撮影日記


2007年06月02日(土) 天気:雨のち曇

広島市現代美術館で「写真」を見る

広島市は,太田川によってつくられた三角州上に広がった町である。三角州は,上流から運ばれてくる堆積物により少しずつ伸びていく。また,沿岸は近年「埋め立て」をされることもあり,陸地は少しずつ伸びていく。広島市内に見られるいくつかの「山」は,かつて1つの島だったものが,いつしか陸続きになったものであると考えられている。
 そのような「山」の1つに,比治山がある。比治山は,サクラの名所である公園としても知られているが,そこに「広島市現代美術館」があることでも,よく知られている。

「広島市現代美術館」は,広島市市政施行100年,広島城築城400年の年にあたる,1989年に開館した。また,「現代美術を扱うはじめての公立美術館」であると称している。ここでは,第二次世界大戦以後の「現代」の作品を扱うが,いわゆる「美術」の分野にとどまらず,映像やパフォーマンスなどのさまざまな表現も取り上げるようにしているとのことである(※1)。2007年5月19日の日記でも少しふれた,「プレファブリケーション・広島」も,そのような活動の1つということだろう。
 「広島市現代美術館」では,「写真と現代美術+新収蔵作品展」が開催されていた。「写真」の作品としては,たとえばクリスチャン・ボルタンスキー「死んだ174人のスイス人たち」がある。壁面いっぱいに,174人の肖像が並べられているのだが,1つ1つの写真として見れば,必ずしも美しいものではない。これは単に「美しい」だけの写真ではなく,この空間を聖地として演出しているのである。
 また,写真そのものだけではなく,パフォーマンス的要素も取り入れたものとして,小沢剛「ベジタブル・ウェポン・スペシャル−牡蠣の水炊き鍋、とろとろ湯豆腐、美酒鍋/広島」はおもしろい。写真をぱっと見ると,原爆ドームの前で3人の女性が「銃」を構えているように見える。いわゆるコスプレのような作品に見えるわけだが,よく見ると,彼女たちがもっているものはモデルガンではなく,ダイコン,ネギやシイタケなどである。この写真の横では映像が上映されており,そこではこの写真を撮影しているようすや,彼女たちがもっている「材料」で鍋料理をつくって食べてしまうようすが示されている。
 このような,生と死,あるいは,反戦を象徴するかのように思わせる作品を積極的に取り上げているのも,広島市現代美術館の方針のようである。

※1 http://www.hcmca.cf.city.hiroshima.jp/web/menu_site/outline.html


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