撮影日記


2010年05月21日(金) 天気:霧

110フィルムの自家現像

「満を持す」という言葉がある。辞書をひけば,「準備を十分にして機会を待つ」という意味の言葉であることがわかる。この夜,満を持して,110フィルムの現像をおこなった。手もとにある最後の1本,フジカラーSuper G100である(2010年3月17日の日記を参照)。
 フジやコダックが,110フィルムの製造,販売を終了した。このことにより,110フィルムが店頭では簡単に購入できない状況になってしまった。これからも110フィルム用のカメラを使うには,110フィルムの自作と自家現像が必要になる。
 専用のリールさえあれば,自家現像は問題なくおこなえるのだが,それがなかなか入手できない。110フィルム以前によく使われていた16mmフィルム用のリールが流用できそうに思うのだが,クラシックカメラをおもに扱うお店をたまに覗いても,そういう道具類に出会うことがなかなかない。しかし,この2月に,配線カバーと水道管(塩ビ管)を使って現像する方法があることに気がついた。
 フィルムの自家現像ができるなら,110フィルムの自作も可能になる。空のカートリッジを利用して,適切な大きさに切ったフィルムを詰め替えればよいのである。フィルムの詰め替えと水道管を利用した現像がうまくいくこともたしかめられた(2010年2月21日の日記を参照)。準備は整ったことになる。

それから3か月。手もとにある最後の110フィルムの処理をおこなうことにした。
 ではこの3カ月の間に,いったいなにをしていたのか。まず,最後のフィルムを使って,撮影をおこなわねばならぬ。しかし,いかに大切に撮ったからと言って,3か月はかかりすぎた。実際には,4月半ばには撮影は完了している。
 では,残りの1か月の間はなにをしていたのか?じつは,なにもしていない。ただ,ほかのフィルムを使っていただけである。そう,処理するべきフィルムがたまるのを待っていたのである。
 現像処理は「ナニワカラーキットN」を使っておこなうのだが,説明書通りに溶解すると,できる処理液の量は500mlになる。この処理能力は,120フィルムで5本,135フィルムの24枚撮りで10本,110フィルムの24枚撮りなら20本というものだ。110フィルムの24枚撮り1本を処理するだけでは,もったいないのである。
 あわせて処理するフィルムがたまって,まさに,満を持して現像をおこなうことにしたのである。

今回の現像の大きな目的の1つは,空の110フィルムのカートリッジを確保することである。つまり,カートリッジを傷つけないよう(再利用できるよう)に分解しなければならない。それも,中身のフィルムが光でかぶらないように,暗室中での作業がのぞましいことになる。
 110フィルムのカートリッジは,薄くてやわらかいプラスチックだ。そして,ところどころ接着されているようである。接着されていそうな場所を,カッターナイフですこしずつ開いていく。最初のうちは明るいところで作業してもよいが,開きそうになったら暗室での作業にしなければならない。カートリッジは決して丈夫な素材ではなさそうなので,見えないと力の入れ加減もわかりにくい。ラボで処理するときは,どのようにしているのだろうか。カートリッジを簡単に開けるようなツールなど,あるのだろうか。そうでないなら,再利用のことは考えず,破壊しているのだろうか。もしふだんは破壊しているのであれば,ラボに現像を依頼するときに「カートリッジは返してください」と依頼しても,対応は難しいかもしれない。このような依頼をして,カートリッジを再利用可能か状態で返してもらえた方はおられるだろうか?

つづいて,配線カバーの出番である。
 110フィルムの長さは,約70cmある。内側の幅が約17mmの配線カバーは,約80cmの長さに切り,ところどころ大きく穴をあけて現像液が十分にまわりこむようにしてある。ここに取りだした110フィルムをつっこんでいく。もちろん,暗室内での作業だ。

これを水道管に入れて,ふたをすれば,現像の準備完了。ここでひとまず明かりをつけてよい。

次に,現像液の準備である。
 あらかじめ規定の温度(30℃だが,フィルムを投入するときなどに温度が下がるので,1〜2°高めにしておく)にあたためた現像液を450mlはかり取る。
 ふたたび暗室にして,水道管のふたをとり,現像液を投入する。ふたたびふたをして,規定の時間,攪拌をおこなう。このあと,現像液の排出,漂泊定着液の投入は暗室内での作業となるが,攪拌作業はもちろん明かりをつけておこなえばよい。
 このようにして,手もとにある最後の110フィルムは,無事に現像できたのであった。


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