撮影日記


2007年07月11日(水) 天気:雨のち曇

「POPEYE」に「NC1000s」が

「100m放送」(100メートル放送)という遊び(2007年07月10日の日記を参照)をとりあげた「POPEYE」1979年7月25日号が,名古屋市内の古書店にあることがわかった。そんなとき,ちょうど昨日,名古屋へ行く用事が発生した。この機会を利用し,用事を済ませた後その古書店に立ち寄り,その号を購入することができたのである。

「POPEYE」1979年7月25日号

さて,肝心の記事の内容であるが,予想していたよりも充実していたし,内容もしっかりしていたように思う。ただし,独特の軽さを感じる話しことばでの記事は,慣れないと少し読みにくさを感じてしまうかもしれない。特集のなかでは,ミニFM放送としての遊び方の提案,こんなものがあればいいというような機材の紹介などのほかに,いわゆる「海賊放送」のことや,アメリカなど海外のFM放送局の事情もあわせて紹介されていた。のちにマスコミが,「アメリカンDJ風」と呼ばれたスタイルのミニFM放送局を「かっこいいもの」や「主流」として扱っていったことへの影響を,まちがいなくおよぼしていたのではないかと思ったりする。そう,「POPEYE」のこの特集こそが,のちの「ミニFM放送局」ブームの原点になっているのだろう。ところで,実際のミニFM放送局には「アメリカンDJ風」のものだけでなく,微弱電波の規定を大幅にこえる強力な電波を使った「海賊放送」とよべるようなものも登場しているが,それについてもこの「POPEYE」は取り上げている。全体に,1つの遊びを紹介するという軽い記事であるのだが,取材はかなりしっかりとされているようだ。

さて。一般的に見て,「POPEYE」はファッションを中心とした雑誌としてカテゴライズされるだろう。そして,ファッションアイテムだけでなく,さまざまなアイテムの広告もいろいろと見ることができる。そんななかに,カメラの広告もいくつか見ることができた。ここでは,それについて紹介しておきたい。

まず表紙を開き,目次をめくると,モノクロ紙面だがいきなり2ページ見開きで「キヤノンA-1」の広告があらわれたのである。3つ並べた缶の1つを撃った瞬間をとらえた写真のようで,超望遠レンズの使用と「キヤノンA-1」のシャッター速度優先AE機能がアピールされているようだ。ただし,設定したシャッター速度は1/1000秒らしく,まだまだのんびりした時代である。なお,ニコンF-801が1/8000秒を宣伝したのは,このおよそ10年後になるわけだ。
 「キヤノンA-1」なら,数字にあらわれるスペック面やことばで説明できる機能面としても,その特徴がわかりやすいだろう。ファッション雑誌の読者に対して「どうだ,これはかっこいいアイテムだろ!」という方向でアピールできるものと思われるので,ここにキヤノンが「F-1」ではなく「A-1」の大きな広告を出すことは,なんとなく納得できるのである。

目次のつぎに,「キヤノンA-1」の大きな広告が出現。

ページをめくっていくと,カナダでのアウトドア活動体験プログラムを紹介する記事があるなど,この雑誌の方向性のようなものが見えてくる。また,この当時の「POPEYE」の読者ならサーフィンくらいは必履修科目だろ!といわんばかりの雰囲気を感じたりもする。だから,まんなかあたりのページに,「HD-1フジカ」の広告があっても,別に驚くことはなかった。いや,むしろ,ごく自然なことに思われたのである。ちなみに,別のページでは,セイコーの「シルバーウェーブ」(防水タイプの腕時計)の広告があったりする。
 ところで「HD-1フジカ」は,はじめて商品化された防水35mm判コンパクトカメラである。もっとも,自動化されているのは露出だけであり,ピントは目測でフラッシュは専用の防水フラッシュを外付けするというものだった。また,防水とはいっても「水で洗ってもいい」という程度であり,水中でも撮影ができるだけの仕様ではなかったようである。「HEAVYDUTY CAMERA」として紹介されており,「HD-1」の「HD」がなにを意味するのかがようやくわかった次第であるが,「HD」の名称がこの後の防水カメラに引き継がれていることは,よく知られているとおりである。
 なお,この広告は,カラーで1ページを使っている。

「HD-1フジカ」は,サーファー(陸サーファーも含むかも(^^))たちに強くアピールしたかったのかもしれない。

さて,ページも終わりに近づいたころ,また,カメラの広告が出ているのに気がついた。それは,左端1/3ページ程度の比較的小さな広告であるが,私はそれに驚きを感じざるを得なかった。そこで宣伝されていたカメラは,「マミヤNC1000s」である。
 プロやマニア以外の人にとっては,決してメジャーなブランドとは言えないであろう,マミヤである。そんなマミヤの35mm判一眼レフのなかでも,シリーズとしての日本国内での発売期間がごく短かったとされる「NC1000s」である。カメラ雑誌に「NC1000s」の広告が載っていても驚かないが,読者が必ずしもカメラマニアとかかぎらない「POPEYE」に,そんなカメラの広告が出ているというのは驚きである。それだけマミヤがこのカメラに自信があり,かつ,「POPEYE」の読者層に対してアピールできると判断したのであろうか。その宣伝文句を見てみると「君をメカキチにしてしまう」「男の持ち物って難しい」などと,「こだわりの逸品をもってみたい」という欲望をくすぐろうとしているように思われる。
 しかし,実際には「NC1000s」はあまり売れなかったものと思われる。「NC1000s」はシリーズが続くことがなく,マミヤの35mm判一眼レフカメラは,最後の「ZE」シリーズにバトンタッチされていったのであった。そして,「NC1000s」も,「ZE」シリーズも,中古カメラ店で出会える機会は,あまり多くないのが現実だ。
 もしかすると,「ZE-X」であれば,「こだわりの逸品」として,強力なアピールができたのではないだろうか?「ZE-X」の時代の「POPEYE」も,機会があれば見てみたいものである。

広告のスペースは小さいが,マミヤ「NC1000s」も宣伝に力が入っていることがうかがえる。

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