2010年11月13日の日記を参照)訪れたくらいで,筒賀のイチョウはちょっと様子見に立ち寄ったにすぎなかった。これらの場所は,今後もずっと撮り続けたいし,さらに撮影対象を広げたいと考えているのだが,なかなか思い通りにはいかないものだ。

三段滝
Mamiya Universal Press, Mamiya-sekor 100mm F3.5, E100VS

だから,身近で訪れやすい場所での撮影が主になっている。ただ今年の場合は,ちょっと変わった撮り方にチャレンジした。それは,モノクロフィルムの代わりにモノクロ印画紙を使っての撮影である。
 モノクロ印画紙もモノクロフィルムも,現像処理をすれば光があたったところが,その光の強さに応じて黒くなる。その点は,同じである。だから,代用することができる。しかし印画紙には,フィルムと違った特性があり,フィルムとまったく同様に使えるわけではない。大きな違いとして,2つを指摘しておく。1つは,感度である。モノクロフィルムであれば,感度がISO100あるいはISO400ものが一般的である。ISO100のフィルムの場合,日なたでは絞りF11,シャッター速度1/250秒くらいでほぼ適正な露出が得られるはずだ。一方,モノクロ印画紙の感度は,ISO3からISO6くらいとなる。ISO3であれば,日なたの撮影であっても絞りF11なら,シャッター速度は1/8秒となる。もう1つは,色に対する感度の問題である。現在のモノクロフィルムは,可視光線に対してはほぼ同じような感度を示すが,印画紙の場合は緑,黄,赤などへの感度が著しく低い。そのため,これらの色のものは,実際以上に暗いものとして写ることになる(2010年5月8日の日記を参照)。このような撮影上不利な要因があるわけだが,その一方で,大きなサイズの撮影を比較的低コストでおこなえるというメリットもある。とくに4×5判以上の大きなサイズで撮影するときには,そのメリットが顕著になる。赤い光への感度が著しく低いためにセーフライトが使えるので,必要な大きさにカットする作業も楽である。
 大きなサイズでの撮影は,ほんとうに気持ちがよい。それが低コストで楽しめるなら,こんなよいことはない。

原爆の子の像
OKUHARA CAMERA, FUJINON W 210mm F5.6, FUJIBRO WP FM2

この写真を撮るのに使ったカメラは,組立暗箱というタイプのカメラである。いや,こういうカメラだと,「カメラ」というよりも「写真機」というほうが似合うかもしれない。ま,そんなことはどうでもいいのだが,このカメラがいつごろのものかわかっていない。「OKUHARA CAMERA OSAKA」というプレートがついているので,大阪にあったオクハラという会社が製造したのだろうということはわかるのだが,少なくともインターネット上にはその素性を知るための手がかりは見あたらない。また,古い雑誌等を眺めても出てこない名称なので,少なくとも一般の人が趣味で使うようなカメラではなかったのだろう。
 そんなカメラを使いたくなったのは,これが私の手もとにあるカメラのなかでは,もっとも大きな画面サイズをもっているからである。そのサイズは,四つ切1/2というもので,四つ切印画紙を半分に切った大きさ。5×7判よりは大きいが8×10判よりは小さいものである。現在は,四つ切1/2という大きさのフィルムは売られていない。だからそのサイズで撮影しようと思えば,より大きなサイズのフィルムから切り出して使わねばならない。より大きいサイズのフィルムといえば8×10判だが,これは高価であり,またどこのお店にも必ず在庫があるというものでもない。
 そこで,四つ切印画紙を半分に切って使う,という発想につながるのである(2010年8月7日の日記を参照)。

大判カメラにはいろいろな種類があるが,組立暗箱とよばれるタイプのカメラは,比較的低価格で入手可能である。使い古されていると全体にガタがきていて使いにくいかもしれないが,使いにくいだけであり,使えなくはない。その他,レンズやフィルムホルダ等も用意しなければならないが,最新のディジタル一眼レフカメラ一式よりも,たぶん安く買えるのではないだろうか。
 こんな大判写真も,はたしていつまで楽しめるのか。毎年のように,フィルムや印画紙等の値上げやラインアップの縮小等が発表される。フィルムで撮影を楽しめる環境が,年々厳しくなっているのは,間違いない。しかしまだ,フィルムの入手は困難になっていないし,買うのをあきらめなければならなくなるほど高価になってしまったわけではない。フィルムでの撮影は,まだまだ楽しめるのである。
 そこで,「中判写真週間」と「大判写真の日」を提唱することにした。
 中判写真のフォーマットにちなんだ,6月4,5日から6月6日,6月7日,6月8日,6月9日の約1週間を「中判写真週間」として,中判写真を楽しむべき日ということにしたのである。同様に,大判写真のフォーマットにちなんだ4月5日,5月7日,8月10日,11月14日を「大判写真の日」ということにした。これらの日には,できるだけそのフォーマットで撮影を楽しむようにしたい。最近,撮影をしなくなった方には,この機会に無理にでも撮影をして,感覚を取り戻していただきたい。中判写真や大判写真を未体験の方には,この機会にあらたな領域にチャレンジしていただきたい。そのように,アオリをしてみたのである。
 賛同者は,いまのところあまり多くないようだが,まあそのうちぼちぼち増えてくれればありがたい。
 少なくともこの私自身にとっては,オクハラカメラという組立暗箱で四つ切1/2の撮影にチャレンジしたという効果があったわけだ。

大判写真の反動なのかもしれないが,今年は,小さなフォーマットでの撮影にもチャレンジできた。はじめてミノックスサイズのカメラを入手したのである(2010年9月18日の日記を参照)。そういえば今年の前半は,110フィルムの自作や自家現像にもチャレンジしていた(2010年5月21日の日記を参照)。

ともあれ,今年もいろいろなことにチャレンジしたのだが,撮影対象を広げることがほとんどできていないのが心残りである。さて,来年はなにを撮ることができるだろうか。


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