撮影日記


2010年04月24日(土) 天気:晴

シュンランとエビネ

「芸術か,猥褻か」という問題は,これまでなんども起こってきた。2009年秋には,篠山紀信氏の写真集について,屋外のだれでも見える場所でヌード撮影をおこなったことが「猥褻行為」だとして,警察の捜索を受けたという報道があった。ただし,その写真そのものは,猥褻物ではなかったとのこと。写真が猥褻物か否かという判断は,かつては陰毛が写っているかどうかがその基準に使われていたが,1990年代からは「局部」が写っているかどうかに基準が変わっているのが現状のようである。報道等では「局部」という表現が使われることが多いが,この場合は「生殖器」をさす。つまり,人間の生殖器を写した写真は,猥褻物とみなされうる。そんな生殖器を好んで撮影する人が,どれだけ存在するというのか?もっとも,「猥褻」の対象は人間である。人間の生殖器でなければ,それを写した写真は猥褻物にならない。
 花は,植物の生殖器だが,これを好んで撮影する人は少なくない。いや,趣味として写真をはじめた人なら,かなりの人が,花を被写体に選んだことがあるのではないだろうか。花は,さまざまな色をもち,さまざまな形をしている。色鮮やかで可憐なものほど,人の目を引く。また,花の咲く季節は決まっているので,花を写すことは季節感をあらわす方法にもなる。だからこそ,被写体として選ばれる機会も多いのだろう。
 春になると,さまざまな花を目にする機会が増える。ウメやサクラを求めて,あちらこちらの「名所」へ足を運ぶ人も増えるだろう。花の名所にかぎらず,身のまわりの公園でもさまざまな小さな花が咲きはじめる。冬の間は少々さびしかった植木鉢にも,こんな花が咲いていた。

Nikon D70, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

「シュンラン」とよばれる花である。漢字で書けば「春蘭」になり,文字通り,春に花を咲かせるランの一種である。日本国内では,野生のものもよく見られ,そんなに珍しいものではないらしい。ただし,このシュンランはいただきものなので,野生種のものか,人工的な交配を受けたような園芸品種なのかどうかわからない。また,品種名なども不明である。
 なお,シュンランは,「ジジババ」とよばれることもある。なぜ「ジジババ」なのか,諸説あるようだが,よくわからない。

別の植木鉢には,このような花も咲いていた。

Nikon D70, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

こちらもランの一種で,一般に「エビネ」とよばれるものである。エビネにはいくつかの種があるが,それらのなかには「絶滅危惧種」として扱われているものも少なくない。ただし,このエビネはいただきものなので,その品種名などは不明である。さすがに絶滅危惧種のものではないと思うが。

ランには,たとえばコチョウランのように,とても大きくて明るい色合いの花を咲かせるものもある。それに対してシュンランやエビネの花はやや地味で,園芸家の間では,山野草として扱われることが多いようだ。たしかに山の中などで,ひっそりと可憐な花をつけている,そんな雰囲気である。
 シュンランもエビネも,強い日ざし,高温,長期の乾燥を嫌うとのこと。だから,これらの植木鉢は,どちらかというと日あたりのあまりよくない場所に置くことになる。しかし,写真を撮るときには,それなりに光があたってほしい。そこで,都合のよい場所に移動させ,都合のよい向きにあわせて撮ることになる。野生の花や,他人の家の花では,こういう融通をきかせることはできない。


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