撮影日記


2007年06月01日(金) 天気:晴れ

二眼レフカメラの機能

現在,日本国内のブランドからは,二眼レフカメラは発売されていない。しかし,かつては数多くの名称で,数多くの二眼レフカメラが発売されていたことがあった。
 ところで,「ローライフレックス」を二眼レフカメラの代表とすることに,異論をはさむ人はいないものと思う。二眼レフカメラというスタイルを確立したカメラであり,オートマット,セルフコッキングなどの機能をもち,コンパーのシャッターやカール・ツァイスのレンズを組みこんだ,高機能・高性能の高級カメラだったのである。参考までに,「アサヒカメラ年鑑1953」(1953年,朝日新聞社)に掲載されているカメラ販売店の広告では,「新型新品」の「ローライマットIIテッサーF3.5」の価格は,105,000円となっている。

ローライフレックス・オートマット (1945年)
レンズ:Carl Zeiss Jena Tessar 7.5cm F3.5
ファインダーを覗いた姿勢のまま,設定したシャッター速度や絞り値を読み取ることができる。

このカメラは,シリアル番号によれば1945〜1949年ころの製造と思われる。フィルムを装填してクランクで巻き上げていけば,フィルムのはじまりを自動的に検出して1コマ目で止まる,「オートマット」式のカメラである。また,巻き上げ動作とシャッターチャージが連動した「セルフコッキング」にもなっている。ピント調整は「レンズボード繰出式」で,セルフタイマーも内蔵されている。まさに,高機能なカメラである。
 実際に使ってみると,カール・ツァイス・イエナのテッサーは,無理のない描写を示し問題ないといえる。クランクでフィルムを巻き上げ,止まったらクランクを戻せばシャッターがチャージされるので,テンポよく撮影をすすめていくこともできる。一方,このカメラが古くなって状態が悪くなっているのか,オートマットがうまく働かないことがあるのは,少々困りものである。フィルムのはじまりが検出できないと,そのままずるずると巻き取っていき,帰宅してから暗室でフィルムを巻きなおすなどしなければならない。こういうことが続くと,あまり使いたくなくなってしまうものである。

「ローライフレックス」の対極にあるカメラとして,昭和20年代の日本製廉価版二眼レフカメラがあげられる。

ビューティフレックスV(1953年)
レンズ:Doimer Anastigmat 8.0cm F3.5
ビューレンズとテイクレンズのかみあわせに,やや不安を感じるつくりである。

「ビューティフレックスV」は,1953年に9800円という低価格で発売されたカメラである。フィルム巻き上げはノブを回転させておこなうが,ボディ背面にある赤く着色された覗き窓に120ロールフィルムの裏紙に印刷された数字を表示させることでフィルム送りを確認する「赤窓式」と呼ばれる方法になっている。また,ギアで連動したビューレンズとテイクレンズを回転させてピント調整をおこなう「前玉回転式」と呼ばれるしくみを取り入れている。「赤窓式」で「前玉回転式」のカメラは,廉価版二眼レフカメラの代表である。
 「赤窓式」のフィルム送りは,慣れないうちは少々不安があるかもしれない。しかし,速写を意識せず,のんびりとカメラを使うときなら,さほど問題なく使用できるだろう。「前玉回転式」のピント調整は,ビューレンズとテイクレンズの連動がスムースに動いているかぎり,不安なく使用できる。しかしこの部分の連動は,ギアが浅くかみあっているだけなので,工作精度が悪かったり,ヘリコイドの動きが重くなった状態で使うと,ずれてしまうかもしれないという懸念がある。
 このカメラに搭載されたレンズは「3枚玉」である。3枚構成のレンズは,もっともシンプルで,かつ実用的なレンズとされている。このころのカメラのラインアップでは,高級モデルには4枚構成(テッサー型が多いと思われる)のレンズ,廉価モデルには3枚構成のレンズが搭載されることが多かったように見える。まじめに作られた「3枚玉」は,ボケがすなおでなかったり(かといって,あまり目ざわりなボケ方はしない傾向を感じる),周辺の像が不安定になるという問題はあるが,全体にヌケのよい画像が得られるという印象があり,スナップ的な撮影にはむしろ適しているかもしれない。


← 前のページ もくじ 次のページ →