撮影日記


2009年09月19日(土) 天気:晴

なんダ,コラ?

先々週だったか,たまたまテレビをつけたら,画面いっぱいにライカ(たぶんA型)が映し出されていた。ついつい最後まで見てしまったが,美術品の鑑賞のポイントを紹介する「美の壺」という番組で,その日のテーマは「クラシックカメラ」ということだった。
 全体としては,クラシックカメラのことを知らない人にもその魅力をわかりやすく紹介した,よくできた番組だったと言えるのではないだろうか。もっとも,「初心者に」「わかりやすく」という面をを重視しているせいか,少々,感情的すぎると思われる個所も散見された。たとえば修理業を営む方が「ライカは一度調整すれば,何10年も変わらず使える」「ボディ両側の曲線が正確で,きっちりとはまるので気持ちいい」などと発言していたあたりなどがあげられる。このあたり,ずっと以前に不快な思いをさせられた「ライカおやじ」(1997年7月9日の日記を参照)のような発想に思われるが,これくらい感情的な発言の方が「わかったような気になる」効果は高いだろう。「嘘も方便」ということだ。いや,そこまで言ってしまうと,少々,失礼にあたるかもしれないが。ただの持ち物自慢よりは,はるかにおもしろく聞くことができる。

ともあれクラシックカメラを紹介するテレビ番組でも,ライカは主役になってしまうのである。それだけ,ライカは人気があるということだ。その人気の背景には,ライカという製品の完成度の高さがあることは想像に難くない。
 市場での人気が高いライカは,もともと高価に取り引きされていたこともあってか,つねに一定以上の価格で取り引きがされている。高価だから,入手した人は大切に扱い,また,大切に保管してきた。その結果,何10年も前の古い製品であるにもかかわらず,本体やレンズ,そのほかの細かいオプション品に至るまで,それなりの数の商品がどこかに残っている。もしそれらが手放されることがあっても,それなりの価格がつけられるものであるから,必ずや市場に流通し,ふたたびだれかが入手して,そこで保管されることになる。そして,きちんと研究され,さらには多数の書籍等になってきちんと記録が残ることになるだろう。
 それに対して,普及品としてのカメラは,決して高価なものではない。かつて,カメラというものがあまねく高価なものであったころならばともかく,第二次世界大戦後になると,一部の高級品を除いては「一生モノ」などとはいわれないようになってきた。最近のディジタルカメラに至っては,最高級品であっても消耗品のように見えてしまう現状は,言うまでもない。だから,それが手放されるときは,そのまま廃棄されることにもなる。そして,そのメーカーが消滅してしまっているような場合には,そのようなカメラの記録もあまり残らないことになる。

このカメラは,2007年10月27日の日記にも書いたように,たまたまSteinheilの45mm F2.8のCassarレンズを搭載したモデルだったので,購入したものである。搭載されているシャッターはBと1/30秒〜1/250秒。低速シャッターのない,廉価版のものであろう。また,Cassarは3枚玉レンズであり,これも廉価版のものである。距離計や露出計などもない,普及型の廉価なカメラであることは十分に想像できる。カメラには,「DACORA dignette」「MADE IN WESTERN GERMANY」と記されている。 仕様などから,1960年ころの製品と思われる。

ところで,このカメラにも「DACORA dignette」と記されている。搭載されているシャッターは,Bのほかは1/25秒,1/50秒,1/200秒の3段階のみ。レンズは,45mm F3.5のDignarというもの。同じ「ダコラ ディグネッテ」でも,先のカメラよりさらに廉価な仕様で,スタイルも古いものに思われる。
 それぞれ具体的にいつごろのカメラなのだろうか。検索サイトで見つかった,「Collection G. EVEN」というウェブサイト(*1)が参考になるが,明確な解は得られない。
 DACORA dignetteは,それなりの長期間にわたってさまざまなバリエーションのものが存在するようだ。また,ILFORD名でOEM供給された例もあるとのこと。それなりの数が流通したカメラのようだが,あまり記録や記憶に残ってはいないようである。

さて,この2台を並べて見くらべてみよう。
 「DACORA」「dignette」というロゴが位置も含めて違っているので,まったく異なるカメラのような印象を受けるかもしれない。しかし,共通するところも多々ある。それらは,ダコラ・ディグネッテのアイデンティティといえるものかもしれない。
 1つは,カメラに向かって左側前面にあるシャッターレリーズボタンである。最近のカメラに慣れている人にとっては違和感の強い位置だが,レリーズ時にカメラをギュッと握ることになるので,手ぶれ低減に効果があると考えられる位置である。
 ファインダー窓が,撮影レンズのま上にあることも,特徴の1つである。この位置にファインダーがあれば,パララクスの影響が少ないことが期待される。また,撮影レンズもファインダー窓も左右中央に位置することも,共通する特徴だ。これによって,カメラの見た目が美しいと感じられる。
 ダコラ・ディグネッテには,さまざまなシャッターやレンズのバリエーションもあるようだが,フィルタ径など,そのサイズは共通しているようである。さらに,カメラ全体のシルエットもほぼ同じであることにも気がつくだろう。
 この2台は,やはり同じ「ダコラ・ディグネッテ」なのである。

*1 http://photo.even.free.fr/col_app.php?type=dacora


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