撮影日記


2007年06月09日(土) 天気:風強く,晴れたり曇ったり

最短撮影距離を考慮して
ズームレンズは廉価版を選ぶべし

最近,一眼レフカメラはいわゆる標準ズームレンズとセットで購入されることが一般的になっている。いや,カメラ本体だけ,あるいは,単焦点標準レンズとセットで購入する人は,2台目,あるいは3台目以上のカメラとして購入する人だろう。おそらくは,仕事で使う人か,マニアと呼ばれる人であろうと思われる。
 かつて,ズームレンズは「画質が悪い」として,否定的に見る人も少なくなかったようだが,便利であることは間違いない。画質が実用的なレベルに達していれば,便利さを優先させても問題ないはずである。
 ズームレンズのどういう面が便利なのかは,言うまでもないだろう。レンズを交換することなく,連続的にさまざまな焦点距離のレンズとして撮影が可能になる点である。これは,レンズ交換の手間を省けると同時に,撮影時に携行するレンズの数を少なくできる効果も大きい。ところでズームレンズのラインアップを見ていると,同じような焦点距離域をカバーする製品が2種類(あるいはそれ以上)用意されていることがある。おもに,「暗いがコンパクトで廉価な製品」と「明るいが大きく重くて高価な製品」にわけられる。ズームレンズの特徴を考えると,可能なかぎりコンパクトな方がそのメリットをフルに活用できることになるのだから,「暗いがコンパクトで廉価な製品」を選ぶのが正しいはずだ。
 もしかすると「廉価版標準ズームレンズでは,見栄を張ることができない」という不満が出るかもしれない。もしも見栄を張りたいなら,F1.2クラスの標準レンズを使えばよい。高級標準ズームレンズだって,明るさは「たかがF2.8」どまりである。携行する機材が重くなってもかまわない場合,あるいは,画質にできるだけ妥協したくない場合は,すなおに単焦点レンズを使うのがよいのである。いや,そのような場合は,どうせなら中判カメラや大判カメラを使えばよい。もっと見栄を張ることが可能だし,画質的にも満足できるはずだ。

さて,最近のコンパクトで廉価な標準ズームレンズには,ほかにも大きなメリットがある。それは,被写体にかなり寄ることができるという点である。無限遠からかなりの近接撮影までが連続的におこなえるというのは,ストレスがなくてよい。その場合,撮影倍率や画質などが,接写に優れた性能を示すように設計されたマイクロレンズにかなうはずはない。画質等に妥協をしたくない場合は,すなおにマイクロレンズを使えばよいのである。そうではなく,あるときは望遠であるときは広角で,あるときは離れてあるときは寄って,などと軽快に撮影を続けたいときには,小型軽量で最短撮影距離の短い,廉価な標準ズームレンズが適しているのである。
 たとえばAF NIKKORレンズについて,簡単に比較してみよう。

AF NIKKORレンズの比較(※1)
レンズ構成最短撮影距離大きさ重さ価格
AF Zoom-NIKKOR 35mm-70mm F3.3-F4.5S7群8枚0.35m長さ61mm×径70.5mm260g39,000円
AF Zoom-NIKKOR 35mm-70mm F2.8S12群15枚0.60m(※2)長さ94.5mm×径71.5mm665g98,000円
AF NIKKOR 50mm F1.4S6群7枚0.45m長さ42mm×径65mm255g36,000円

(※1)「Nikkor Lenses」カタログ (1998.5.1)より。

(※2)35mm時のみマクロモードに切り替えて0.28mまでの近接撮影が可能。

廉価版ズームレンズは,被写体に接近して撮ることができる。
AF Zoom-NIKKOR 35mm-70mm F3.3-F4.5Sでは,0.5mまでは距離目盛が入っている(左)が,
それよりも近接時は「マクロ域」として距離目盛が入っていない(右)。

もっとも,以前からズームレンズは接写が得意だったわけでもないようだ。たとえば,new Zoom-NIKKOR 43mm-86mm F3.5の最短撮影距離は1.2mである。もしかするとこれは,「明るさが変動しない」(しかも,望遠側がF3.5というのは,最近の廉価版ズームレンズと比較すれば,かなり明るいことになる)という点を重視して,「高級ズームレンズ」に分類されるべきなのだろうか?(笑)

ところで,望遠ズームレンズでも,廉価版レンズでは,接写時の撮影倍率をアピールしている例がある。たとえば,AF Zoom-NIKKOR ED70mm-300mm F4-5.6Dの最短撮影距離は1.5mであるが,焦点距離を300mm相当にした場合だと最短撮影距離は1.5mで撮影倍率は1:3.9になる。
 以前の,new NIKKOR 300mm F4.5の最短撮影距離は長く,4mだ。そうしてみると,Zoom-NIKKOR Auto 50mm-300mm F4.5の最短撮影距離が2.5mであることは,注目に値するといえるのではないだろうか。

Zoom-NIKKOR Auto 50mm-300mm F4.5の最短撮影距離付近での撮影。
左:Zoom-NIKKOR Auto 50mm-300mm F4.5の最短撮影距離付近での撮影。
右:AF Zoom-NIKKOR ED70mm-300mm F4-5.6Dの同距離距離付近での撮影。
Zoom-NIKKOR AUTOの方が,ややフレアがかっている印象を受けるが,
この時代の高倍率ズームと現代のズームレンズが「勝負になる」というのは驚きである。
なお,撮影時の状況は,夕方の逆光である。
AF Zoom-NIKKOR ED70mm-300mm F4-5.6Dの最短撮影距離付近での撮影。

← 前のページ もくじ 次のページ →