撮影日記


2010年04月29日(木) 天気:晴

たっぷり露光 あっさり現像

4×5判よりも大きなサイズのシートフィルムのラインアップは,かなり少なくなっている。また,価格も決して安いものではない。モノクロ用であっても,入手は容易ではないのだ。また,小型タンクが使えないので,現像も難易度が高い。
 しかし,モノクロ印画紙で代用できれば,これらの問題がかなり軽減される。
 モノクロ印画紙は,カビネ判より大きいものでも入手が容易で,フィルムにくらべれば価格も安い。撮影前にホルダへ詰める作業も,撮影後の現像作業も,いずれもセーフライトが使えるので,たいへん楽におこなうことができる。ただし得られる画像は,どうしても硬調でトーンが豊かではない。画質的には,十分に満足できるものとは言い難い。
 そうは言っても,シノゴよりも大きなサイズの撮影を手軽におこなえるという可能性には,たいへん大きな魅力がある。

ところで,モノクロのネガをつくるときには,1つの定石とされる考え方がある。それは「たっぷり露光 あっさり現像」というものだ。黒くつぶれがちなシャドウ部のトーンを再現できるようにするには,撮影時に,シャドウ部を基準に露出を決めればよい。このとき,全体を平均的に測光した場合にくらべれば,ややオーバー目の露出となる。これが「たっぷり露光」の意味するところのようである。そしてその分だけ現像時間を短め,すなわち「あっさり現像」することで,適度な濃度のネガが得られるということだそうだ。たぶん,こういうことを言っているのだろうと解釈している。ただし,どれくらい「たっぷり露光」して,どれくらい「あっさり現像」すればよいのかの基準は,とくにない。あくまでも1つの考え方ということか。
 基準がないのであれば,試してみるしかない。そもそも,印画紙をフィルムの代わりにして撮影しようという行為そのものがイレギュラーなものなのだから,試行錯誤するしかないのである。1枚ずつ撮影し,現像ができるシートフィルム(というか,この場合は印画紙なのだが)の場合,こういう実験がやりやすくて好都合である。

カビネの撮り枠には,両面にシースをセットできる。撮り枠を2つ用意すればそれぞれの両面で4枚の撮影準備が可能となる。
 前回は「フジブロWP FM2」を使用し,ISO 6として露光をおこなった。今回は比較のため,ISO 6での測光を基準値とし,2段「たっぷり露光」(ISO 1.5相当)と4段「たっぷり露光」(ISO 0.4相当)での撮影をあわせておこなうことにした。残った1枚は予備として,露出計「SEKONIC Digilite F L-328」で設定できるもっとも低感度である,ISO 3で測光して露光した。日中であるが,いずれも絞りF11で1/4秒から4秒という露光時間になるので,被写体ブレはなかなか避けられない状況である。人が通らないときを選んで,露光をおこなう。

OKUHARA CAMERA, FUJINON W 210mm F5.6, F16 1/2sec, FUJIBRO WP FM2
OKUHARA CAMERA, FUJINON W 210mm F5.6, F11 1sec, FUJIBRO WP FM2
OKUHARA CAMERA, FUJINON W 210mm F5.6, F11 4sec, FUJIBRO WP FM2

露光した印画紙を「コレクトール」で現像する。この画像は上から順に,ISO 6,ISO 1.5,ISO 0.4で露光したものである。「コレクトール」の標準的な現像時間は90秒とされているが,ISO 6相当で露光したものは,前回と同様に60秒で現像を打ち切った。ISO 1.5で露光したものは,像が出るのがさらに速く,現像を25秒で打ち切った。ISO 0.4で露光したものは,もう一瞬でまっくろ,という印象である。15秒ほど現像したことになるが,それでも長すぎたようだ。現像時間が短すぎると,現像を打ち切るタイミングがむずかしい。結果として,ISO 1.5相当のものがもっともトーンが出たようであるが,ISO 0.4のものは,現像を打ち切るタイミングを誤ったものとも考えられる。

さて,予備としてISO 3で露光した残りの1枚は,「コレクトール」ではなく,フィルム用現像液「スーパープロドール」(SPD)で処理をおこなうことにした。フィルム用現像液を使えば,印画紙用現像液よりも進行がゆっくりで,現像を打ち切るタイミングを見つけやすいことが期待できるからである。
 実際に現像をおこなうと,像のあらわれ方はかなり遅く,結局,120秒たったところで現像を打ち切った。これくらいの時間があれば,現像を止めるタイミングも判断しやすくなるというものだ。密着焼きで反転した画像も,実用的と言えるのではないだろうか。

OKUHARA CAMERA, FUJINON W 210mm F5.6, F16 1sec, FUJIBRO WP FM2

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