撮影日記


2010年07月09日(金) 天気:はれ

佐々木雄一郎写真展

写真家の佐々木雄一郎氏(1917年〜1980年)は,原爆が投下された後の広島の変遷を記録し続けたことで知られている。とくに,原爆ドーム周辺の変化について緻密な記録を残しており,撮影した写真は10万カットにおよぶとのこと。
 平和記念資料館で,佐々木雄一郎氏の写真展が開催されていた(*1)。ずっと気になりながら,なかなか立ち寄る時間がとれずにいたもので,気がつくと第一部「平和を築く」はすでに終わっており(2009年7月18日〜2009年12月15日),第二部「平和を誓う」ももう終了目前である(2010年2月3日〜2010年7月12日)。今日の午前中は平和公園近くに用事があり,午後はなにも予定がない。こんな機会を逃すわけにはいかない。

写真展は,平和記念資料館の地下でおこなわれていた。資料館に入り,地下へ下る。そして,空間を過ぎてさらに長い廊下の先に,展示室があった。写真はどれも,記録写真として見ごたえのあるもの。佐々木雄一郎氏のスタイルなのか,望遠レンズを使ったような写真よりも,標準レンズあるいは広角レンズで被写体に迫ったような写真の方が,印象的である。とくに路地裏などで子どもたちに近づいて写したような写真は,今の時代にはなかなか撮ることはできないだろう。知人の子どもであればともかく,ふつうの住宅街や公園のようなところで見ず知らずの子どもに接近して写真を撮ろうものなら,不審者として通報されかねない昨今の状況である。

そうは言っても,こんな写真をたくさん見たあとでは,似たような写真を撮りたくなる。さすがに,路地裏の子どもたちを撮ろうなどとは考えない。とにかく平和記念公園とその周辺を,標準レンズあるいは広角レンズで,撮ってみたくなったのである。
 今日,用意していたカメラは,先日,大阪・梅田「マルシンカメラ」のジャンクコーナーから救出したばかりのOLYMPUS OM-1である(2010年6月19日の日記を参照)。レンズは,ずっと前に東京・中野「フジヤカメラ」のジャンク館から救出したF.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8である(2005年11月10日の日記を参照)。そして,今日は広角レンズも使いたい。オリンパスOMマウントの広角レンズは,まだ入手していない。こんなときに頼りになるのは,交換マウントのレンズ。交換マウントのレンズといえば,まっさきに思い浮かぶのはTAMRONのアダプトール2シリーズだ。ただ残念なことに,アダプトール2シリーズの単焦点広角レンズは入手していないのである。手もとにあるものは,SP500mm F8という超望遠レンズを除いてすべてズームレンズだ。小型軽量なOLYMPUS OM-1と組み合わせて使いたいときには,やはり小型軽量な単焦点レンズを使いたい。そこで今日,出番となったのは,Tマウント交換式のVemar 28mm F3という,いまひとつ素性のよくわからないレンズである(2003年3月14日の日記を参照)。

フィルムは,すなおにNEOPAN 100 ACROSである。天気もよいので,赤フィルタやオレンジフィルタをかけながら,とにかく36枚を撮りきってしまうようにした。平和記念資料館から原爆ドームへ向かう。「原爆死没者慰霊碑」の向こうに原爆ドームが見えるという「お約束」のカットを撮ろうと思うが,時節がら修学旅行と思われる団体さんが多く,人が途切れることがない。子どもたちを撮るつもりはないのだが,どうしても画面内に写りこんでしまう。しかたないので,正面から少しずれた位置で撮ってみる。それでもいろいろな人が写りこんでしまうのだが,これくらい離れているのだから,あくまでも風景の1つということで許していただこう。

OLYMPUS OM-1, F.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8, R1 filter, NEOPAN 100 ACROS
MITSUBISHI GEKKO MD-F

原爆ドームに近づいてみれば,なぜかスズメが多くとまっている。これに気がついた人はかなりいたようで,私の周囲でもシャッターの音がする。望遠レンズでスズメのアップを狙うのもかわいいのかもしれないが,あいにく,望遠レンズは用意していない。そもそも,原爆ドームを撮ろうと考えたのであり,スズメを撮りたいわけではない。それでもプリントするときに,ついついトリミングしてしまうのであった。

OLYMPUS OM-1, F.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8, R1 filter, NEOPAN 100 ACROS
MITSUBISHI GEKKO MD-F

「原爆の子の像」にも,やはり団体さんが多く,どうしても人が写りこんでしまう。ところで,ここでは広角レンズVemar 28mm F3を使ってみたのだが,周辺の描写が妙にあやしい。少なくとも,高級品ではなかったのだろう。ともあれ,すぐれた作品を見たあとは,どうしても「撮りたい」という気分が高揚するようである。作品を見る機会は,できるだけ多くもつようにしたいものだ。

OLYMPUS OM-1, Vemar 28mm F3, R1 filter, NEOPAN 100 ACROS
MITSUBISHI GEKKO MD-F

*1 http://www.pcf.city.hiroshima.jp/virtual/VirtualMuseum_j/exhibit/exh1002/exhi_top.html


← 前のページ もくじ 次のページ →