撮影日記


2010年02月19日(金) 天気:曇ときどき晴

110フィルムをつくる

昨日の日記に書いたように,110フィルムを現像するための道具の準備ができた。これでうまく現像できるかどうかを確かめるには,実際に現像をおこなえばよい。そのためにはまず,撮影済みのフィルムをつくらねばならない。以前,購入したフィルムが,ちょうど1本,残っている。ところがそれは,もはや貴重な存在となったカラーネガフィルム,フジカラーSuper G100である(2009年7月20日の日記を参照)。そんな貴重なフィルムは,この道具でうまく現像ができることを確かめてから使いたい。
 そこで,110フィルムの自作にチャレンジすることにした。
 いつか,こういうこともあろうかと,使用済みの110フィルムのカートリッジ等を確保しておいたのだ。110フィルムを自作する,といっても,なにもない状態からつくるわけではなく,使用済みの110フィルムのカートリッジと裏紙を利用して,フィルムを巻きなおすのである。

絶版になってしまったサイズのフィルムを使うカメラで撮影するには,そのスプール等を利用して,現行のフィルムを巻きなおして使うしかない。たとえばボルタフィルムは,現行の135フィルム(パトローネ入り35mmフィルム)の中身がそのまま利用できるので,使用済みのスプールと裏紙があれば,簡単に巻きなおして使うことができる(2009年10月15日の日記を参照)。
 絶版になったフィルムとしては,ベストフィルムともよばれる127フィルムも,よく知られている。127フィルムを使う4×4判の小さな二眼レフカメラなど,熱心な愛好者も少なくないらしい。最近でもたまに,クロアチア製のモノクロフィルム(2004年2月29日の日記を参照)を見かけることはあるが,このスプールと裏紙に,現行の120フィルムを巻きなおして使うことも一部ではおこなわれているようだ。そうすることによって,カラーフィルムも使えるようになるわけだから,そのメリットは大きいだろう。ただ,127フィルムよりも,120フィルムの方が,幅が広い。大は小を兼ねるのは間違いないのだが,120フィルムの一部を切り捨ててしまうことになるのは,どうにも「もったいない」。
 ところが。
 127フィルムの幅は約46mm,120フィルムの幅は約62mmである。120フィルムから127フィルムの幅のフィルムを切り取ると,16mmの幅のフィルムがあまることになる。これは,110フィルムに流用できるサイズではないか!

そこで,上の画像のような「枠」をつくった。これを利用して,120フィルムを約46mmと約16mmとに切り分けるのである。もちろん,この作業は完全な暗室内でおこなうこと。言うまでもないことだが。
 暗室内で手さぐりで幅46mmと幅16mmとにフィルムを切り分けたら,こんどはその長さを半分にする。これで少し短めになるが,127フィルムと110フィルムの「中身」の完成だ。切り分けたものは,遮光性の高い容器に入れるなどして,一時,保管しておこう。
 一息ついたら,フィルムの巻きなおしである。
 これも暗室内でおこなうことになるが,110フィルムの場合,このようにしてつくったフィルムはおよそ12枚撮りである。24枚撮りの裏紙を使えば,長さが随分とあまることになるので,フィルムのスタート位置なども気にせずに巻いてしまえばよい。フィルムが少なめなので,巻き方が少しくらい粗くなっても,スムースに巻き上げられるはずだ。
 巻きなおしてカートリッジに装填するとき,フィルムの最初の方は露出するようにしておく。もったいないが,こうしておかないとフィルムがスムースに送られないのだから,しかたない。ここまでできれば,もう大丈夫。あかりをつけて,フィルムをカメラに装填しよう。

ただし,このようにしてつくったフィルムは,どんな110カメラでも使えるとは,かぎらない。110フィルムには本来,1コマごとに小さなパーフォレーションがあけられている。110フィルムは,コマとコマの間にコマ番号が焼きこまれているので,フィルムを送る際に,その位置をきちんと決めておくことが必要なためである。そのため,フィルムの巻き止めに,そのパーフォレーションを利用していることが多く,そのようなカメラでこのように巻きなおしたフィルムを使うと,正常に巻き上げができないケースが予想される。さらに,そのパーフォレーションを利用してシャッターをチャージするようなカメラもあるが,その場合は,もはや使用は不可能だろう。
 こんなときに使いたいのは,110カメラの名機,ペンタックス・オート110(PENTAX auto110)だ。auto110は,レバーを2回,目いっぱい巻き上げることで,フィルム送りとシャッターのチャージがおこなわれる。パーフォレーションがないので,未露光でも続けて巻き上げができてしまうのが難点だが,そこは撮影者がちょっと気をつければよいこと。「撮ったらすぐに巻き上げる」か,「撮る直前に巻き上げる」か,どちらかに決めて,それを徹底すればよい。まあ,二重写しをしてしまう心配はないので,迷ったらシャッターレリーズボタンを押すことだ。押してシャッターが切れなかったら,巻き上げを忘れていた,というだけのことである。「シャッターチャンスを逃した」としても,それは自分の不注意によるものなのだ。潔く,あきらめるしかない。


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