撮影日記


2009年05月11日(月) 天気:はれ

エスピオ928(ESPIO928)を見直したい

コンパクトカメラは,その名称が示す言葉のとおり,小さくて携帯に便利なカメラである。その言葉には直接あらわれていないが,「押すだけで簡単に写せる」ような自動化がすすめられたカメラであることも示している。さらに,業務でも使われるような一眼レフカメラ等にくらべて安価に流通するカメラである。「簡単に使える」「安い」「小さい」カメラであることから,初心者向けのだれにでも使えるカメラであるとして,蔑まれることもあったようだ。また,それを使う人も,「どうせ安モノのだから」などと,あまり期待をせずに使っていたような面もなかったとは言えないだろう。
 だからこそ,レンズや機能,材質等にこだわった小型カメラには,「高級」という称号をつけて,「高級コンパクトカメラ」と呼ばれたものである。「コンパクトカメラ」という言葉には,「安モノ」というニュアンスが確実に含まれているのである。
 ただ,コンパクトカメラの自動化は,確実に進化していった。AEやAFの精度はあがり,搭載されたレンズも改良がすすめられ,かつ,どんな場面でも撮影ができるような撮影モードが用意されるようになったものもある。それによる多機能化,高価格化と,コンパクトカメラ本来のシンプルさや低価格はトレードオフの関係になり,1990年代後半には各社から多機能なもの,高級路線のもの,シンプルで価格最優先のものなど,多種のコンパクトカメラがラインアップされるようになっていた。

ペンタックス「エスピオ928」は,1994年に発売された多機能コンパクトカメラの1つである。

 

このカメラは,短焦点側が28mmの広角域までカバーしたズームレンズを搭載している。そして,一般的なフルオートのコンパクトカメラではできない,多重露出やバルブ撮影などの機能がある。そのため,発売当初から気になっていたカメラだったのだが,メインで使うことになるかどうかわからないカメラであるし,レンズの描写等も未知数だったので,「まともな価格」で買う気にはなかなかならないものである(すまん)。だからジャンクコーナーをさがすことになるのだが,このカメラは人気があったのかジャンクコーナーに姿を見せることが少ない。たまにその姿を見かけても,それは素人には対処ができないような状況になっているとしか思えないものである。
 最近になって,リサイクルショップでストラップとケースが付属したものを500円で見つけ,ようやく購入することができた。ストラップやケースはなくてもいいのだが,この種のカメラはリモコンに対応しており,そのリモコンはストラップやケースに組みこめるようになっていることが多い。入手したESPI928のストラップにも,幸い,リモコンがきちんと組みこまれていた。
 リモコンの存在は重要である。ESPI928には,ケーブルレリーズのソケットはない。カメラ本体に手を触れずにレリーズをおこなうには,リモコンが必要なのである。もっともこの種のカメラで,そこまで意識した撮影をするのは,あまり現実的なものとは思えないが。

PENTAX ESPIO928, SMC-PENTAX 28mm-90mm, DNP CENTURIA 100

ESPIO928という名称が物語るように,搭載されたズームレンズは28mmから90mmをカバーする。望遠側が長いほうが「遠くのものを大きく写せる」として,一般的にはウケるだろうが,コンパクトカメラの場合は90mmくらいまでで十分に思われる。これよりも長いレンズだと,フレーミングも困難になるだろうし,レンズも暗くなることもあわせて,手ぶれが目立つようになるだろう。

PENTAX ESPIO928, SMC-PENTAX 28mm-90mm, DNP CENTURIA 100

これらの画像は,ネガフィルムをイメージスキャナ(EPSON GT-9700F)で読みこんだものである。天気のよい日にほぼ順光の状態で撮ったせいか,あまり補正をせずにこれくらいの画像が得られている。望遠側での描写は,ほぼ問題なさそうだ。
 一方,広角側で撮影した場合は,四隅の描写がややあやしげであり,周辺減光も見られるが,コンパクトカメラ用の広角ズームレンズとしては善戦していると評価してもよいだろう。

PENTAX ESPIO928, SMC-PENTAX 28mm-90mm, DNP CENTURIA 100

ESPIO928のボディは,大きくもなく小さくもなく,構えるにはほどほどの大きさである。望遠側が90mmまでなので,レンズの長さも気にならず,手持ちで気軽に振り回すことができる。動作も軽快で,ストレスをあまり感じない。
 そのため,明るいうちにフィルムを使いきってしまった(笑)。バルブ撮影などの試運転は,また別の機会におこなうことにしよう。1日使ったかぎりでは,これはよいカメラに思われる。また,ファインダーに十分な範囲の視度補正機構が組みこまれているのは,私のように近眼でメガネを常用する者にとっては,じつにありがたいものである。
 最近はディジタルカメラばかり使うようになってしまった人も,もしまだESPIO928を持っているなら,たまには使ってみてもいいんじゃないだろうか?


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