撮影日記


2009年01月17日(土) 天気:くもり

「うだつ」があがった町並み

「うだつがあがらない」を辞書(「広辞苑」第四版)でひくと,「出世ができない」という意味が最初に出てくる。その理由としては,「(昔は)うだつをあげられる家は,富裕な家である」ことから転じたということが紹介されている。
 では,「うだつ」とはなにか?
 辞書には「うだち」を参照せよとあり,「うだち」の項目には,いくつかの意味が含まれている。

広島市安佐南区の祇園地区には,古い形式の民家が多数残っている。これらの建物は,「うだつがあがっている」ことでよく知られている。ここでいう「うだつ」は,辞書の「うだち」では3つめの意味として扱われている,「建物の両側に張り出した袖壁」をさしている。その目的は,装飾と防火とのことである。このような「うだつ」のあがった建物が多数残っていることは,少なくとも江戸時代ころには,商業などで一定の繁栄を示していたことの名残であろう。

KYOCERA SAMURAI, KYOCERA Zoom Lens 25mm-75mm F3.5-4.3, PORTRA 160NC

このような建物は,地元では「旧国道」と呼ばれている県道277号古市広島線に沿って広がっている。この道は,横川から可部を経て出雲や石見に至る古い街道(可部で,石見街道と出雲街道に分かれる)とほぼ一致しているとされている。従来からここを通る人や物は少なくなかったのだろう。1670(寛文10)年には広島藩によって石見・出雲街道の幅を7尺と決めたとのこと。明治以後は県道として,さらに1952(昭和27)年には国道として,幅を広げたり舗装したりするなどの整備が進められてきた(「安古市町誌」,1970年による)。しかし今となっては,自動車が多く通るための道として考えれば,ごく狭い道である。ここを通るバス路線(「旧道」あるいは「旧国道」と表記されている)もあるが,バスどうしのすれ違いには「おお,さすがはプロの技だ」と,いつもうならされてしまう。
 現在では,この東側に国道183号線(前国道54号線,通称:新国道)ができており,こちらがバスのメインルートになっている。こちらを通るバスには「新道」あるいは「新国道」と表記されているが,その後さらに東側につくられたバイパスである「祇園新道」と間違えられやすい呼称ではある。なお現在は,「祇園新道」が国道54号線となっている。

KYOCERA SAMURAI, KYOCERA Zoom Lens 25mm-75mm F3.5-4.3, PORTRA 160NC

旧国道沿いには,商店になっている建物も多数ある。しかし,「かつて商店だった」と思われる建物も多い。地方の商店街によく見られる問題として,大型ショッピングセンターの進出や,後継者不足などがあげられるが,この地域も例外ではないのかもしれない。
 少し歩いていくと,医院の建物があった。壁に見事な装飾がなされている。これは江戸時代よりも近代に建てられたものであると思われるが,まだ自動車が少なかったころには,この界隈にはそうとうなにぎわいがあったものと想像する。

KYOCERA SAMURAI, KYOCERA Zoom Lens 25mm-75mm F3.5-4.3, PORTRA 160NC
KYOCERA SAMURAI, KYOCERA Zoom Lens 25mm-75mm F3.5-4.3, PORTRA 160NC

最近,古い町並みを活性化に利用するような動きが見られる地域もあるようだが,祇園地区に残る町並みにもそれだけの「力」があるように感じられる。いまはほとんど整備もされず,無人になって時間が経っていると思われる建物には,表はそれなりにきれいでも,裏から見れば崩れそうになっているものもある。
 この近く,県道277号線東側にある,イズミ「youmeタウン」祇園店は,西日本ではじめての「郊外型大型ショッピングセンター」として,昭和40年代にオープンしたとのこと。さらに可部線をはさんだ西側には,イオンのあたらしい大型ショッピングモールが建設中である。人を呼び寄せる要素はできつつあるのだから,古い町並みを利用した商店街のようなものが形成されれば,さらに魅力的な地域ができあがる可能性があるように思う。
 ただ,旧国道は大型自動車がなんとかすれ違える程度の幅しかない。歩行者が楽に歩けるような歩道が確保されていれば,この町並みを活用できると思うのだが,残念である。

ともあれ,京セラ「SAMURAI」に残っているフィルム(ここ数日の日記も参照(^^;))を,とにかく使いきってしまいたかったのであった。


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