撮影日記


2008年06月09日(月) 天気:晴ときどき曇

さらば,スーパーG

ディジタルカメラの性能向上にともなうように,ディジタルカメラの出荷は増え,フィルムを使うカメラの出荷は減少を続けているという。また,フィルムの出荷も減少しているという。
 ディジタルカメラには,さまざまな利点がある。たとえば,ディジタルカメラによって得られた画像データは,すぐにパーソナルコンピュータ等にとりこんで,印刷物等に利用することができる。撮影段階においては,撮影した画像を内蔵されたモニタですぐに確認できることや,1コマ,ランニングコストが安いように感じられることも大きい。
 一方,ディジタルカメラには,製品の陳腐化が顕著だという問題点がある。たとえば新製品が出るたびに,記録画素数が増える傾向にある。記録画素数が増えることは,画質への影響も大きい。ある程度以上の画素数があれば,わずかな画素数の差など気にする必要もないのだが,それでも「より高画質」の可能性がある機器で記録したいと考えるのは,しかたのないことと思う。だから,「まだ正常に動作する」ディジタルカメラであっても,すぐに使われなくなってしまう傾向があった。
 一方,フィルムを使うカメラは,機器に致命的なトラブルが生じない限り,ずっと使うことができた。それは,画像を記録する部分,すなわちフィルムがつねに新鮮なもので,最新の技術によるものだから,カメラを買い替えることなく,最新の技術の恩恵を蒙ることができるのである。極端な例を示せば,約80年前のライカA型(1925年発売)では,当初,モノクロ写真しか撮れなかった。しかし,現在ではそのカメラにとくに改造等を加える必要なく,カラー写真を撮ることができるようになった(最初のカラーフィルムの発売は1935年),ということである。

いま,日本国内でもっともポピュラーなフィルムは,富士フイルムの一般向けカラーネガフィルムだと思う。このシリーズも,ずっと改良が続けられている。たとえば1983年には「フジカラーF-II」から「フジカラーHR」に改良された。「フジカラーHR」は「フジカラーHG」になり,さらに1992年には「フジカラー スーパーG」に改良された。その後,「フジカラー スペリア」「フジカラー スペリアヴィーナス」などと,改良が重ねられてきている。
 新しく改良されたということは,それ以前のフィルムは性能的に劣っているということになる。したがって,早々に店頭から姿を消していくだろう。とくにフィルムは「生(なま)もの」である。使用期限が設定されている。古いものは,いつまでも在庫として眠っているわけにはいかない。
 ところが,とっくの昔に改良されて消えたはずの「フジカラー スーパーG」は,いまでも店頭で売られているのである。

フジカラー スーパーG 110-24
使用期限:2008-8

フィルムのサイズ等に関しても,さまざまな規格が存在した。いわゆる35mm判フィルム,パトローネ入りの「135フィルム」は,1934年から基本的に変わらぬサイズで存在しつづけている。フィルムのサイズが変わらないからこそ,80年前のライカに最新のフィルムを使えるのである。また,中判カメラ用の「120フィルム」も息の長い規格である。一方,より簡単にカメラを使えるように工夫されたカートリッジフィルムは,発売当初はかなりの支持を集めても,やがて廃れていく傾向があった。
 「ポケットフィルム」「ポケットインスタマチック」などと呼ばれる「110(ワンテン)」フィルムも,そのような運命をたどったフィルムである。それを使うカメラは「ポケットカメラ」と呼ばれ,小さく簡単に使えることから一時はかなりの人気商品になったようだが,画面が小さいことから画質の面での不利が目立ち,135フィルムを使うカメラの小型化が進んだこともあって,使われなくなっていったのである。
 ほとんど見かけることがなくなった「110フィルム」だが,それでもある程度の需要はあったのだろう,まだ,発売されていたのである。その1つが,「フジカラー スーパーG 110-24」だ。こんなところに,まだ「スーパーG」の名前が残っていたのである。ところが,2008年5月7日付で,このフィルムの製造・販売が終了する予定がアナウンスされていた(*1)。ごく最近まで気がつかなかったので,大きな衝撃を受けたものである。

ところで110フィルムは,富士フイルムのほかにコダックからも発売されている。「コダック ウルトラ110」という名称である。コダックのウェブサイトを探っても,この商品に関する情報が掲載されていなかったため,「もしかしたら,気がつかないうちに製造・販売が終了してしまったのだろうか?」と,少し心配になった。そこで,コダックに問い合わせをしてみた。今日,その返答をいただいたのだが,それによると「現在は,製造・販売を終了する予定はない。」とのことである。週末をはさんでいたのにもかかわらず,わずか数日で回答をいただけたことには,深く感謝申しあげたい。
 とはいえ,110フィルムを使いたい人にとって,ずっと安心していていいというものではないだろう。コダックの2006年1月24日の発表(*2)によれば,「市場に需要がある限り」フィルムを供給するとのことである(2006年1月25日の日記も参照)。市場に需要がなくなれば,フィルムの供給をやめざるを得ないと判断する可能性が,ゼロではないということだ。110フィルムを愛用する方は,これまでと変わらず,110フィルムを使い続けることが大切になると思う。私もできるだけ協力したい。といっても,1年間に何本使うことができるだろうか・・・(^^;

*1 http://fujifilm.jp/information/20080507/

*2 http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/corp/info_012406.shtml


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