撮影日記


2008年10月18日(土) 天気:晴

UW-NIKKOR 28mm F3.5を
どうしようか

入手して以来,まったく使っていないレンズがある。

UW-NIKKOR 28mm F3.5

UW-NIKKOR 28mm F3.5,このレンズは,ニコノス用広角レンズである。

ニコノスといえば,水中カメラとして長い歴史を誇るカメラだ。単に,「雨の中でも平気です」という程度の防水カメラではない。深さ50mの水中でも平気な,35mm判カメラなのである。
 ニコノスのシリーズにはI,II,III,IV-A,Vという機種があった(このほかにRSという「水中専用一眼レフカメラ」もあったが,特殊なカメラなので,ここでは除く)。ニコノス用の交換レンズも何本かラインアップされていたが,標準的にセットされていたレンズは,W-NIKKOR 35mm F2.5というレンズである。35mm判システムカメラでは,標準レンズとして50mmレンズがセットされていることが一般的であるが,ニコノスの場合はどちらかというと広角レンズともいえる35mmレンズが標準的にセットされている。
 ニコノスに35mmレンズが標準的にセットされている理由としては,ニコノスのピント調整が目測式であることが考えられる。ニコノスは,一眼レフカメラではない。また,二重像合致式距離計に連動したファインダーをもつ,レンジファインダーカメラでもない。これらのことから,広角レンズの方が撮影しやすいという判断がされたものと思われる。また,ニコノスの活躍の場は,水中にも広がる。水中では,水の屈折率の関係で,レンズの焦点距離が約1.3倍になる。その分,撮影される範囲は狭くなる。50mmレンズの1.3倍は65mmだ。このような焦点距離のレンズを目測で使うと,ピントをはずしてしまいやすくなるだろう。また,水中ではカメラの固定が困難とのこと。そのことも,少しでも広角なレンズの方が好都合だということにつながる。
 水中での使用を考えれば,35mmレンズであっても45mmレンズ相当としてはたらく。だから,「ニコノスによる水中写真の初心者は,28mmレンズあるいは20mmレンズを使うようにしよう」と勧める人もあったようだ。

UW-NIKKOR 28mm F3.5は,水中写真用標準レンズとでもいうべきものなのである。

ところで,ニコノス用レンズのうち,W-NIKKOR 35mm F2.5とNIKKOR 80mm F4は「水陸両用」,UW-NIKKOR 28mm F3.5,UW-NIKKOR 20mm F2.8,UW-NIKKOR 15mm F2.8は「水中専用」ということになっている。
 水陸両用レンズには,防水のための平面ガラスが最前面に組みこまれている。水中専用レンズにも防水のためのガラスが最前面に組みこまれているのだが,広角レンズほど目立ってくる水中での歪曲収差や色収差を修正するために,水中専用レンズの最前面のガラスは,凹レンズになっている。
 そのため,水中専用レンズを空気中で使用すると,ピントが合わない。そこが,水中専用レンズが,水中専用たる所以なのだ。
 ニコノスを水中カメラとしてではなく,防水カメラとして陸上で使いたいというユーザも少なくない。そのような人のなかにも,28mmレンズを使いたいという声があったのだろう。短期間であるが,陸上専用のLW-NIKKOR 28mm F3.5というレンズがラインアップされていたことがある。水中でニコノスを使う予定のない私は,LW-NIKKOR 28mm F3.5を入手するべきなのだが,発売期間が長くなかったこともあるのか,中古カメラ店の店頭であまり見かけることがない。それに対してUW-NIKKOR 28mm F3.5は,長期間にわたって,多数の商品が流通している。そのため,店頭で見かけることも多く,最近では価格もかなりこなれてきている。そこで,ついつい入手してしまった,というわけなのだ。

さて,UW-NIKKOR 28mm F3.5をどうするか。
 最近,すっかりごぶさたしてしまっているが,またぼちぼち常清滝なども撮りに行きたい。そのとき,水のなかから滝を見上げるような写真も撮ってみたいので,まあそのときまで,大事にとっておくことにしよう。
 ところで,UW-NIKKOR 28mm F3.5の最前面の防水凹レンズを取り去ったら,ちゃんと空気中でピントがあうようになるのだろうか?
 もしもう1つ,UW-NIKKOR 28mm F3.5を極めて安価に入手できたら,最前面のレンズを取り去ったらどのように写るのかを試してみるのもおもしろいかもしれない。そうすることによって空気中でもピントが合うレンズになれば,取り去った凹レンズのかわりにUVフィルタでもつけておけば(UW-NIKKOR 28mm F3.5のフィルタ径は58mm),水中での使用は無理でも,ちょっとした防水カメラとしてなら使えるようにならないだろうか。

のんびりと,UW-NIKKOR 28mm F3.5との2度目のよい出会いを待つことにしよう。


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