撮影日記


2007年08月22日(水) 天気:晴のち雨

レアもの

中古カメラの価格は,その人気によって決まる。もともとが高価なものであっても,人気がないものは比較的安値で流通する。もともとが安価なものであっても,人気があるものは比較的高値で流通する。
 中古カメラの「人気」とは,どれだけ多くの人がそれを「欲しい」と思うか,ということである。「欲しい」と思う人が多くても,そのカメラが大量に流通していれば,比較的安値で流通することになる。「欲しい」と思う人が少なくても,流通している絶対的な量が少なければ,比較的高値で流通することになる。
 流通している絶対的な量が少ないものは,「レアもの」などとよばれて珍重される。「レアもの」であっても,「欲しい」と思う人がほとんどいなければ,それは結局,安値でしか流通しないことは,あらためていうまでもないだろう。そういうものこそ,人知れず消えている運命にあるわけなので,積極的に保護していく価値がそこに存在することになる。

ニコンは,世界的に人気のあるカメラである。それだけに,流通する量が多い。もともとが高価で,人気があるカメラであるが,流通している量も多いので,たとえば外見に傷が目立つようなボディであれば,予想外に安価に入手できたりすることもあるだろう。たとえば,「ニコンF3」であっても,傷の目立つボディであれば,3万円くらいで店頭に並んでいることも珍しくない。同じ「ニコンF3」であっても,人気が高く,流通する量の少ない「ニコンF3/T」のチタンカラーボディであれば,多少の傷があろうとも,平気で10万円を超える価格で流通していたりする。同じ「ニコンF3」の流通する量の少ないバージョンであっても,「ニコンF3AF」ならば人気が低いせいか,レンズ付きで7万円〜8万円くらいのものをよく見かける。
 そんなニコンのカメラのうちで,「レアもの」とされるものとしては,たとえば「ニコンI」がある。そもそもの製造台数が少なく,ほとんどが輸出されたといわれているせいか,「幻」と化しているようだ。もし店頭に出てくるとすれば,300万円くらいで取り引きされるだろう,と聞いたことがある。さらに「レアもの」とされるものとして,「ニコンS3M」がある。これは,「ニコンS3」をハーフサイズとしたもので,モータードライブとの組み合わせで高速連写を実現したカメラだ。どちらかというと,報道特需的なカメラであると考えられ,一般のユーザが使いたくなるようなカメラではなかっただろう。結果として,流通した数はごく少なかったようで,もし店頭に出てくるとすれば,1000万円近い価格で取り引きされるだろう,と聞いたことがある。

先日,塩屋の「スタジオ・チーズ」さんで友人に会ったときに「貸して」くださった資料がある。それは,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」の1961年版(Vol.6)である。

それをパラパラと眺めていると,「日本光学」のページで手が止まってしまった。そこには,「ニコンS3M」が掲載されていたのである。報道特需的な製品だと思っていたそのカメラが,一般向けの商品としてそこに掲載されている。

価格はNIKKOR 50mm F1.4付きで76000円であり,「ニコンSP」の82800円よりも安価である。「ニコンSP」は,現在でも高値で取り引きされるカメラであるが,現在の「ニコンS3M」の取り引き価格とくらべれば,低価格であるといえるだろう。それが,当時は「ニコンSP」も「ニコンS3M」もほとんど変わらない価格,むしろ「ニコンS3M」のほうが低価格で入手できたのである。もしその時代に生まれていたならば,「ニコンS3M」を購入し大切に保管しておくことで,よい貯蓄ができたものと思われる(笑)。

次のページを見てみると,さらなる「レアもの」が掲載されていることに気がついた。(つづく)


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