撮影日記


2010年06月07日(月) 天気:曇のち雨

ギガンチウムは撮りにくい

なにかの写真を撮るとき,背景をどうするかはとても重要である。せっかくなにかきれいなものを写そうと思っても,背景がごちゃごちゃしていては雰囲気をぶち壊してしまう。
 背景をきちんと片づけたり,セットしたりできればいいのだが,簡単にはいかないことも多い。ごちゃごちゃした背景をすっきりごまかす方法は,大きく2つが考えられる。
 1つは,望遠レンズを使う方法。望遠レンズと広角レンズを使って撮るとき,主となる被写体の大きさが同じになるようにすれば,望遠レンズを使った方が,写りこむ背景の範囲が狭くなる。また,大口径望遠レンズを開放で使えば,背景がきれいにボケるので,さらに好都合である。
 もう1つは,マクロレンズを使って,主となる被写体のさらに一部分に着目する方法。この場合,背景はその被写体自身になる場合もあり,すっきりした背景をさがしやすくなる。
 両者の特徴を兼ね備えた,望遠マクロレンズを使えば,さらに好都合となる。

Nikon D70, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

この花の向こうには,自転車が何台か置かれていた。幸い,ボケて自転車の形は,もうまったくわからなくなっている。さらに,日光が金属部分に反射して,丸いアクセントとして花を包みこんでくれている。
 この花は,アリウム・ギガンチウムとよばれる(単にギガンチウムとよばれることが多い)。小さい花がたくさん球状に集まった姿は,まるでネギぼうず(ネギの花)だ,という印象をもたれた方もあると思う。
 そのとおり。
 アリウムとは,ネギ属を意味するとのことだ。ただ,普通よくみかけるネギぼうずより,ひと回り,いや,ふた回りは大きいだろうか。そんな巨大な花が細い花茎の先に咲くのだから,花はとどまることを知らぬかのごとく,いつまでもゆれ続ける。

Nikon D70, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

空間を大きく占め,かつ,ゆれ続ける花だから,じつはマクロレンズでは撮りにくい。どうしても接近して,1つ1つの花を大きく撮りたければ,花をなんとかして固定しなければならない。まあ,植木鉢に植えてあるのだから,適当に壁にもたれさせられる場所へ移動すればいいだけのことだ。
 ともあれ手前に位置する花のしべにピントをあわせれば,この球状の花全体が適度に背景になってくれるというものだ。

Nikon D70, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

さて,花を接写する場合。
 しべにピントをあわせるのは,撮り方の定番の1つといえるだろう。
 ただ,この向きでは,花弁のボケ方が中途半端に思われ,今ひとつすっきりしない。

Nikon D70, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

そこで,このままどんどん,ピントの位置を花の奥へ移動させる。すると,中心から放射状に伸びた花茎が見えてくる。薄紫色の霧のなかから,なにかが湧き上がってくるかのような印象を受けるのではないだろうか。

Nikon D70, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

花を少し見上げるような位置から撮ってみれば,薄紫色の雲を通して日光が降り注いでくるかのごとき印象を受けないだろうか。
 単純に,しべにピントをあわせるだけでは,いまひとつおもしろく撮れない。やはりギガンチウムは,撮りにくい花である。
 さて,球根を植えてからもう何年もほったらかしにしていたのだが,来年も花を見せてくれるだろうか。

Nikon D70, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

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