撮影日記


2007年07月04日(水) 天気:雨のち曇

リコー「MIRAI」復活

ずいぶんと以前のことであるが,1台の故障したカメラをいただいていた。

1988年に発売された,リコー「MIRAI」である。
 これは「ブリッジカメラ」などとよばることもあった,ズームレンズ一体型の一眼レフカメラの1つである。「ブリッジカメラ」というのは,高機能コンパクトカメラと低価格一眼レフカメラの間に位置するもの,コンパクトカメラのユーザを一眼レフカメラに誘導するもの,という意味をふまえてのものと思われるが,ことばとして広く定着したようには思われない。
 ところで,いただいた時点での,リコー「MIRAI」の状況は,次のようなものだった。

  1. 電源は入る。
  2. 露出計は生きているように見える。
  3. シャッターは動作する。
  4. ズームやピントは動かない。

1〜3の状況から見ると,電子回路はまだ生きていると思われる。4の状況であるが,通常,この種のカメラは電源をOFFにしたときに,レンズがもっともひっこむはずである。そのとき,焦点距離はもっとも広角側に,ピントは無限遠になっていることが多いのではないだろうか。ところが,LCDの表示を信用するなら,焦点距離は60mm付近(このカメラのレンズは,35mm-135mm F4.2-5.6である),ピントは最短撮影距離付近を示している。このことから,内部で機械的になにかひっかかるものがあり,動作しなくなっているものと予想した。
 となれば,カバーをはずせばなんとかなりそうである。このカメラのカバーは,上側と下側の2つに分かれており,それぞれ,細かい多数のネジでとめられている。また,上側にも下側にもいくつかのスイッチ等があり,不用意にカバーをはずすと,それらのスイッチがはずれて落ちてしまいそうな恐れがある。また,多数のコードがつながっていれば,それを切ってしまわないように気をつけなければならない。スイッチがばらばらになったり,コードが切れてしまったりしたら,組み立てなおすのがたいへん面倒なものになる。
 それが,長い間,気になりながらも手つかずで放置していた理由である。

今日,突然,思い立って,このカメラを取り出し,カバーをはずすのに挑むことにした。ネジは多いがスイッチ等が比較的少ない,下側から開けてみることにした。7箇所のネジをすべてはずして少しこじると,簡単にカバーははずれた。下側には2つのスイッチ(警告音のON/OFF,AF/MFの切り替え)があったが,そこはカバーにしっかりと取りつけられており,はずれてバラバラになる心配は必要なかった。コードはそこから伸びている3本だけで,万一切れてしまっても,つけなおすのにあまり苦労はなさそうに思われる。
 さて,電源をONにして,レンズを動かすレバーを操作してみる。レンズは微動だにしないが,リレーが動作するような音が聞こえる。電気回路やモーターは,たぶん生きている。レンズがなにかにひっかかって,動かなくなっているだけなのは間違いない,と思われた。そこで,少し見えているレンズの根元のギア部分に,ドライバーを使って少しずつ力を加えてみた。最初はびくともしなかったが,少しずつ動くようになり,やがて,本来動作するべきと思われる全範囲を動かせるようになった。そこでふたたび電源をONにして,レバーを操作すれば,ぎこちないが動くようになったのである。
 ここまでくればあと一息か。少し汚れが見えるので,鏡胴にあたる部分を掃除しながら,動かすことを繰り返した。

そして,ついに。

電源をOFFにすると,レンズはすーっと,最後まで引っこんでいったのである。
 このあとは,ズームも支障なく動くし,AFもきちんと動作しているようだ。
 こうして,リコー「MIRAI」は,長い眠りから目覚めたのである。


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