撮影日記


2008年12月19日(金) 天気:くもり

川面にたゆたうドームの影

年末になると,各地でイルミネーションやライトアップなどがおこなわれるのをよく見かける。広島市内で2002年からおこなわれている「ひろしまドリミネーション」は,観光スポットとしての街の魅力づくりを目的にしている。
 今年(2008年)の「ひろしまドリミネーション」のイルミネーションは,11月17日から2009年1月3日のあいだ,17時30分から23時まで点灯されることになっている。

今月になってから,原爆ドームのライトアップ事業も開始された。これは,「広島宮島岩国地域観光圏事業」として,厳島神社や錦帯橋とあわせて,観光客が滞在時間を延長することをねらっておこなわれる事業である(*1)。期間は12月8日から2009年1月18日のあいだ,18時から21時まで点灯されることになっている。原爆ドームは,緑色にライトアップされるとのことだ。

原爆ドームの正面には,元安川がある。水面に原爆ドームの姿がきれいに写っているところを撮るには,なんと言っても水面が静かでなければならない。
 今回のライトアップは,原爆ドームの姿がくっきりと浮かび上がるように明るくするものではなく,ほんのりと緑色を与えるようなものである。したがって,水面に反射する原爆ドームの像は,かなり暗いものとなる。スポットメーターで測光しても,感度ISO100のフィルムを使うとき,絞りF4で露光時間は4秒となる。風が止んで,水面が静かになる瞬間を待つが,完全に水面が静止することはない。
 1秒のシャッターを4回切る多重露光によって,4秒という露光をあたえたが,水面は微妙にゆれうごいている。そのせいか,像が川面をたゆたう雰囲気は再現されたようだ。ただし,水面に写った暗い像に露出をあわせると,本体はかなり露出オーバー気味となり,本来のやわらかく緑に光った雰囲気は出ないようである。

Mamiya Universal Press, Mamiya-sekor 100mm F3.5, EPN / F4, 1sec x 4

ところでこのとき,潮は引き続けている状況で,水位はずいぶんと低くなっている。水位が高いときであれば,原爆ドームの対岸,同じ高さからすなおなアングルでの撮影が可能だ。
 一方,水位が低いときは,石段をおりて水面に近いところから撮ることになる。この位置からだと,原爆ドームの向こうがわに位置するビルや広島市民球場の照明が隠れるようになる。広島市民球場の照明は,まさに「平和な状況」を示すものであるから,原爆ドームとともに画面内に写りこんでほしいこともある。しかし,川面に写った原爆ドームの像とくらべると,広島市民球場の照明は,あまりに明るすぎるのである。だから今夜は,広島市民球場の照明の存在は,あまり歓迎したくない。

つづいて,「原爆慰霊碑」の前に移動する。
 「原爆慰霊碑」の前にたつと,「平和の灯」と「原爆ドーム」を正面に見ることができる。ここで,原爆ドーム本体の明るさに露出をあわせて撮ってみる。

Mamiya Universal Press, Mamiya-sekor 100mm F3.5, EPN / F4.5, 1sec

ライトアップされているとはいえ,周囲の街路灯などが明るすぎて,原爆ドームの存在がいまひとつ目立たない。
 ところで,今夜の機材は,マミヤユニバーサルプレスと100mm F3.5,75mm F5.6の2本のレンズである。三脚は,スリック・マスター。マミヤプレスのシステムには,いわゆるフールプルーフの思想が盛りこまれていない。つまり,慣れないと操作ミスをおかしやすいカメラである。しかしながら,慣れていればさほど問題なく使用することができる。
 今夜は寒い。また,最近,写真を撮りに行く機会が激減している。そのせいか,久しぶりに初歩的な操作ミスをおかしてしまった。ピントグラスで構図を整え,ピントを調整するときにはレンズのシャッターを開放にしておこなうのだが,そのままの状態でフィルムホルダを装着し,引き蓋を抜いてしまったのである。
 昼間にこういうことをすれば,ポジフィルム上には確実に「す抜け」のコマが生じることになるのだが,幸か不幸か,いまは夜景の撮影。むしろ,これくらいの長時間露光をあたえてもいいのではないか?と思わせる結果になっていたのであった。

Mamiya Universal Press, Mamiya-sekor 100mm F3.5, EPN / F8, ?? (^_^;

*1 http://www.city.hiroshima.jp/kikaku/kikaku/vi/chiikikankoken/top.htm


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