撮影日記


2007年02月25日(日) 天気:曇

ハノーバー電車

広島電鉄には,じつにさまざまな電車が走っている。古いものもあれば,新しいものもある。ずっと広島を走っていたものもあれば,かつては他の都市を走っていて,広島電鉄に移籍してきたようなものもある。
 昭和40年代,全国的に自動車が急増した。それらは,路面電車の運行を妨げるだけでなく,路面電車の利用者を減らす原因にもなった。そして,多くの都市から,路面電車がなくなった。そんなとき,広島電鉄は,それまでの小型車輌を置き換えるために,廃止になった他都市の大型車輌を譲り受けてきた。その結果,いまでは見られなくなった各地の電車が広島を走る,という状態になってしまったわけである。
 それらは,冷房装置を取りつけられるなどして,日常の利用にも耐えられるようになっている。古いものが,単に保存されているだけでなく,日常的に使われているところに,なによりも大きな価値が存在するのだ。

そうは言っても,日常の運用には使われず,もっぱらイベント的な意味合いで使われている車輌もある。たとえば,他都市の中古車輌の導入によって置き換えられていった小型車である。路面電車(連接車を除く)では,全長13mくらいのものが大型車,11mくらいのものが中型車として分類されるようである。これらは日常的な運用に使われているが,さらに小さな小型車は,イベント的な意味合いでの運用のみとなっているようだ。
 大型車,中型車は,2軸4輪の台車をもったボギー車となっている。車輪がレールの継ぎ目を通るときに「音」がするのだが,これらの車輌では1両あたり2軸+2軸となっているので,走行の際の「音」は,「タタン タタン」というものになる。一方,小型車はボギー式の台車をもたない2軸車となっているため,走行の際の「音」は,「タッ タン」というものになる。最近では,貨車にも小型な2軸車は少なくなっているので,こういう「音」を聞く機会は,激減しているといえるだろう。
 広島電鉄では,2両の2軸車を,イベント的な運用において体験することができる。1つは,「101」という,大正元年に広島電鉄が開業した当時の電車を復元したものである。運転台が吹き抜けになっていて寒いので,おもに夏季に運用される。もう1つは,「238」という,ドイツのハノーバー市で使われていた1928年製の電車である。こちらは,窓が開かず,冷房装置もつけられていないため,おもに冬季に運用される。これらは,日曜日や祝日の昼間に,横川と江波の間を,4往復ほど運用されているようだ。

クリスマス電車として運転されたとき。
Nikon F-301, Ai NIKKOR 50mm F1.4, EB

さて,市内中心部へでかけようと思い,横川駅まで来てみると,ちょうど「238」がやってくるのが遠くに見えた。乗り場では,「7 広電前」行きが発車するところであったが,こんなときはこれをすなおに見送って,「238」に乗るのが楽しいというものだ。もっとも「238」は「8 江波」行きとなるので,十日市町で乗り換えなければならなくなるのだが・・・。
 「238」の車内は,木製の向かい合わせのシートになっている。混雑する時間帯や路線では運用しにくい車輌であろうが,こういう空いているときであれば,たいへん居心地のいい空間であるといえるだろう。

車内のようす。
OLYMPUS XA, FUJI 400

なお,私は「鉄」ではない。古い機械が,現役で動いているのを見たりするのが好きなのである。


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