撮影日記


2006年12月13日(水) 天気:雨

ついにこの日がやってきた

先月末,ラボの方とお話をさせていただく機会があった。そのときのお話によれば,「最近,135の処理は,どんどんどんどん減っている。」とのことである。しかし,一時期,大幅に減ったそうだが「最近,大判や2Bの処理は減少が止まっている。」とのことである。
 その理由として,「フィルムでなければできない仕事がある。」ということを教えてくださった。アパレル関係の広告写真において,ディジタルシステムでは,微妙な色の違いなどが再現できない場合があるとのことだ。
 このお話は,今後,市場の縮小によって,納期や価格の面において現状よりも敷居が多少高くなる可能性はあるかもしれないが,フィルムはまだまだずっと使い続けていけるのではないか?という期待をもたせてもらうことができたものだ。

今年の1月は,写真・カメラ業界において,衝撃のニュースが相次いだものだ(2006年1月の日記を参照)。とくに衝撃が大きかったものは,「コニカミノルタが,カメラ事業,フォト事業から完全に撤退する」というニュースであろうか。カメラは一度買ってしまえば,長く使っていくことができる。しかしそれは,フィルムという消耗品と,それを現像するというサービスが安定して供給されてこそ,意味がある。ドイツのアグファに続いて,コニカミノルタのフィルムも市場から姿を消すというのは,たいへん衝撃的な事件だったのである。
 その直後,富士フイルムは「写真文化を守り育てることが弊社の使命であると考えております。」(※1)という姿勢を表明した。さらに翌週にはコダックも「市場に需要がある限り、銀塩フィルム及び印画紙を製造・提供してまいります。」(※2)ということを発表した。
 しかし,コダックも富士フイルムも,フィルム等の製品の価格改定をおこなったり,商品のラインアップが整理されるなど,写真事業そのものは決して楽観できる状況にはないことは,窺い知ることができる状況は続いた。

そして,今日。「コダクローム64フィルムの販売終了」がアナウンスされた。(※3)
 「コダクローム」は,カラーポジフィルムの1つである。ほかのカラーポジフィルムと違って,フィルム上の乳剤層にカプラーを含まず,発色現像の際にカプラーが加えられる「外式」とよばれる処理をおこなうようになっている。そのため,画像がシャープで保存性もたいへん優れているとされる。その独特の渋い色合いは私の好みでもあるが,現在の「鮮やかさ」を求める流行には,反するものだったのかもしれない。
 カラーポジフィルムは,もともとすべて「外式」であった。コダックは,世界で最初にカラーポジフィルムを発売したメーカーである。つまり,コダクロームは,カラーポジフィルムの原点といえるものかもしれない。その販売および現像処理のサービスが,近いうちに終了する,というのは,やはり1つの時代の終焉を象徴しているといえるだろう。ただ現時点では,「日本国内での」ということなので,完全に終了するまでには,まだそれなりの時間があるのかもしれない。
 ところで,私が写真にまじめに取り組むようになったころにはすでに35mm判のものしか発売されておらず,あまり積極的に使うことはなかった。フジクロームでは影が真っ青になり,エクタクローム(コダックの内式カラーポジフィルムのシリーズ)でも,影はまだ青い。しかし,コダクロームは影が黒く締まる。ここに魅力を感じたのだが,残念なことである。

最後にコダクロームを使ったのは,何年前になるだろうか。。。
 そのころからすでに需要が少ないせいか,フィルムも現像処理もやや高価で,納期も長くかかっていた。これらの点は,「ちょっと試しに使ってみようかな」と思う人にとっては,敷居が高いと感じることになったかもしれない。
 コダクロームを積極的に愛用してきた方々には,残された時間のうちに,コダクロームによるすばらしい作品を,数多く残していただくことを希望する。

  • ※1 http://fujifilm.jp/information/20060119/index.html
  • ※2 http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/corp/info_012406.shtml
  • ※3 http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/corp/info061213.shtml
    Nikon FM, Ai NIKKOR 50mm F1.4, KR
    1996年10月13日撮影

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