2007年04月28日(土) 天気:晴
標準ズームレンズの変遷(3)
前回の日記では,1975年〜1977年の「日本カメラショー」の「カメラ総合カタログ」を見てきた。この時代の大きな変化としては広角ズームレンズの登場があげられるが,まだ,ズームレンズは特殊なレンズだといえる状態だったと思われる。さて,1978年の「日本カメラショー」の「カメラ総合カタログ」では,1つの大きな動きを見ることができる。
日本カメラショー「カメラ総合カタログ」(1978年)
1978年ごろの標準ズームレンズ (「カメラ総合カタログVol.61」,日本カメラショー1978年 より)
メーカー | レンズ | 重さ | 価格 |
Pentax | SMC Takumar-zoom 45mm-125mm F4 | 610g | 72,700円 |
Olympus | Zuiko MC Zoom 35mm-70mm F3.6 | 400g | 69,000円 |
Canon | FD 35mm-70mm F2.8-F3.5S.S.C. | 575g | 105,000円 |
Konica | Vari Focal Hexanon AR 35mm-100mm F2.8 | 1100g | 89,200円 |
Konica | UC Zoom Hexanon AR 45mm-100mm F3.5 | 570g | 85,500円 |
Komurar | Macro38mm-90mm F3.5 | 490g | 45,800円 |
Sun | Macro38mm-90mm F3.5 | 650g | 54,800円 |
Sigma | 39mm-80mm F3.5 | 455g | 41,000円 |
Tamron | 35mm-80mm F2.8-3.5 | 520g | 62,000円 |
Tokina | 35mm-105mm F3.5 | 720g | 68,300円 |
Nikon | Ai Zoom-NIKKOR 43mm-86mm F3.5 | 450g | 44,000円 |
Nikon | Ai Zoom-NIKKOR 35mm-70mm F3.5 | 540g | 95,000円 |
Fuji | FUJINON Z 43mm-75mm F3.5-4.5 (*2) | 300g | 32,400円 |
ここで注目するべき存在は,フジノンのズームレンズFUJINON Z 43-75mm F3.5-4.5である。
注目すべきポイントの1つは,発売当時世界最小のズームレンズであると謳われていたこのレンズの大きさ・重さである。ニコンのZoom-NIKKOR 43-86mm F3.5よりも小さく,軽い。ズーム比がわずか1.7倍で,開放F値も1段暗いわけであるが,この大きさ・重さであれば,まさに標準レンズと同じような感覚で使用できるだろう。
Zoom-NIKKORとFUJINON Zの比較
| Zoom-NIKKOR 43-86mm F3.5 (*1) | FUJINON Z 43-75mm F3.5-4.5 (*2) |
大きさ | 長さ73.5mm×径66.5mm | 長さ67.2mm×径60.4mm |
重さ | 450g | 300g |
左 Zoom-NIKKOR 43-86mm F3.5,右 FUJINON Z 43-75mm F3.5-4.5
もう1つの注目点は,このフジノン・ズームレンズは,一眼レフカメラとセットで発売されたことである。「カメラ総合カタログVol.61」によれば,「フジカAZ−1」という絞り優先AEカメラに,このズームレンズのセットが設定されている。
フジカAZ−1の発売価格(ブラックボディは2,000円高)
ボディのみ | 49,000円 |
43-75mm F3.5-4.5付き | 80,500円 |
50mm F1.4付き | 72,500円 |
55mm F1.8付き | 62,500円 |
55mm F2.2付き | 57,500円 |
FUJINON Z 43-75mm F3.5-4.5付きのFUJICA AZ-1
「日本カメラショー」の「カメラ総合カタログ」で見るかぎり,ズームレンズ付きで最初に発売された35mm一眼レフカメラは「フジカAZ−1」であり,そのズームレンズは「FUJINON Z 43-75mm F3.5-4.5」なのである。NHKの「その時,歴史が動いた」風に言えば,フジカAZ−1が発売されたそのとき,一眼レフカメラにおける「ズームレンズの時代」が訪れた,のである。
さて,「FUJINON Z 43-75mm F3.5-4.5」を少し使ってみた印象としては,「Zoom-NIKKOR 43-86mm F3.5」のようなシャープさは感じられないものの,全体になめらかで破たんのない画像が得られるように感じられる。ズーム比や口径比を欲張っていないことが,描写の好印象につながっているものと想像する。コンパクトなことと,描写や歴史的意義をあわせて,名玉だと言ってよいと思うが,実用性を重視するならズーム比が1.7倍というのは,やはり少々さびしいものがある。
*1 「カメラ総合カタログVol.61」には,Zoom-NIKKOR 43-86mm F3.5の大きさの数値が掲載されていない。この数値は,「新・ニコンの世界」(1979年,日本光学工業株式会社カメラ営業部)に掲載されていたものである。
*2 「カメラ総合カタログVol.61」における,FUJINON Z 43-75mm F3.5-4.5は,フジカAZ−1とのセット販売品のみが掲載されており,単体での価格等は示されていない。この数値は,翌年の「カメラ総合カタログVol.64」に掲載されていたもので,価格にはケース(900円)が含まれている。
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