撮影日記


2008年01月23日(水) 天気:曇ときどき雨

高速道を40km/hで走る

午前中の用を済ませた後,時間があまったので午後は,運転免許センターへ運転免許証の更新に行くことにした。必要な書類は「更新連絡はがき」だけとのことなので,出かける前にはそれをたしかにカバンに入れた。
 午前中の用がある場所は,市内中心部,紙屋町付近である。一方,運転免許センターは,佐伯区の山奥。「山奥」というと,人が立ち入らないような山深いところというイメージがつきまとうかもしれないが,周辺は住宅団地等が開発されていたりするような開けた場所である。だから,「山奥」という言い方をするのは適切ではないかもしれない。ここでは,単に高いところへ上がっただけではなくさらにその向こうである,という意味で「山奥」と書いた。その周辺にお住まいの方には少々不快な思いをさせてしまうかもしれないが,ご了承いただきたい。ともあれ,広島市内中心部方面から見ると,運転免許センターは,市内中心部付近から見える山(茶臼山)のさらに向こうの山の上にあるのだ。
 紙屋町の広島バスセンターからは,免許センターへ直行するバスが1時間に2本程度の頻度で運転されている。この路線は,途中に平成13(2001)年10月2日に開業した広島高速4号線という道路を通る。「高速」という名前はついているが制限速度は60km/hであり,高速道路というわけではないが,ここを通るときに高速道路並みの速さで通行するクルマを見かけることは,珍しいことではない。広島高速4号線は,茶臼山を貫いた向こう側,たとえば西風新都などへの近道である。近道であるから,そこを利用する人は「目的地へ速く行きたい」と考えるであろう。また,有料道路だからか,道は空いている。さらに加えるなら,この道は山へのぼっていく道でもあり,それなりの勾配である。のぼるときは,失速しないようにそれなりにアクセルを踏みこむだろうし,くだるときは言うまでもなく,ともあれスピードがあがりやすいわけだ。
 そういえば,この道が開通したころ西風新都に住む人が,「あの道はタバコみたいなものだ」と喩えていた。そのココロは,「金がかかるのはわかっているが,一度使うとやめられない」。もっともタバコと違って,その利用が,健康に直接悪影響を与えることはないと思うが。

さて,広島高速4号線経由で広島バスセンターから免許センターへ向かうバスの車両は,前と中央にドアのある一般の路線バスのものだ。ドアが前だけにあって背の高いいわゆる「高速バス」は,高速道路を100km/hくらいでびゅんびゅん走っている印象があるが,それに対して一般の路線バスは,比較的混雑した道路を,こまめに設けられた停留所にきちんと停車しながら,結果としてゆっくり走っているという印象が強い。バスベイにはクルマが迷惑駐停車している場合も少なくなく,それを避けながら,できるだけ歩道に近いところにバスを止め,迷惑駐停車のために発進しにくい状況のなかで慎重に運転する。さすがプロの運転だ,と思わされることもある。ともあれこのようなことによって,ただでも遅く,鉄道にくらべて乗降しにくいバスが,ますます利用しにくくなっている状況がある。それに対して,迷惑駐停車している側が「ハザードランプさえ点滅させておけば問題ないでしょ?」と自己主張しているかのごとく悠々としているのを見ると,腹が立ってくるものである。
 ま,そんな,「ゆっくり走る」という印象が強い路線バスの車両が,たとえ制限速度が60km/hの道であっても,そこを制限速度いっぱいで快走してくれれば気持ちがいいに相違ない。広島高速4号線は,ほぼ橋とトンネルだけであり,途中にバス停もない。また,このバスは,広島高速4号線を経由する運用に就くことが意識されているのか,座席にはシートベルトがある。ますます,橋をトンネルを快走してくれるものと期待が膨らむ。
 バスは市街地を走り,右折していよいよ広島高速4号線に進入する。「シートベルトの着用」を促すアナウンスでも入るのかと思ったが,次のバス停を告げるだけで,とくに注意事項は伝えられない。いちばん気になっていたのは,着席している乗客には「シートベルトの着用」を促すだろうが,着席していない乗客にはなんと告げるのだろうか?ということであるが,結局,なにもなかった。そんなことを考えているうちにもバスはぐんぐん坂をのぼっていく・・・・が,40km/hくらいまでしか加速しない。そのままトンネルを抜けて料金所に停車するまで,ずっと40km/hのままゆっくりと走っていたのであった。
 広島高速4号線が開通するまでは,山をぐるっと回りこんでいかなければならなかった。それにくらべると,ゆっくりと走るバスではあるが,「近道」の効果は大きい。広島市内中心部から山をぐるっと回りこむルートを走る新交通システム「アストラムライン」の利用者数は,広島高速4号線が開通してそこを走るバス路線が開業後の平成14年度に,前年にくらべて大幅な減少が見られる(*1)。さすがに,広島高速4号線のルートに,アストラムラインの支線を走らせようなどという計画はなかったのだろう。長期的な計画では,現在の終点の広域公園前駅から西広島へ出て,さらに平和大通りを東へ進み,たとえば環状のルートにするというものがあるようだが(*2)。

ともあれバスは,さらに大学のキャンパス内や住宅団地内にも立ち入り,じつにゆっくりと免許センターについたのであった。

さて,運転免許の更新手続きをとろうとしたところ,なんと,免許証を持ってくるのを忘れていたことに気がついた。しかたない,後日,出直すしかない。窓口の人に「帰り道は,気をつけてくださいね(^_^)」と声をかけられるが,それは「免許不携帯で運転して,事故などおこすと面倒だよ(^_^;」という意味に思われる。

「いやあ,気まぐれでバスで来たもので・・・それで忘れたみたいです f(^^;」

「バスですか,それはごくろうさまで(^^)」

ただの更新の際に,バスで来る人は少ないのかもしれない。ともあれそんなやりとりの後,30分に1本のバスをただ茫然と待つことになったのであった。
 帰路も,バスは同じルートを走る。広島高速4号線内は,下り坂のせいか,若干速く走っているようであるが,それでも60km/hでの快走は楽しませてくれないようだ。

*1 http://www.astramline.co.jp/situation18.html

*2 http://www.city.hiroshima.jp/www/contents/0000000000000/1180586542955/


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