撮影日記


2008年01月13日(日) 天気:はれ

とんど

画像は携帯電話のディジタルカメラ機能によるもの

年が明けると,各地で竹などが高く積み上げられているようすが目に入るようになる。たとえば刈り入れの終わった田んぼで,たとえば河原で,それらを見ることができるだろう。「とんど焼き」の準備だ。「とんど」は,むしろ「どんど」と表記する方がいいのかもしれない。手元にある広辞苑(第四版なのでいささか古いのであるが・・・しかも,「電子ブック版」である)では,「どんど」が見だし語になっている。また,その説明によれば,「小正月」に「門松やしめ縄などを焚く」祭であるということだ。また,とんどの火で餅を焼いて食べると縁起がよい等の話も聞く。ともあれ,このような光景は,この時期の風物詩である。
 だから,このシーンを写真に撮ろうとする人も少なくない。高く積み上げられた竹が燃え上がるようすは,迫力がある。竹がはじける音もすさまじい。20年くらい前であれば,テープレコーダーを用意して「生録(なまろく)」をする人もあっただろう。「生録」ということばも,それによく用いられたとされるスタイルのテープレコーダをあらわす「デンスケ」ということばも,すでに美しく忘却の彼方に旅だってしまっているものと思われる。音だけではそれがなにかを十分にあらわすことは容易ではないから,家庭用ビデオカメラが容易に入手できるようになると,音と映像を同時に記録しようとする人があらわれてくる。いや,家庭用ビデオカメラが登場する前でも,「サウンドカメラ」という,音も同時に記録できるフィルムの8ミリカメラが存在していた。去年,ここでの「とんど焼き」では,8ミリカメラで撮影する人をみかけて驚いたものである。
 今年の「とんど焼き」では,8ミリカメラの姿を見かけることはなかった。しかし,ディジタルカメラにまじって,ニコンF3様を使っている人をみかけることはできた。そのニコンF3様は,映画「ミッドナイトイーグル」に登場するF3様(2008年1月1日の日記を参照)のように,モータードライブMD-4付きのF3P様ではない。それでもF3様のお姿は,遠くからでも美しくカッコよく目立つのである。
 ちなみに,私が使ったカメラは,モータードライブMD-12付きのニコンFM様である。「ミッドナイトイーグル」を見て,MD-4付きのF3P様のお姿に惚れなおした私であるが,残念ながらF3様はもっていても,MD-4をもっていない。しかし,大げさに見えるモータードライブ付きのカメラを使いたかった。そうなると,今の私には,MD-12付きのFM様という選択肢しかないわけである。いや,単に映画の影響である。単純なやつで,すまん。

ニコンFM様のほかに,昨年購入したDACORA Dignette(2007年10月27日の日記を参照)の試し撮りもおこなってみた。45mmというレンズの写角は,広くもなし狭くもなしで,客観的な視点で撮るのに適切であると感じている。ただし,いかにこのカメラのファインダーが撮影レンズのま上にあるといえども,この種のビューファインダーカメラでは厳密なフレーミングは容易ではない。
 また,シャッターレリーズの音がきわめて小さく,ばちばちとはじける音のすさまじい「とんど焼き」の現場では,シャッターレリーズの音が自分でも確認できないのであった。こういう場で使うには,ふさわしくないカメラかもしれない。巻き上げのたびに爆音を発生するMD-12付きのニコンFM様を用意して正解だったのである。MD-4付きのF3様だったら,もっとふさわしかったことだろう。

DACORA Dignette, Cassar 45mm F2.8, JX100

寒い日であったが,とんどの火のそばは,さすがにあたたかい。むしろ,熱い(暑いわけではない)。ふと,使い捨てカイロの「どんと」は,「とんど」をイメージしたネーミングではないか,という気がした。「どんと」といえば,「チャップイ チャップイ どんとポチイ」というCMのコピーが思い出される。このコピーは,縄文時代の日本語がどのような発音がされていたのかということに関しての科学的考察をもとに,語感がおもしろくなるようにアレンジしたものであるとのことだ。そのあたりの経緯が,大修館書店の月刊「言語」という雑誌に書かれていたことも思いだした。それはいつの号だっただろうか・・・・読まなくなった本や雑誌を積めこんである箱をあさってその号を見つけ出した。1988年2月号(Vol.17 No.2)の「特集 縄文語を追う」中の記事であった。私は「チャップイ チャップイ どんとポチイ」というコピーをはっきりと覚えていたが,もしかすると,このコピーも美しく忘却の彼方へ旅立たせてしまっている人もあるかもしれない。いや,もともと「知らない」という人もあるかも・・・?


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