撮影日記


2007年08月23日(木) 天気:雨のち曇

昨日(2007年8月22日)の日記のつづき。

1961年当時,一眼レフカメラのシステムとして,ニコンはもっとも充実していた。たとえば,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」1961年版(Vol.6)を見るかぎり,一眼レフカメラ用の28mm広角レンズや21mm超広角レンズが用意されているのは,ニコンFだけである。ペンタックス,キヤノン,ミノルタ,コニカ,ペトリ,…いずれも,一眼レフカメラ用の広角レンズは35mmまでしか用意されていない。ただコムラーが,ニコンF以外用の28mm広角レンズの「近日発売」を告げていた(ニコンF用は,発売済み)。
 このころのニコンは,ズームレンズでも他社をリードしていたといえる。Auto-NIKKOR telephoto zoom 85mm-250mm F4-F4.5は,国産ではじめてのスチルカメラ用ズームレンズとして,よく知られている。1964年のZoom-NIKKOR Auto 43mm-86mm F3.5は,軽量コンパクトで安価な標準ズームレンズとして,後世まで語り継がれるべき歴史的意義のあるレンズである。
 ニコンの製品について興味のある方ならよくご存じのことと思うが,当時,ニコンはもう1つの標準ズームレンズを開発していた。Zoom-NIKKOR Auto 43mm-86mm F3.5では少し物足りないズーム比と明るさを実現する,Auto NIKKOR Wide-Zoom 35mm-85mm F2.8-F4である。ただ,このレンズは,株式会社ニコンのサイトによれば,「大きく重すぎて」商品化されなかったようである。(※1)

「カメラ総合カタログ」1961年版(Vol.6)で「ニコンS3M」が掲載されていた次のページには,ニコンF用ニッコールレンズのラインアップが記載されている。そこには,3本のラインアップが見られる。まずは,Auto-NIKKOR telephoto zoom 85mm-250mm F4-F4.5,つづいて,Auto-NIKKOR telephoto zoom 200mm F9.5-600mm F10.5。そして,Auto NIKKOR Wide-Zoom 35mm-85mm F2.8-F4も「近日発売,95000円」として掲載されているのだ。
 結果として発売されなかったレンズらしいのだが,まさに「発売一歩手前」までの状態になっていたようである。実際に発売されなかったからには,これは「レアもの」ではなく「幻」とよぶほうがふさわしいだろう。カタログのなかで,「レアもの」だけでなく,「幻」にも出会ってしまったわけなのである。

「近日発売」ということは,このカタログを見た人のなかには「発売されたらすぐに売ってくれ」と,販売店を通じて「予約注文」を出した人もいるのではないだろうか…?などと妄想をめぐらせると,妙に愉快な気分になってくる。ともあれ,古い雑誌やカタログには,意外な出会いがあったりして楽しいのである。

※1 http://www.nikon.co.jp/main/jpn/profile/about/history/nikkor/n04j.htm


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