撮影日記


2010年02月17日(水) 天気:曇

マミヤ35S2の謎 その後

マミヤ35S2は,マミヤから発売された35mm判レンズシャッターカメラのうち,露出計を内蔵していないものとしては末期のモデルである。マミヤ35S2には,装着されているレンズによって2つのバリエーションがある。1つは,3群3枚構成のF2.8レンズ付きのモデル,もう1つは,4群6枚構成のF1.9レンズ付きのモデルである。F2.8のモデルとF1.9のモデルとを1台ずつ入手したのだが,よく見るとこの2つのモデルに見られる違いは,装着されているレンズだけではなかったのだ。

レンズ以外の違いが,ボディの形状にあった。2009年5月25日の日記にも書いたように,ボディ前面のファインダーの左右につけられている「段」の数が違ったのである。入手したF2.8のモデルは「2段」に,F1.9のモデルは「1段」になっていたのだ。これは,F1.9のモデルとF2.8のモデルとの違いによるものなのか?マミヤ35S2は「前期型」「後期型」などのバリエーションがあるのか?それとも,入手した2台のうち1台は,マミヤ35S2ではないのか?
 古いカタログや雑誌の広告等に見られるマミヤ35S2の姿は,「2段」型である。一方,入手した「2段」型ボディのシリアルナンバーはNo.1169000で,「1段」型のシリアルナンバーNo.1195262よりもずいぶんと若い。このことから,「2段」型は「前期モデル」であり「1段」型は「後期モデル」である,という仮説を立てることができる。
 この仮説を検証するには,マミヤ35S2とされるカメラの例を多く観察し,シリアルナンバーを調べる必要がある。このたび,多数のシリアルナンバーに関する情報をいただいたことにより,この仮説が正しいのではないかと思えるようになったので,今日はこのことを紹介しておく。

いただいた情報によれば,シリアルナンバーNo.1156146,No.1174585,No.1176437,No.1181526は「2段」型ボディ,No.1185388は「1段」型ボディとのことであった。私が入手していたボディやインターネット上の販売サイトで見かけたボディの情報もあわせれば,ボディの形状とシリアルナンバーの関係は,次の表のようになる。

2段型 1段型
F2.8 F1.9 F2.8 F1.9

 1156146
 1169000
 1181526
 

 1174585
 1176437
 1176777
 

 1185388
 1190617
 

 1195262
 

しかも,F1.9レンズ付きのNo.1176437は,1959年9月末に購入されたものであることもお知らせいただいた。朝日ソノラマ「クラシックカメラ専科36マミヤのすべて」によれば,マミヤ35S2 F2.8の発売は1959年5月,F1.9は同9月とのこと。1959年9月末に購入されたということは,発売直後に購入されたものということになる。F1.9レンズ付きのNo.1174585はそれよりさらに前の,まさに発売直後の比較的初期のロットということになる。このことから,「2段」型ボディが「前期型」,「1段」型ボディが「後期型」であると結論づけてよいだろう。
 また,5月のマミヤ35S2 F2.8の発売からから,9月のマミヤ35S2 F1.9の発売までに,シリアルナンバーが1156***から1169***を経て117****まで進んでいる。このことは,それだけ多数のカメラが製造されたことを示しているわけだが,それだけではなく,F2.8は上3桁が115****,116****のシリアルナンバーを使い,F1.9は117****のシリアルナンバーを使うようにしていたと考えることもできそうだ。その後,F2.8は118****および119****を使い,F1.9は119****を使っている。F2.8については,No.118****の半ばで「前期型」から「後期型」に移行しているようだが,F1.9については,はっきりとはわからない。
 ところで,1960年3月発行の日本カメラショー「カメラ総合カタログ」(vol.1)には,マミヤ35S2が掲載されている。ここに掲載されている画像は,「2段」型すなわち「前期型」のものだ。そして,同年10月発行のvol.3には,すでにマミヤ35S2は掲載されていない。このことから,マミヤ35S2の発売期間は,1960年の半ばまでと考えられ,「後期型」ボディが流通したのは,1960年に入ってからのごく短期間に限られるのではないかということも考えられる。「後期型」ボディの購入年月日などがわかる資料があれば,そのあたりももっとはっきりすることだろう。

※2011年10月15日の日記で,あたらしく追加された情報があります。


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