撮影日記


2007年06月20日(水) 天気:曇

EOS10は「上位モデル」

EOS10を入手したことをきっかけに,古いカメラ雑誌を読み返してみようと思った。しかし,これが発売されたころのカメラ雑誌が手元にない(笑)。手元にあった1998年から1999年ころのカメラ雑誌では,すでに話題の対象ではなくなっている。そのかわり,カメラ販売店の中古カメラのリストでは,その名前をよく見かけることができる。
 ところで,「EOS」シリーズは,大まかにいくつかの世代にわけて考えられるようだ。最初の世代は「EOS620」にはじまるもので,「600」番台のモデルのほか「EOS RT」などがそこに含まれるようである。「EOS10」は次の世代に該当し,ほかに「EOS100」「EOS1000」などが含まれる。そしてさらに次の世代は,「EOS5」や「EOS55」などに代表される。それぞれの世代のなかでは,高級機>中級機>入門機という階層制が見られる。上の階層にあるものには,下の階層にあるものには「越えられないなにか」がある。ただし,「1」シリーズはこれらの階層に属さず,そのさらに上に位置する,別格な存在のようだ。このあたりは,ニコンのラインアップとも共通した性格があると言えるだろう。
 さて,「EOS10」が属する世代においては,「EOS10」>「EOS100」>「EOS1000」という階層が存在する。「EOS」シリーズでは,別格な最上位につねに「1」が存在するためか,「モデルの数字が小さいほど高級機」を意味しているようだ(ニコンは逆に「数字が大きいほど高級機」を意味する。ただし「一ケタ」シリーズは別格)。

以上のことをもって,「日本カメラ」1998年2月号における,中古カメラの価格を見てみよう。「別格」のものは別にすれば,単純に「新しい世代」のものほど,価格が高い傾向がある。カメラは道具であり,新しいものほど機能が付加されていたり,故障などのトラブルの危険性が低いと言えるわけなので,これは当然の傾向だろう。また,もともと上位の階層にあったものほど,価格が高い傾向がある。上位モデルほど人気が高く,また,実際に流通していた価格が高いことから下取り等で買い取る価格も高くなるだろうから,これも当然の傾向と言えるだろう。
 そんななかで見られる例外は,「EOS RT」である。ペリクルミラーを利用してミラーの動作をなくした特殊なボディであり,日本カメラショー「カメラ総合カタログ Vol.98」(1990年)では「1万台限定発売」と記載されている。このような特別な「限定」モデルは,欲しがる人がどうしても多くなるのだろう,一般に中古価格は高めを推移する傾向が見られるものだ。
 さて,「EOS10」と「EOS100」の両方が載っている中古カメラ販売店の価格表を見てみよう。K店の広告では,「EOS10」が31000円であるのに対し,「EOS100」も31000円になっている。別のF店の広告では,「EOS10」が33000円(Aランク)〜30000円(ABランク)であるのに対し,「EOS100」は36000円(Aランク)〜34000円(ABランク)である。中古カメラの価格は,もともとの「メーカー希望小売価格」よりも,そのカメラそのものの「人気」が直接に反映するものである。また,1台1台の状態にも左右されるので,販売価格が上位モデルと下位モデルで逆転することは,当然あり得るのだが,これらの広告を見ただけでは「EOS10」に上位モデルとしての威厳は見られないのである。
 では,その機能にはどれだけの「差」があったのだろうか。連写性能を見ると,明らかに「EOS10」の方が上である。また,「EOS10」には,「3点測距」という,当時の他のモデルには「越えられない壁」が存在していた。しかし,「EOS100」には,「動作音がきわめて静かである」という特徴と,「背面電子ダイアル」という新しい機能があった。これらは,実際の撮影の場面においては,たいへんに有用な機能である。「EOS10」が誇るスペックは,「3点測距」を除けば,一種の「極限状況への対応」であり,多くの撮影場面では「必要のない性能」ととらえられたのであろう。より実用的なメリットの大きいモデルに,人気が集まるのは当然である。

EOS10とEOS100の比較 (*1)
 EOS10EOS100
メーカー希望小売価格90000円76000円
連写性能5コマ/秒3コマ/秒
内蔵フラッシュGN12ズーム連動 GN12〜17
AF中央と左右の3点中央1点
操作系サブ電子ダイアルなしサブ電子ダイアルあり
その他インターバルタイマー内蔵サイレント機構
EOS10には,3点測距(左)やインタバルタイマー(右)などがある。

かつて「EOS kiss」が大ヒットし,各社から同様なコンセプトをねらったと思われるカメラがつぎつぎに発売されたことがあった。「EOS kiss」が大ヒットしたのは,当然かもしれない。価格は安いし,安いのに見合った「割り切り」はあったものの,撮影に必要な要素はとりあえずもっていたわけだから。

*1 http://web.canon.jp/Camera-muse/


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