撮影日記


2008年04月12日(土) 天気:はれ

白いタンポポを見つけた

近所を歩いていると,白いタンポポを見つけた。このあたりに黄色いタンポポはたくさん咲いているが,白いものはあまり見かけない。さっそく,撮っておくことにした。いわゆる接写になるのだが,具体的にどのように撮ってみようかという考えは,まったくない。そこで,接写に使うレンズをできるだけ多く持ちだすことにする(笑)。

まずは,AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8Sを選んだ。いわゆる中望遠マクロレンズは,小さな花を撮るときには定番のレンズと言えるだろう。中間リングを併用せずに,無限遠から連続的に等倍(1:1)撮影まで対応しているタイプのレンズは,とくに使いやすい。直径数cm程度までの小さな花は,等倍撮影で35mm判の画面サイズにめいっぱい写しこまれる。そのときのフィルム面と被写体までの距離はおよそ0.31mとなり,近すぎず遠すぎず。カメラがつくる影の影響をさけることもできれば,手を伸ばして小型のレフ板で光をあててやることもできる距離である。この分野の製品としては,従来からタムロンの90mmレンズの評価が高いようだ。マニュアルフォーカスのモデルであれば,マウントを交換して多くの一眼レフカメラボディで使用できることも,ユーザの幅を広げ,高い評価が知れ渡ることにつながったものと思われる。
 ついで,Ai Micro-NIKKOR 200mm F4 (IF)を選んだ。いわゆる望遠マクロレンズである。最大撮影倍率は1/2倍であるが,そのときのフィルム面から被写体までの距離は0.71mある。AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8Sで1/2倍になる距離は約0.38mなので,たとえば柵などの関係で被写体に近づけないようなときなどに,大いに有利である。たいへん細く長い印象を受けるレンズであるが,IF方式(中間のレンズ群を移動させてピントを合わせる方式)のため,ピント合わせの際にレンズの全長が変化せず,見た目よりもずっと扱いやすいレンズである。
 いわゆる望遠マクロレンズ,いわゆる中望遠マクロレンズを用意したからには,ついでにいわゆる標準マクロレンズも用意せねばなるまい。Ai Micro-NIKKOR 55mm F2.8Sは,単体では1/2倍までの撮影になるが,中間リングの併用で等倍撮影も可能になるレンズである。今日のように,公園の隅などで咲いている,背のごく低い花を写す場合には,たぶん,いわゆる望遠マクロレンズよりも使い勝手がよいものと思われる。

さて,ふつうはこれだけのレンズを用意すれば十分すぎるはずであるが,これだけにとどまらないところが,カメラ好きな私の悪いクセである(笑)。
 こういうときに,荷物に余裕があればぜひとも用意したいものが,「ニコンおもしろレンズ工房」セットに含まれる,「ぐぐっとマクロ/ふわっとソフト」だ。これは,レンズを組みかえることで,いわゆる中望遠マクロレンズ(2群3枚構成,最大撮影倍率1/1.4倍,120mm F4.5)とソフトフォーカスレンズ(1群2枚構成,最大撮影倍率1/2倍,90mm F4.8)の2通りに使うことができる。このレンズは,ニコンの製品として唯一のソフトフォーカスレンズなのだ。ややもすれば単調になりがちな花の接写において,気分転換にもってこいのレンズである。
 「ニコンおもしろレンズ工房」セットには,ほかに「ぎょぎょっと20」「ぐぐっと400」という超広角レンズおよび超望遠レンズも含まれているが,いちばん使いたい場面が多いのは,やはり「ふわっとソフト」である。

そして。
 これだけにとどまらないところが,私のほんとうに悪いクセである(笑)。ダメ押しに,もう1つ用意したレンズは,AFテレコンバータTC-16ASだ。これは,ただの1.6倍のテレコンバータではない。マニュアルフォーカスのニッコールレンズをこれにとりつければ,ニコンのオートフォーカス一眼レフカメラで,オートフォーカス撮影ができるようになるというものである。たとえば,50mmのマニュアルフォーカスレンズを80mmのオートフォーカスレンズとして使えるようになる,ということである。
 このテレコンバータを使う目的は,「等倍以上の拡大撮影」をするため。今日は時間も十分にあるし,光の状態もまずまず。背の低い花を撮ろうと思っているので,風の影響も小さいだろう。それに,「マクロ撮影」とは本来,等倍以上の拡大撮影を意味していたのである。等倍までの近接撮影は「マイクロ撮影」と呼んで区別されるべきものだったようだが,最近はすべて「マクロ撮影」と呼んでも問題ないらしい。

その結果,2月にジャンクコーナーから救出したF-501を使うことにした(2008年2月2日の日記を参照)。TC-16ASが使えるボディは,意外と限定されている。私が持っているカメラのなかでは,F-501を除くと,F-801だけだ。F-801はプレビュー機能もあって使いやすいカメラであるが,マニュアルフォーカスレンズを使うときには,露出モードがマニュアルと絞り優先AEしか使えない。一方のF-501は,オートフォーカスレンズを使うときでも,マニュアルフォーカスレンズを使うときでも,マニュアルと絞り優先AEに加えて,プログラムAEが利用できる。もっとも,今日のように花の接写をするときには,マニュアルと絞り優先AEがあれば十分なのだが。

Nikon F-501, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S, EB

Nikon F-501, Nikon Soft 90mm F4.8, EB

背の低い花の接写においては,三脚も背の低いものが便利である。ローアングル撮影が容易であれば,言うことなし。こんなときには,ケンコー「ハイパーローアングル三脚」の出番だ(2002年9月15日の日記を参照)。これを改良したものが,スリック「ローアングルエキスパート」のようだ。開脚についての自由度は極めて高い。コンパクトで軽いわりには,しっかりした印象を受ける。ただ,その操作性はきわめて煩雑である。とはいえ,こういう場面での使用には,実に適した三脚なのであった。

白いタンポポを撮った後,少し場所を変えた。この時期には,小さな花がいろいろと咲いている。たとえばホトケノザ,たとえばカラスノエンドウなどがよく目立つ。また,この付近には,白や紫のゼニゴケも多く見られる。土手のような場所に,ちょうど形のよいホトケノザを見かけたので,次にそれを撮ることにする。
 ホトケノザは,いわゆる雑草の1つとしてどこにでも咲いている,花の長さが1cmにも満たない程度のきわめて小さな花であるが,その姿はランのように複雑で艶かしい。空間的に広がりがあるので,接写をするのにおもしろい被写体である。こんな花こそ,AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8SとAF Teleconverter TC-16ASを組み合わせた拡大撮影をしてみたい。

Nikon F-501, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S, EB

Nikon F-501, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S, AF Teleconverter TC-16AS, EB

このとき,土手の上から「接写をしているんですか?」と年配の方から声をかけられた。お話によれば,ガーデニングを趣味とされており,接写などもできればいいなあとお考えのようである。

「それは,デジカメですか?」

「いいえ,フィルムです。」

いろいろとお伺いすると,ご自宅に古い一眼レフカメラが残されており,以前それを使っていた人は,花の撮影などをされていたらしい。もしかすると,そこにいわゆるマクロレンズが含まれているかもしれない。あたらしくディジタルカメラを買う前に,それを探し出して,カメラ店で「使える状態にあるかどうか」を見てもらうのもいいのではないか?ということをお伝えした。
 これで,フィルムで花を撮る人がまた1人,増えたらいいな。と思う。


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