撮影日記


2010年10月17日(日) 天気:くもり後はれ

ソラリゼーションで遊びたくなる

大阪の中之島に,国立国際美術館がある。四つ橋線肥後橋駅から徒歩10分くらい,大阪市立科学館の正面の特徴的な建物だ。その姿が物語るように,おもに現代美術を扱っている。なお,現在地での開館は,2004年のことである。

国立国際美術館では,2010年9月28日から11月14日の予定で,「マン・レイ展 知られざる創作の秘密」が開催されている。名古屋から広島への帰路に大阪に立ち寄ったのは,ほかでもない。これを見に行くためである。マン・レイというと,シュールレアリスムの絵画やオブジェの作家としてもよく知られているが,私のなかではさまざまな写真の表現技法を生み出した人として理解しておきたいと思っている。
 マン・レイが生み出したとされる技法のうち,よく知られているものとしては,ソラリゼーションがある。これは現像中に不用意に暗室のドアが開いたことによって,偶然に見つけた現象だとされている。現像の途中に光があたることによって,像が出ていない個所が強く露光されることになり,部分的に反転する現象をさしている。
 ただし,この現象は本来,サバティェ効果とよばれていたものとのことである。もともとのソラリゼーションとは,極度の露出オーバーのときに像が反転する現象をさす。しかしながら現代の感光材では,この現象はおこりにくいらしい。(*1)
 ということで,展覧会ではさほど大きく取り上げられてはいなかったが,さっそくソラリゼーションで遊んでみることにした。「マン・レイといえば,ソラリゼーションだろ」というわけでもないが,あいかわらず単純なやつでスマン。

これは,ずっと以前に撮影していたものだ。たぶん,レモンの断面だろう。
 次に,同じ条件で焼き付けした印画紙を現像液に浸す。約30秒後,全体に像があらわれたころに一瞬だけ,照明をつける。そして,印画紙全体がまっ黒にならないうちに現像液から出して,停止液に浸す。

停止液に浸すまでの瞬間に,現像液が流れた跡がムラになったのであろうか。画面中央下部あたりの像が,少し流れたようになっているのが,おもしろい。
 しかし,印画紙に焼き付けるときにソラリゼーションを狙っても,全体が黒くなってしまうので,いまひとつおもしろくない。やはり,ネガフィルムの現像時に,ソラリゼーションを試してみたいものである。

これは何年か前,熊野町あたり商店街が,昔ながらのたたずまいを残しているのが話題になったときに訪れて撮ったものだと思う。これで,ソラリゼーションをやってみるとどうなるだろうか。

全体がまっ黒になりそうだったので,早々に現像液から引き上げたところ,むしろ現像が十分に進んでいなくて,黒が締まらない状態になったものと思われる。それが幸いというべきか,セピアっぽくなって,これはこれでレトロな雰囲気が出ておもしろい。暗室で遊ぶネタが,また1つ増えたということだ。

*1 「新アサヒカメラ教室6」(朝日新聞社編,1979年)


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