撮影日記


2007年09月06日(木) 天気:晴のち雨

リコーフレックスVIIs型の工夫

リコーフレックスというシリーズは,一般的な使用には十分な実用性をもちながら,低価格という最大の特徴を維持し続けたカメラである。そして,その流れを確立した1950年の「リコーフレックスIII型」は,まさに「歴史的名機」であると言ってよいだろう。
 ところで,「リコーフレックスIII型」にくらべると,「リコーフレックスVII型」は,どれくらい改良されたのであろうか。「リコーフレックスVII型」でも,いま手元にあるものはセイコーシャラピッドシャッター付きの「高級バージョン」であるから,むしろリケンシャッター付きの「リコーフレックスVIIs型」と比較してみることにする。

まず,大きくかわったのはシャッターである。「リコーフレックスIII型」から「リコーフレックスVII型」(リケンシャッター付き)に使用されていたころのリケンシャッターは,Bのほかには1/25秒,1/50秒,1/100秒があるだけの簡素なものであった。これが,「リコーフレックスVIIs型」に搭載されるにあたって改良され,Bのほかに1/10秒〜1/200秒までシャッター速度の幅が広がった。それはすなわち,「リコーフレックスIII型」から「リコーフレックスVII型」までは,シャッターに大きな改良はなかった,ということになる。
 夏の日中の撮影を考えれば,一般的な感度ISO100のフィルムを使う場合,シャッター速度1/250秒で絞りF11くらいを使うことが多くなる。リコーフレックスの絞りはF16までなので,シャッター速度が1/100秒までではほとんど最小絞りばかりを使うこととなり,いろいろな支障を感じることもあるだろう。シャッター速度が1/200秒まで広がったことは,わずかな差であるが,それは大きな改良点なのである。
 そういえば,以前,「エクサ(Exa)」という一眼レフカメラを使ったとき,「NDフィルタがないと使いにくい」という印象をもったものだ。エクサのシャッター速度は1/150秒までしかなく,わずかな差なのだが1/250秒(せめて1/200秒)がないことは,大きな支障となり得るのである。もっとも,ネガフィルムでの撮影が主であるとするならば,少しくらいの露出オーバーは許容範囲と考えられなくもないのだが。

もう1点,「リコーフレックスVI型」から「リコーフレックスVII型」(VIIs型を含む 以後,単にVII型として扱う)にモデルチェンジされた際の改良点がある。それは,ファインダーである。
 リコーフレックスVII型のファインダーを上部から見ると,正方形を描くような切れ目が見られる。

二眼レフカメラの特徴は,ウエストレベルファインダーになっていることにある。被写体とじっくり向き合って撮るような場合には,それはきわめて好都合である。しかし,左右逆像となるため,動く被写体を追うような場合には,少々慣れが必要となる。そのため二眼レフカメラには,オプション品としてプリズムファインダーが用意されている場合もある。しかし,プリズムファインダーは,決して安い部品ではない。そこで,多くの二眼レフカメラでは,ファインダーフードの一部を倒すなどすると素通しの枠となり,アイレベルのファインダーとして利用できるようなしくみをもっている。
 リコーフレックスVII型では,それを一歩すすめたものになっている。ファインダーフードを開いた状態で,ファインダーの手前を覗くと,ルーペを通して,例の切れ目がくっきりと見える。このとき,ファインダーを覗いている方の目だけでなく,両方の目を開けて見てみよう。すると,驚くなかれ!例の切れ目がブライトフレームのように,視野のなかに浮かんで見えるのである。
 単なる飾りにとしか思えなかったこの切れ目は,実はとんでもない工夫なのである。ちゅどーん。まいったね。

ここで無理やり,今日の結論。
 「リコーフレックスは,単に低価格なだけではない。価格を抑えなければならないという制約のなかで,最大限の工夫がつめこまれたカメラなのである。」
 やはり,リコーフレックスというシリーズは,後世まで語り継がれるべきカメラであることは,疑いのないことである。


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