撮影日記


2010年10月10日(日) 天気:晴

トラの乗り心地

昨夜は団体旅行で黒川温泉に宿泊し,今日は阿蘇を訪れている。
 阿蘇では,ロープウェイを利用して火口の見えるところまで行く予定だったのだが,風向きと火山ガスの出方との問題で火口までは行けず,草千里とよばれるところにある火山博物館の見学となった。
 火山博物館の展示内容だが,妙に古さを感じるものである。とくに映像。最近よくある「CGくささ」がないという意味では,むしろ味があってよいのかもしれない。実写映像については,そこに「人物」が出てくると,妙な違和感を感じる。出てくる人物の髪型や服装などが,1970年代後半くらいか?と思わせるようなものなのである。つくられたときは「最新」のものだったのだろうが,そのあとあまりお金をかけていないのだろうか?と,余計なことを考えてしまうのであった。もちろん,展示内容のすべてが古いというわけではない。リモートコントロールで火口を見ることのできるカメラは,映像資料にくらべれば比較的新しいものだろうと思う。
 山そのものは,草千里からの遠望のみとなったわけだが,天気がほどよく,山が美しく見えたので,これはこれで「よし」としよう。

景色がきれいだからといって,いつまでもここでのんびりさせてはもらえない。
 このあとには,「トロッコ列車に乗る」というアトラクションが用意されている。旧国鉄の高森線を引き継いだ南阿蘇鉄道の高森駅から,JR豊肥本線に接続する立野駅までの1時間弱を,トロッコ列車に乗ろうというものである。

高森駅構内にとまっていたトロッコ列車は,3両編成。前後に,保線作業用としてよく見かけるモーターカーがついている。さすがにモーターカー1両では,トロッコ3両を牽引するのは厳しいのだろうか。それとも終点での機回し(牽引車を反対側に付け直すこと)の手間を省くためのものだろうか。たぶん,両方だろうと想像する。両端にモーターカーがついているので,どちらの端に乗っても展望はいまひとつになるのが残念だ。展望はいまひとつでも,小型のモーターカーに牽引されるトロッコ列車は,まさに「萌え」といったところであろうか。
 全席指定席なのでどの席にあたるのかは運次第だったのだが,幸か不幸か,あたった席は,いちばん後ろの端。

発車時刻が近づいたころ,このトロッコ列車の前にさらにレールバスが連結された。定期列車といっしょに走る,ということである。モーターカーだけに牽引されるのではないわけで,少し魅力が薄れる。レールバスは,比較的最近の車両で,乗り心地などは一定の水準に達しているものと思うが,こちらはトロッコ列車。乗り心地は,けっしてよろしくない。レールバスは,車内で人が快適にすごせるように考えられた車両だろうが,トロッコ列車はそんな快適さよりも,いつもとは違う「新鮮な体験」をするためのもののはずだ。
 このトロッコ車両は,貨車を改造したもののようである。もともとは,屋根のない,浅い壁があるだけの無蓋車とよばれる貨車だったようだ。車両も大きなものではなく,2軸車である。無蓋車いは「ト」,このくらいの大きさ(積載量)のものには「ラ」という記号がつくので,この車両には「トラ」という記号がついている。
 幸いにも天気はよく,とくに暑くも寒くもない。トロッコ列車は窓を全開(そもそも基本的に壁というものがない)にして走る。乗り心地はかたく,ゆれも大きいが,スピードがあまり速くないのでさほど苦痛ではない。もしかすると,明治時代,初期の鉄道の乗り心地というものは,このくらいのものだったのかもしれないなどと想像するが,さすがこれで東京から大阪まで移動するというのは,楽なものではなかったのかもしれない。念のために書いておくが,私は「鉄」ではない。「古いもの」「古さを感じられるもの」が好きなのである。
 速さは40km/h〜50km/hくらいだろうか,それくらいに感じられる。そのため,景色をゆっくりながめられるわけだが,観光スポットとされるポイントでは,さらに徐行したり,一時停止するなどのサービスもある。短時間の乗車であれば,苦痛どころかむしろ楽しく感じられるというものだ。

今回は団体旅行なので,あまりのんびりと写真など撮っていられなかったのだが,なんだかんだと用意したカメラは計3台。PENTX auto110,ACMEL MDとTessar T* 45mm F2.8をつけたCONTAX RTSである。基本的には,携帯性重視の選択なのだ。ただ,今日のフィルムを現像する気になるのは,いつの日になるだろうか。今日の日記に使った画像は,いずれも,携帯電話機のディジタルカメラ機能によるものである。


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