撮影日記


2010年05月15日(土) 天気:晴

135mm F2.8の魅力

中古カメラを扱うお店では,その隅にひっそりと「ジャンクカメラ」が並べられていることがある。ジャンクカメラは,動作が保証されていない。要は,故障品である。だから,大きく破損しているなど見るからに故障していることが明白なものが少なくない。ときに,きれいな外見ものが含まれていることもあるが,ジャンクカメラとして扱われるからにはそれなりの理由があるわけで,たとえば外見はきれいでもまったく動作しないものもある。逆に,全体に傷だらけだがちゃんと動作する状態のものもある。また,じつは動作にさほど問題はないのだが,不人気機種のためジャンクカメラとして扱われているケースも見られる。
 私は,ジャンクカメラが好きだ。その理由としては,まず,とても安価に入手可能な点があげられる。いちおう動作が保証されている「中古カメラ」だと,いかに安くても数1000円の価格がつけられることになるが,ジャンクカメラであれば数100円だ。
 ジャンクカメラには,いちおう動作するものも含まれているが,動作がおかしいものやまったく動作しないものが含まれていることも少なくない。せっかくカメラを買うのであれば,動作する方が楽しいのは当然だ。しかし,動作のおかしいカメラやまったく動作しないカメラでも,少し手を入れることで動作が回復することもある。それもまた,ジャンクカメラの楽しみの1つである。
 商品としての中古カメラは,ショーウィンドウのなかにあって自由にさわることができない場合が一般的だ。しかしジャンクカメラは,専用の棚やワゴンのなかに無造作に並べられているだけである。つまり,自由に手にとることができる。これもまた,ジャンクカメラのお店が楽しい理由につながる。

「カメラのキタムラ可部店」には,ときどきジャンクカメラが並べられている。今日はそこから,こんなレンズを救出した。

救出したレンズは,XR RIKENON 135mm F2.8である。XRリケノンといえば,リコーがペンタックスと共通のKマウントをはじめて採用したときに発売されたシリーズのレンズである。古典的なM42マウントやエキザクタマウントは多くのメーカーで採用されてきたが,Kマウントのように当時としては最先端と言えるTTL開放測光に連動したバヨネットマウントが,リコーとペンタックスという2つの異なるメーカー間で共通して採用されたことは,珍しいことであった。一眼レフカメラのレンズマウントは,メーカーごとに異なるのが一般的なのである。
 リコーから最初に発売されたKマウントのカメラは,機械制御シャッターでマニュアル露出の「XR-1」と電子制御シャッターで絞り優先AEが可能だった「XR-2」の2機種である。しかし,リコーのXRシリーズというとその後に発売された「XR500」がなによりも有名であろう。そう,「リコーのサンキュッパ」,ボディ,標準レンズ,ケースのセットで,メーカー希望小売価格¥39,800という低価格の一眼レフカメラである。リコーのカメラを有名にするのは,リコーフレックスの時代も一眼レフカメラの時代も,まずは「低価格」のようである。それだけに「高級」コンパクトカメラ「GR1」のヒットには,個人的に強い違和感があった。また,雑誌等における評論家による高い評価などに,妙な作為を感じたものである。このあたりは話がそれてしまうし,あくまでも個人的な印象に過ぎないので,これくらいにしておく。
 さて,このXR RIKENON 135mm F2.8の価格は300円。当然ながら,重大なトラブルがある。レンズを覗くと,中玉にカビが大きく広がっているのがよくわかる。ただ,幸いにも分解しやすいレンズだったため,難なくレンズを清掃することができた。

80mm〜200mmあるいは70mm〜300mmクラスの望遠ズームレンズが安価に出回るようになるまでは,135mm F2.8クラスの望遠レンズは,標準レンズの次に買う交換レンズとしてポピュラーな存在だった。それを物語るかのように,ジャンクコーナーには,標準レンズXR RIKENON 50mm F1.7付のリコー「XR7」もあった。おそらく,RICOH XR7,XR RIKENON 50mm F1.7,XR RIKENON 135mm F2.8は,いっしょに使われていたのだろう。しかし,広角レンズは見あたらない。前のオーナーは,広角レンズを買わなかったのだろうか?それとも広角レンズは,すでにほかの人によって救出されてしまっていたのだろうか。
 なお,XR7ボディおよび50mm F1.7の救出は見送った。これがRICOH XR500とXR RIKENON 50mm F2の組み合わせであれば,歴史的意義のあるカメラとして救出するのであるが。
 80mm〜200mm F2.8クラスの望遠ズームレンズがよく使われるようになると,135mm F2.8クラスの単焦点レンズの出番はいよいよ少なくなっていく。しかし,このコンパクトさはやはり魅力的だ。XR7のような比較的小型軽量の一眼レフカメラと組み合わせれば,いまでも十分に楽しむことができるだろう。


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